030 魔道具の開発者と明日の予定
2025/7/6 改稿
天馬は宿に備え付けられた魔道具の数々に驚きを覚えていた。
「話は変わるんですが、この宿にある魔道具って凄いですね。この、ホールの魔道具も驚きましたが、部屋にあったお湯の出るカラン。あれも魔道具ですよね」
と、魔道具についての話題を「大蛇」の皆に振って見た。嬉しそうに顔を綻ばせてマリオが答えてくれた。
「そうですよ。あれも魔道具です。部屋の明かりも」
「あっ、部屋の明かりを消すときは、どうすればいいのですか?」
「消灯と唱えれば、消えますよ。あと、ここのは、部屋の鍵を外から閉めても消えますね」
「よく出来ていますね。誰が作ったんですか?」
「発想の天才と呼ばれた『アキラ』と知識の泉と言われた『ヒトミ』、そして規格化の鬼『タクミ』、この三人の魔道具師です。
彼らは今から100年前に現れ、その後の50年間。アキラの発想をヒトミが実現し、タクミが大量生産の方法を考案、開発したんですよ。おかげで、日々の生活が随分と楽になりました。お湯の出るカラン、光球の照明、食料を保存できる冷蔵庫等、彼ら三人の魔道具が無い生活は、今では考えられません」
マリオの話しを聞いて、「その三人って異世界人じゃないの?」との考えが天馬の頭をよぎる。
「その方々って、今でもご健在なんですか?」
「多分、亡くなっているでしょう。人は100年も生きませんから。ただ、公式の記録には、死亡したとは載っていないのです。当時は魔道具ギルドも無く、彼ら三人がギルドを作ったため、彼らがギルドカードを持っていたかも分からないんです。最後の記録は、この国を出国して東方を目指したと残っているだけです」
「そうなんですね。でも、これだけ魔道具が、充実している宿も珍しいんじゃないですか?」
「珍しいとは言いませんが、少ないとは言えると思いますよ。特に部屋で入浴できる宿は、ゴメナでは、此処と、もう一軒だけですね」
「そういえば、魔道具ギルドってモノも在るんですか?」
「在りますよ。王都に。魔道具を開発した時は、王都のギルドに問い合わせをして、既存の魔道具で同じものが無いか。既存の技術を利用していないか。審査を受けなければ、販売は出来ません。既存の魔道具や技術を利用している場合は、使用料を納める事で販売できます。
新しい技術の魔道具は、そのまま販売できますし、他の人が、技術を利用して魔道具を作り、売るなら使用料が入ってきます。個人で作り、使う分には使用料は発生しません。
ただし、魔道具の中で、魔法の皮袋、魔法の種火、魔法の水袋、迷宮からの出土品は、例外として制作、販売に制限はありません。これは、魔道具ギルドの設立以前から在った魔道具のためですね」
マリオの説明を聞いて、天馬は三人が異世界人だと確信した。名前もそうだが、マリオが言った事は、特許権の考え方だと思えたからだ。
魔道具とは別に、天馬は気になる事を訪ねてみる
「話し変わるんですが、宿代、って幾らぐらいなんですか? あと、この食事代と。誰にお支払いしたらいいですか?」
「食事は、俺らのおごりだ。宿代は親族割引きで中銅貨5枚。普通は銅貨1枚だ。今後もここを使ってくれるなら、経営者に紹介してやるよ」
「是非、お願いします」
アルフの言葉に、天馬は即答した。
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