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051 誓約書

 時間は少し遡る


 天馬と別れ、蟒蛇(ウワバミ)寝床(ネドコ)を出たアルフ達、大蛇(サーペント)の面々は、教会に向かった。

 

 教会に着いて直ぐ、光の女神の神事を担当する助祭(ディーコン)に面会を求めた。それほど待つ事も無く、面会の願いは叶い、修道女(シスター)の案内で助祭(ディーコン)の部屋に通された。助祭(ディーコン)は、妙齢の女性で、背筋を伸ばし執務机に向かっている姿には、そこはかとなく気品があった。


「光の女神様の助祭(ディーコン)を務める、セレナと申します。今日、ここに見えられたご用向きを伺ってもよろしいでしょうか?


 まさか、Cランクパーティー、大蛇(サーペント)の皆さまが、揃ってお見えになるような重大事でも起こったのですか?


 若しくは、明日の討伐に先立ち、中銀貨を得るために誓紙を書きに来た。とか?


 いえ、冗談が過ぎましたね。改めて、今日、ここに見えられたご用向きを伺ってもよろしいでしょうか?」


 セレナと名乗った助祭(ディーコン)は、微笑みながらもアルフ達、大蛇(サーペント)の情報は把握していると告げていた。Cランクパーティーで強制(コンパルソリー・)依頼(リクエスト)の参加者である事を。まだ、他に把握されている情報もあるかもしれない。


 セリアの挨拶に場の空気が固まった。そんな中で、


「初めまして、大蛇(サーペント)、リーダーのアルフと申します。光の女神様の助祭(ディーコン)を務めるセレナ様に御会い出来たことを三柱の神々に感謝します。本日、伺いました用向きは、ここにいるマリオが説明いたします」


 アルフが、そつのない挨拶を返した。それを聞いたリーフが、目を丸くしている。名前を挙げられたマリオは、前に出ているアルフの背を睨んで、アルフの横に並ぶ。


「今、紹介いただいたマリオです。お見知りおきを。それで、今日、伺った用件ですが、誓約書を作りたく思いお願いに上がりました」


「誓約書? 内容と目的は? あと、どこまでの罰を希望しますか?」


「内容は、他者の秘密を口外しない様に制限したく思っています。目的は、その者の保護のため。罰は、2番目の呼吸の停止でお願いしたく思います」


「分かりました。皆さんの分だけで宜しいでしょうか?」


「他に、3名分。合わせて6名分をお願いします」


「そうなると、小銀貨6枚の心付けが必要になりますが用意は出来ていますか?」


 マリオとセレナのやり取りを聞いていたアルフが、机の上に小銀貨を6枚置いた。

「結構です。では、文面はどのようなものにするか、御考えを伺いましょう」


 セレナの問いにマリオが、机に紙を置き、読み上げる。


「『テンマが行う事、行った事を本人が許可する、若しくは、十分に周囲が認知するまで黙する。ただし、テンマ本人との会話と、この誓約書を交わした者同士はこの限りでは無い』この文面でお願いします。皆さんも良いですよね?」


 そう言いて、マリオが振り返るとリーフが頷き、アルフが、マリオの肩を叩いた。その様子を見て、セレナも頷き、話を進める。


「では、誓約書を6人分、作ってまいります。そのまま、この部屋でお待ちください」


 そう言って、次の部屋にセレナは消える。セレナが消えて直ぐ、マリオにアルフが聞く。


「マリオ、テンマの事、セレナに知られても良かったのか? まぁ、俺は誓約書を作るのも、書くのも初めてなんだけど、信用できるのか? 誓約書が増えるのは勘弁してくれよ」


「私も誓約書を作るのも、書くのも初めてですよ。ただし、セレナは大丈夫なはずです。彼女は、光の女神の助祭(ディーコン)に就くとき、告解と誓約の守秘義務を光の女神と交わしているはずです。そうでなければ、光の女神の助祭(ディーコン)はなれませんからね。


 それより、アルフ。貴方こそ、誓約書を作るのにお金が、小銀貨が6枚も掛かると、良く知っていましたね?」


「ああ、Bランクの昇格試験で出てくんだよ。教会関係の知識としてな。挨拶の口上とかも。役に立って良かったぜ」


「そうだったのね。いきなり、アルフがいつもと違う口調でしゃべるから何があったかと、あせちゃったわよ」


 先ほどまでの、アルフの口調の変わりように対して、納得の笑みを浮かべリーフが言う。それを聞いたマリオが、


「リーフも私くらいには、きちんとした言葉を使えるようにならないと。これから苦労しますよ。今回みたいに、黙っていればやり過ごせる、なんて事は、今後、減ると思っておいてください」


 それを聞いて、リーフが顔を顰め、それを見てアルフが微笑む。そこで、アルフが思い出したように


「マリオ、あんな文面、いつの間に考えてたんだ?」


「昨日の夜ですよ。まさか、直ぐに日の目を見るとは思ってませんでしたけどね」


 そう言って、マリオは溜息を()いた。その時、扉が開いてセレナが戻って来た。


「お待たせしました。こちらが、誓約書になります。3枚1組。6人分。ご確認ください」


 セレナが言うので、アルフとマリオが確認を行う。


 誓約書は、光の女神への祝詞から始まり、寿(コトホ)ぐ言葉、誓いの言葉、誓約の内容、誓約を違えた際の罰、そして、誓約者。


 誓約の内容は、マリオが考えた文言が、流麗な字で書かれていた。誓約者の右は空欄になっている。ここに署名(サイン)をするのだろう。


 アルフとマリオが頷き、言外に問題がない事をセレナに伝える。


「それでは、ここにいる方には、この場で誓約書に署名(サイン)していただけますか?」


 そう言うと、羽ペンとインクを差し出した。


「誓約書には、特殊な魔術が施されています。1枚目に署名(サイン)していただければ2枚目、3枚目には不要です」


 セレナの説明を聞いて、アルフ達が各々、筆を取り自らの名を書き込む。それを確認して


「皆さんは、魔力登録があるモノを持っておられるかと思います。それを上に重ねてください」


 セレナが言う通りにギルドカードを誓約書の上に重ねる3人、ギルドカードが重ね置かれた瞬間、誓約書の1枚目が光の粒子となって霧散した。


「これで、光の女神の名のもとに誓約は成されました。以後、誓約の破棄が行われるまで不変の誓いとなります」


 高らかに宣言をするセレナ。状況を分かっていない3人。一番に我に返ったマリオが、セレナに質問する。


「セレナ様、今のは、一体? 誓約書は、どうなったのですか?」


大蛇(サーペント)の皆様は、誓約書を交わすのは初めてでしたか? 誓約書は、光の女神と誓約者、その対象と交わす誓いです。


 1枚目は、光の女神のみもとに行き、残った誓紙の1枚は、誓約者の自身に、もう1枚は、その対象に渡すための誓紙になります。今回、誓約書の対象が人なので、その方に渡して、裏書を書いて貰い、魔力の登録をして貰うようにお願いします。誓約の破棄の際に、必要になりますから」


 セレナの説明を聞いて、アルフが質問をする。


「セレナ様、誓約の破棄とは? 抑々(ソモソモ)、誓約書の破棄って出来るんですか?」


「可能ですよ。今回は、光の女神と人同士の誓約ですから。


 誓約に対して、それを破る事が神罰の対象になるから、誓約自体を神聖不可侵な存在と考えている方が多い事。誓約書を必要とする方が少ない事。誓約書の対象が個人で無い事が多い事。以上のような理由で知る人は少ないですが、誓約の破棄は可能です。


 皆さんは、誓約を神聖視しすぎているのですよ。


 皆さんも正式な契約の方法は、ご存じかと思います。契約を結ぶ当事者同士が、公証人の立会の上で結ぶ。この公証人が、誓約においては、光の女神様になっていただいた。という事です。つまり、当事者同士の了解があれば、契約と同じように破棄が出来ます。


 破棄するためには、対象者が裏書と魔力登録した誓紙。誓約者が所持している誓紙。この2枚を持ち寄り、誓約者の誓紙、一面にバツを書き、破棄すると(シル)す。その上で、誓約者の誓紙が上になる様に重ね、対象者の魔力を通せば破棄できます」


 セリアの説明を聞いて、アルフとマリオの2人は、納得をする。リーフは、セリアの説明が、分かって無いらしく、顔を顰めて考えている。


「用件は、済みました。今日は、これで失礼します」


 半ば、強引にアルフが退室の挨拶をして頭を下げる。マリオとリーフも頭下げ、部屋を出ようとするアルフに付いて行く。後ろから、セリアが「明日は、宜しくお願いしますよ」と声が掛かった。


 教会を出たアルフ達は、各々のギルドに向かう。途中で魔術師ギルドに行くマリオと別れ、アルフとリーフは、冒険者ギルドに向かって歩を進めた。

 ご指摘を頂き、筆者も納得できる内容でした。それ故、冒頭部分を加筆、修正いたしました。

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― 新着の感想 ―
この契約って、契約者本人達が会話していて、気づかずにその周囲に第三者が存在していて自覚なく会話を盗み聞きされて漏れてしまった場合ってどうなるんですか?
この契約だと。文書にして渡せば他人に伝えられますよね?
>助祭は、妙齢の女性で、背筋を伸ばし執務机に向かっている姿には、そこはかとなく気品があった。 若い女性が助祭という高位の役職に就くのもありえなくはないけど、合ってるかな? 妙齢とは結婚適齢期の若い女性…
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