006 使ってみる。その3
2025/6/14 改稿
軽く跳んだつもりの天馬だったが、普段の倍以上の高さまで跳び上がっていた。驚きとともに着地すると、あることに気付く。視力が回復していることに。
普段は近視のため必要に応じて眼鏡をかけていた天馬だったが、この異世界に来てからは、遠く離れた城壁らしきものも鮮明に見えていた。自らに起こった変化に、天馬は改めて『身体強化』の意味を実感する。そして、自身の持つ『Exスキル』の全てを隠蔽しようと心に決めた。
「鑑定偽装」
天馬がそう唱えると、目の前にステータスウィンドウが展開された。今まで見てきたものとは異なり、『?』の表示が消え、代わりに『隠蔽/偽装』に変化していた。試しに、『名前』の『隠蔽/偽装』の中から『偽装』を選択すると、PCのキーボードのようなものが現れた。
「これで、入力できるのか?」
バックスペースキーで『テンマ・イツキ』を『テンマ』と直してエンターキーを押す。すると、
『(偽装中)名前:テンマ(テンマ・イツキ)』
と表示が変化した。次に『称号』を選び『隠蔽』を選択すると、
『(隠蔽中)称号: (転移者)』
と表示される。同じ要領で、『加護』『言語理解』『文章理解』『身体強化(P.S):Lv3』『鑑定遮断(A.S):Lv3』『鑑定偽装(P.S):Lv3』『亜空間収納(P.S):Lv3』の全てを隠蔽した。
「あとは魔法スキルをどうするか・・・・・・生活魔法と、あと1つか2つ。どうしようかな?」
天馬が考えていたのは、この世界の魔法の常識についてだった。特に、複数属性持ちの魔法使いの存在が一般的なのか、その事が気がかりだった。
「おそらく、生活魔法は多くの人が使える・・・、と思う。残すのは水魔法だけにして、他は全て『隠蔽』しておけば、普通か、少し珍しいくらいで済む・・・、はず。もし複数属性が当たり前の世界だったら、その時はまた隠蔽を解除すればいい・・・、はず」
そう結論した天馬は、『水魔法:Lv1』と『生活魔法:Lv1』以外の魔法スキルをすべて『隠蔽』した。
「じゃあ、行くとしますか」
陽も高く昇り、日本なら午前10時か11時頃だろうかと思いながら、天馬は城壁らしきものに向かって走り出した。走りながらも、『鑑定』を使い、感覚的に「3kmは走った」と思えば、『風刃』を唱え、続けて『収納』と唱える。そんなことを繰り返しているうちに、天馬は――