025 冒険者ギルド
2025/6/29 改稿
カウンターに肘を付き、アルフが受付嬢に声を掛ける。
「マスターは居るか? 完了報告とゴメナの近郊の報告がある。あと、頼みもな」
「アルフ様。少々お待ちください」
アルフが出した紙を確認して、受付嬢は奥に下がった。直ぐに、その受付嬢を伴って碧眼のスキンヘッドの男が現れる。アルフより頭一つ高いその巨漢が、アルフを睨みつけた。アルフも睨み返し、一触即発の雰囲気に受付嬢は青い顔した。
次の瞬間、二人とも破顔し、拳をぶつけた。
「アルフ。俺を呼びつけるとは、面倒事か?」
「そう言うなよ、ガルフのオッサン。帰り道にゴブに襲われた。この町から馬車で半日の距離、そこまでで2回もな。Eランク以下の奴らに注意は必要だろ。原因の究明も」
「それは、本当か!」
「嘘なんか吐くかよ。馬車で半日と、もう一回は2時間半ってとこでな。ゴブは12匹と8匹。2回目が8匹。多分、その間に集落があると思う。調査を出すなら早い方が良いと思ってな」
「そうだな。アルフ、報告ご苦労。それだけか?」
「あと、こいつの登録だ」
マリオに背中を押され、天馬がガルフの目の前に立つ。天馬を睨むガルフの圧が凄い。
「こいつは?」
「こいつはテンマ。ゴブ10匹を一人で倒すような奴だ。この見た目でな」
「ほう。ゴブリンを10匹、一人でだと? 虚偽の報告は、罰則だぞ」
「だから、嘘なんか吐くかよ。大蛇の皆が証人だ」
ガルフの問いに、天馬に代わってアルフが答える。
アルフとガルフのやり取りを聞いた数人の冒険者が、天馬に好奇の視線を向けた。
「テンマと言ったな、付いて来い」
ガルフはそう告げ、左へと歩き出す。天馬は振り返ってアルフを見ると、アルフが頷いたので、ガルフを追いかける。カウンターが終わった先に部屋が在った。その部屋の前でガルフが扉を開けて天馬を待っていた。ガルフに促され部屋に入ると、ローブの老人が机に向かって仕事をしていた。
「マイル。冒険者の登録だ。先に『嘘看破』を頼む。内容は、ゴブリン10匹の討伐だ」
マイルと呼ばれた老人が手を止めて、ガルフと天馬を交互に見て、
「了解した。伝える言葉は、真のみ。虚ろある時、我は知る。『嘘看破』。わしゃ~、マイル。お主の名は?」
マイルと名乗る老人から、突風が吹いたように感じた天馬は「これが、魔術を掛けられる感覚か」と思った。
「僕は、天馬と言います」
「お主は、ゴブリンを10匹倒したのか?」
「はい」
「では、我が目に映るモノの力、隠された才能、見えぬモノ全てを詳らかにせよ『鑑定』」
天馬は、再び突風が吹いたように感じた。
「ほほぉ、こりゃ、たまげた。魔法使いとな。しかも、2系統。これは、これは。ワシの人生初の経験じゃ。ガルフ、こやつ、嘘は言っておらん。Fランクで登録して良いな」
「ああ。構わない。で、魔法は何を使うんだ?」
「『水』と『無属性』? 聞いた事のない魔法種だな。『生活魔法』と出たな」
「そうか、分かった」
ガルフとマイルの会話を聞いて、天馬は『鑑定偽装』が仕事をしてくれた事に安堵した。
「テンマ、こっちだ」
ガルフとマイルが次の部屋に入っていく。
天馬も2人について部屋に入ると、中央に巨大な水晶のようなものが浮かんでいた。その隣にはシンセサイザーほどの大きさの机があり、その上に拳大の水晶玉が載っていた。
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