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 (夢)高校生の文化祭。なぜか凛久がステージへ。

「最後のこの曲は、好きな人に贈りたい。一番前で聞いてくれるか、あかり」

 その途端に集まる視線。冷やかしの声とともに自然と開く最前列までの道。熱に浮かされたように前へ進む私。ステージでしゃがんだ凛久が笑顔で私に合図し、それとともにギターがかき鳴らされる……


 目を覚ますと、見知らぬ天井が視界に入り、嗅ぎ慣れないお香のような香りが鼻をかすめた。起き上がろうと体を動かすと、体中、特に顎のあたりと左手首に痛みが走る。どうやら手首には包帯が巻かれ、顎をそっと手で触るとガーゼのようなもので覆ってあるようだった。起き上がることも出来ないまま、何が起きたんだっけ、とぼんやり記憶をたどっていると、足元から物音がした。開いていたスライド式のドアから男性が顔を覗かせる。

「あ、起きたー?」

 あぁ思い出した。私、香水のお店で会った彼に誘われて、ライブに行ったんだ。そこで私は突然……

「突然倒れたみたいでびっくりしたよ~。大丈夫?」

 そうだ。突然めまいがして視界がぐらついたんだ。体の痛みは、倒れた時に打ったものだろう。本当に最近の私はツイてない。何とか記憶が繋がり、置かれた状況を思い出したはいいが、ちょっと待った。

「ここはどこ!? 」

 何のひねりもない月並みな疑問が口をついて出る。

「安心して。俺ん家だよ! 」

 安心? そんなことできるわけがない。ついこの間知り合ったばかりの、どこの誰かもわからない異性の家に寝かされているのだ。私が混乱しているうちに彼の気配が遠ざかったかと思うと、何かを手にしてベッドサイドに現れる。

「寝室で飲食はしない主義だけど、今回は特別だよ? 」

 と言いながら、手に持っていたお盆をサイドテーブルに置く。そしてまたいなくなったかと思うと、今度は椅子を持って来てベッドの横に置き、よいしょと腰かけた。あっという間に、病院の一室のような状況が出来上がる。もしかして、私が倒れたあと彼が看病してくれたのだろうか。少し落ち着いて考えると申し訳ない気持ちになり、彼に顔を向けて話しかけようとするが、彼の肩越しにクローゼットが目に飛び込んできてぎょっとする。備え付けのスタイリッシュな棚の中にハンガーでかけられていたのは、ダメージジーンズにドクロのTシャツ(今彼が着ているのも同系統で、めちゃくちゃロックな印象の服装)、白衣、若草色の手術着、金色ボタンにバッジがついたジャケット、シャツ。同色のスラックスのようなものも丁寧に折り返されて並んでいるので上下セットと思われるが、スーツというよりは、何かの制服?いや、この際そんなことはどうでもいい。え?この人、何者?詐欺師?めちゃくちゃ胡散臭い。とにかくこの場から逃げた方が良いと、頭の中でアラームが鳴る。


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