表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/63

第二章 part2:友達

 今日も誠は屋上にいた。


すでに泉のことは振り切ったつもりだ。もう気持ちは入れ替えている。


今回はある人物が来るのを待っているのだ。


 そのとき、後ろから扉が開く音が聞こえた。


どうやら、お目当ての人物がきたようだ。


「あれ? もう完璧に振り切っているようね。でも、なんでここにいるの?」


 お目当ての人物とは香のことだ。


誠は空を眺めるのを辞め、香に向き直った。


「お礼を言おうと思ってね。ありがとな」


「どういたしまして。用はそれだけ?」


「あと、お前スカイを使ったのか?」


 誠がそう言うと、香は笑みを浮かべ、空を見上げながら口を開いた。


「ええ、そうよ。私は全てのものの心が読めるようになりたいって願ったの。まさか、まだ知らない人がいるとは思わなかったけど」


 そこで、誠は香の言葉に違和感を覚えた。


「他にも、お前が心を読めるってことを知っているやつがいるのか?」


「その通り。用はこれで終わり?」


「なにかお礼がしたい」


「お礼?」


「泉のことで振り切ることができたのはお前のおかげだ。なにかお礼をさせてくれ」


 香はしばらく考えると、にやつきながら誠に近づいてきた。


「それなら……私と友達になってよ」


「友達? そんなことでいいのか?」


「そう。絶対に裏切らず、いつでも私の味方でいること。これでいいわ」


 誠は少し戸惑ってしまったが、香がそういうのなら断る理由もない。


「わかった。いいぜ」


 そう言うと、香はにこっと笑い、嬉しそうに校庭を眺めた。


「ふふ、ありがとう。これからが楽しみだな」


 誠は香が喜んでくれて少しは満足した。


これが、ある事件に巻き込まれることも知らずに……。




 香と友達になってから、誠は精神的に疲れてきた。


泉との約束どおり、ちゃんと学校に行って授業を受けている。


そのかわり香とも会うことになる。


そして、午前最後の授業を終えるチャイムが鳴った。


「誠~!」


 またである。


「ほら、昼休みだよ。お弁当食べよ」


 授業が終わった瞬間、香は自分の席からすぐに誠の席に来た。


誠は机にうつぶせになりながら香の声を聞いていた。


「なあ、朝倉」


「香だよ」


 誠はしぶしぶ了解した。


「香、そうやってすぐに俺のところに来て、昼食に誘うのは辞めてくれないか?」


「どうして? 別にいいじゃない」


「だったら俺の心を読んでみろ」


 すると、香は誠の心を読み始めた。そして、すぐに納得した表情になった。


「なるほど、そういうことか」


「わかったら少しは考えてくれよ」


「つまり、恋人同士になったらいいんだよね」


「なんでそうなるんだよ……」


 誠が考えていたのはこうだ。


そんな大声で誘ったら、みんなの注目を浴びることになるし、俺たちが付き合っていると誤解されてしまう。


それをまるでわかっていない。


しかも、最初に会ったときと比べて、性格が少し変わったような気がする。


「そんなことより、早く屋上行こう」


 香に手を引っ張られ、誠はいつものように屋上に向かった。


 すでに、屋上には湊と瞳がいた。


「遅いですよ。二人とも何してたんですか?」


 瞳が笑いながらからかってくる。いつものことだから気にしなくなったが。


「それより早く食べましょう。お腹空いたよ」


 湊の一言で、コンクリートの床にブルーシートを敷き、みなその上に座った。


香のことは、湊たちは知っていた。


以前、誠がなかなか屋上に来ないので、湊たちは様子を見に教室に来たのだ。


そのとき、香が誠に持ってきた弁当を無理矢理食べさせていたのだ。


嫌がる誠を無視して香は箸を突きつける。


その場面を湊たちは見ていた。


それから誤解を解こうと誠はいい訳をして、最後には一緒に食べることになったのだ。


「はい、兄さん」


 湊が誠に弁当を渡してきた。誠はそれを受け取った。


「ありがとう、湊」


 すると、香も弁当を差し出してきた。


「はい。こっちも食べて」


 あれから香も弁当を作ってくるようになった。


嬉しいことだが、そんなに食べられない。


「なあ、やっぱり交代制にしてくれないか?」


「だめ。毎日作ってあげたいの」


 香はすぐに否定した。


「じゃあ、湊……」


「私も毎日作りたい」


 どうやらこれからも二つの弁当を食べなければならないようだ。太ってしまったらどうしようか。


「ところで」


 瞳が突然口を開き、全員が瞳に注目した。


「二人は付き合っているんですか?」


 その言葉で誠は咽てしまった。湊からお茶を貰い落ち着かせた。


「いきなりなに言ってんだよ! そんなわけないだろ」


「でも、仲良いですよね?」


「そりゃ……友達だからだよ。そんなの普通だろ」


「普通には見えませんが」


 すると、香はじっと誠を見ていた。


「な、なんだよ」


「いや、誠が私のことどう思っているのかなって」


「ちょ、ちょっと待て! お前、勝手に俺の心読んだりすんなよ!」


「どうしようかな~」


 冗談ではない。人にはプライバシーというものがある。


というか、自分の秘密がばれてしまう。


「俺の心読んだら絶交だからな」


「じゃあ、誠くんの心呼んで何か秘密をしゃべってもいいんだね?」


 それを聞いて、誠は抵抗できなくなった。


「……でも、勝手に読むのはやめてくれ」


「わかってるよ。できるだけ努力する。止めることはできないからね」


 それから、四人は楽しい時間を過ごした。




 昼食が終わり、教室に戻ろうとした。


途中で湊たちと別れ、自分の教室に向かう。


「ああ~、腹が窮屈だ」


「男の子だったらもっと食べなさい」


「俺太りやすいんだ」


「問答無用。二人のかわいい女の子の手作りが食べられると思うだけで感謝しなさい」


「はいはい」


 すると、突然香はその場に立ち止まり、蒼白な顔をしていた。


少し先を歩いていた誠は振り返った。


「おい、どうしたんだ?」


 誠が声をかけると、香はすぐに明るさを取り戻し、笑顔になった。


「ううん。なんでもない」


 そう言って、香りは誠よりも先に進んでいった。


「どうかしたのか? おい、待てよ」


 誠は香を追いかけた。


周りには、一人の生徒がじっと二人を見ていた。


そして、周りにいる生徒もこっそりと見ていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ