表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

34/85

033 大蛇の由来

2025/7/13 改稿

 天馬は左腕とアバラに何かが押し付けられる感触で目を覚ました。何事かとベッドを見ると、そこに某社御用達の「自動起床装置」にそっくりなものがあった。違いは、ホースが見当たらないことだった。


 天馬は「これも魔道具なんだろうな」と思いながらベッドから起き上がった。身支度を整えて階下に降りるが、まだ、「大蛇(サーペント)」の面々は来ていなかった。空いている四人用のテーブルを見つけ席に着く。天馬が椅子に腰かけると、女給が近づいてきて、


「朝食を御持ちしてもよろしいでしょうか?」


「いや、連れがいますので、揃ったらお願いします」


「畏まりました」


 女給が席を離れると、入れ替わるようにリーフが天馬の向かいに座った。


「おはよう、テンマ君。アルフ達は、まだ?」


「まだ、みたいですよ。それより、リーフさんって、『お酒』強いんですね」


「そうね。冒険者になったばかりの頃は、水代わりに飲んでたし。昨晩くらいの量じゃ、ほろ酔い程度かな」


 リーフの説明によると、この世界では飲み水が水袋一つで中銅貨5枚するらしい。しかし、エールなら水袋1つを中銅貨3枚で買えるという。そのため、魔法(マジック・)の水袋(ウォーター・バック)を手に入れるまでは、水袋にエールを入れて飲んでいたそうだ。


「そう言えば、皆さんは『大蛇(サーペント)』を結成して長いんですか?」


「うーん。長い、のかな? 私が入って『大蛇(サーペント)』になったから。もう5年になるかな。

 その前は、アルフとマリオで組んでいたと聞いたわ。出会った頃、アルフはCランク、マリオは私と同じDランクだったわね。で、私が入った初日、みんなで飲んで、翌朝マリオが『パーティー名は、「蟒蛇(ラプター)」ですね』って言い出してね。アルフが『それは勘弁してくれ』と言ったから、『大蛇(サーペント)』になったのよ。どっちも吞兵衛って意味があるから」


「マリオさんが『大蛇(サーペント)』の名付け親ですか? アルフさんが『蟒蛇(ラプター)』を嫌がった理由は、ここのことがあったからでしょうね」


「多分、そうね。アルフは、ここの伯父さんに頭が上がらないらしいわよ」


「誰が頭が上がらないって?」


 アルフ達が近づいて来ている事に天馬は気づいていたが、リーフは気づいていなかった。そんなリーフに、いきなりアルフが声をかけたため、驚いたリーフが椅子から落ちそうになる。それを見たアルフとマリオは、肩を震わせながら笑いを堪えていた。


「何の話しをしてたんだ?」


「リーフさんから『大蛇(サーペント)』の名の由来を聞いてたんです。マリオさんが、名付け親だと伺いました」


 話の内容を天馬がアルフに告げるとリーフは誤魔化すように言葉を重ねた。


「そうなのよ。それより、二人とも遅いじゃない!」


「そうか、お前らが早いんだろ? まだ、8時になったばかりだぞ」


 アルフが遅刻していないと言い、マリオは冷静に朝食を注文した。


「それよりも、朝食にしましょう。すいません。朝食を4つお願いします」


「畏まりました」


 と女給の声が返ってくる。


 テーブルに朝食が運ばれてきた。メニューはコッペパン、野菜のスープ、サラダ、目玉焼きと何かの腸詰め(ウィンナー)。女給が「パンの御替わりは自由です」と言って、テーブルを離れた。


 アルフ達は何も言わずに食べ始めた。天馬もアルフ達に倣い、心の中で「いただきます」と唱えてから朝食に手をつけた。


 昨夜の料理と同じく、朝食も美味しかった。パンも日本で食べていた物と遜色がなく、「この世界にも小麦に近い植物があるのだろうか?」と天馬は思う。スープも具材の出汁が良く出ていた。


 天馬は、この世界の食文化のレベルが高めであることに感謝していた。天馬の中には、漠然と「中世の食事=(イコール)粗末な食事」という勝手なイメージがあった。それが、こんなに美味しい料理を食べていられる。昨夜の魔道具の件もあり、この世界へ転移させられたこと、そして放置されていることが業腹なのは変わらないが、初めて異世界に来てよかったと思えた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ