004 使ってみる。その1
2025/6/14 改稿
ご指摘を戴いた「雑草」を「ザッツ草」と改名して、「普通種」とする形で修正しております。
天馬は、自身のステータスを確認して分からない事が増え、頭を掻いた。
1つは、自分をこの世界へ招き入れた存在だ。チートと思える加護とスキルを与えながらも、一切の啓示や指示がない。何のために自分が召喚されたのか、そもそも目的があっての召喚だったのか、それすらも分からない。
2つ目は、ステータスにLvがないにもかかわらず、スキルにはLvが存在するという、この世界の奇妙なシステムだ。スキルは経験や熟練度でレベルアップするだろうと推測できるが、自身のステータスを含め、HPやMPが固定なのか、それとも上昇するのか、その方法があるのかも分からない。
3つ目は、「魔法が使える」とだけ記されている魔法スキルだ。呪文や詠唱が必要なのか、それとも「使う」と思えば使えるのか。
最後に、話術や作法、商いといったスキルの存在だ。生産系のスキルが専門職的な意味合いとして存在することは理解できる。でも、話術や作法、商いなど、日本人であれば誰もが最低限持ち合わせているはずの常識。それらが、なぜスキルとして扱われるのか、その意味することは何なのか。
「考えても分からないことは、分からない!」そう割り切って、天馬はスキルを試すことした。「定番のだと『鑑定』か『亜空間収納』だよね」と考え、
「鑑定」
と唱え、周囲に生えている草を鑑定した。その結果に呆然する天馬。鑑定結果として表示されたのは、
『ザッツ草 ザッツ草 ザッツ草 ザッツ草 ザッツ草 ザッツ草 ザッツ草 ザッツ草 ザッツ草 ザッツ草 ザッツ草 ザッツ草 ザッツ草 ザッツ草 ザッツ草 ザッツ草 ザッツ草 ザッツ草 ザッツ草 ザッツ草 ザッツ草 ザッツ草 ザッツ草 ザッツ草 ザッツ草 ザッツ草 ザッツ草 ザッツ草 ザッツ草 ザッツ草 ザッツ草・・・・・・・』
「いや、ザッツ草。草の名前が分かっても・・・、もう少し何かないの? 効果とか、レア度みたいな表現」
少なからず期待を込めて唱えた「鑑定」の結果がこれだけだったことに、天馬は落胆した。ご都合主義的な展開なら、薬草や毒草、あるいは金になるような何かが見つかってもおかしくないと期待を込めて唱えた「鑑定」だった。その時、頭の中に声が響き渡る。
『鑑定魔法のレベルが上がりました』
「うわっ、びっくりした! レベルが上がるとこうなるのか!? 心臓に悪いな、これは」
『・・・・・・』
消え入るような小さい声が聞こえた気がした天馬だったが、それよりステータスの確認を優先した。すると、「鑑定」でのMP消費はなく、『鑑定魔法:Lv2』に上がっていた。
「鑑定魔法はMPを消費しないのか? 他の魔法もそうなのだろうか・・・・・・何か試してみようかな? その前に、さっきの草を『鑑定』」
『ザッツ草‐普通種』
「普通種? いわゆる、雑草? まあ、金銭的価値を望むのは・・・、無理だよね」