021 御者台にて その2 (説明回)
2025/6/22 改稿
馬車が動き出すと、マリオによる魔法と魔術に関する講義が始まった。
「テンマ君は、魔法と魔術の違いは何だと思います?」
「詠唱の有無ですか?」
天馬は前を見たまま答えた。「はぁ~」とマリオが吐いた溜息が聞こえ、
「違います。魔法とは、魔法を使える才能を持った人だけが使えるモノ。魔術は、魔力が高い人が、魔力を扱う術を学び、その上で、行使する力、これが魔術です」
『魔術と魔術師』
マリオの説明に因ると、魔術には火、風、地、水、光、闇、無の7属性が存在する。全ての属性を使えるが、得意、不得意があるという。無属性魔術は、付与、錬金、鑑定が含まれ、無属性を除いた属性を「基本6属性」と呼ぶ。また、複数の属性魔術を極める事で使えるようになる属性もある。
複合属性の例:
・光+闇 ⇒『生命属性』
・風+水+闇 ⇒『毒属性』
・風+水+光 ⇒『雷属性』
・地+水+光+闇⇒『植物属性』
魔術師は、扱える属性の数によって以下のように分類される。
・賢者 ⇒無属性の3つと基本6属性を万遍なく扱える人。
・魔術師⇒7属性以上を扱える人(無属性の3つも1属性として数える)。
・妖術師⇒5属性以上を扱える人。
・魔道師 ⇒3属性以上を扱える人。
・学者 ⇒1属性以上を扱える人。
回復魔術は、光と闇の2属性に属し、この属性が得意な人を「治癒師」と呼ばれる事もある。
魔術師は、魔術師ギルドか教会で魔術を学ぶ。魔術は詠唱をし「呪文名」を唱える事で発現する。自らの分を超える魔術を唱えても発現せず、魔力枯渇による気絶を招く。魔力が極端に少なくなると気分が悪くなり、この状態で無理に魔術を使うと最悪の場合、死に至る。
「魔道師」以上の中には、詠唱短縮や詠唱破棄のスキルを持つ人も居る。
「魔術」は「魔法」に比べて、威力や効果は落ちる。敵味方を区別できる利点がある。
『魔法と魔法使い』
魔法使いは、その数が少なく、魔術師ギルドでの研究もあまり進んでない。
現在までに、火、風、地、水、光、闇の6属性と付与の魔法使いは確認されている。
魔法の特徴として詠唱の概念がない事が上げられる。魔術師ギルドの研究によると、魔法の発現方法は以下の3種類に分類される。
1.「呪文名」で魔法を発現する者。
2.「力を持った言葉」で魔法を発現する者。
・例: 『爆ぜろ』『吹き飛べ』『癒せ』『滅せよ』
3. 2節から6節の言葉を紡いで魔法を発現する者。
・例: 『吹け、一陣の風』
『光よ、全てを照らす光よ、闇を打ち払う光よ、浄化の光を此処に』
『風よ、逆巻き、荒れ狂え、竜巻となり、全てを吹き飛ばせ、「竜巻」』
魔法は不安定なモノあり、自身の想像力に大きく影響される。想像力が希薄な場合は、自身の身も危険が及ぶ事もある。魔術師ギルドの資料には、過去に自分の魔法で燃えたり、竜巻に巻き込まれたり、波に攫われ溺れた魔法使いがいたと記せれている。
魔法は「理」を無視して発現する事象であり、奇跡も行える。魔術師ギルドの資料には、死者の蘇生、広大な土地の浄化、神の降臨を行った魔法使いもいた。ただし、その行為の代償を自らの命で贖ったという。
「テンマ君の生活魔法は、魔術だと無属性か光属性に該当すると思います。魔法の発現は、『呪文名』に分類できるでしょう。ゴメナに着いてから、テンマ君の水魔法も見せて貰えませんか?
あと、魔術師ギルドに入ることも勧めます。魔法が使えるという事は、魔力が高いという事です。つまり、魔術が使えるという事になります。過去の魔法使いの方々も魔術師ギルドに入っていた方が多いですよ」
マリオは、自らの講義に満足した後、天馬を魔術師ギルドに勧誘して来る。
「研究対象にならないなら、良いですよ」
天馬は、苦笑いを浮かべながら答えた。そんな天馬の目に、立派な城壁と大きな城門が映る。
「見えてきましたよ。あれがゴメナですか?」
「そうそう。みなさん、着きますよ」
と声を上げ、天馬から手綱を受け取る。




