表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/85

001 何処?

2025/6/14 改稿


 彼は広がる草原に、一人ぽつんと立っていた。


 草が揺れるさやさやした音が耳に届き、吹き抜ける薫風が心地よい。右手には鬱蒼(ウッソウ)と茂った森が広がり、樹海と言った方がしっくりとくる。その上に顔を出している太陽が、まばゆい光を投げかけていた。左手を見ると、遥か遠くに城壁らしきモノが霞んで見える。外国か何処かの絵葉書の様な長閑(ノドカ)な景色だった。


「ここは、何処?」


 彼、樹天馬(イツキ テンマ)は戸惑っていた。「夢」と言うには現実感(リアリティー)があった。だが、こんな場所に居る覚えは全くない。試しに頬を(ツネ)ってみと、じんわりとした痛みが、この状況が現実であると告げてきた。


「なぜ、こんな事に?」


 懸命に記憶を手繰ってみる。自分の名前、年齢、趣味。高校を卒業し、会社に就職したことまでは覚えている。けれど、両親の顔も、学友たちの声も、もしかしたらいたかもしれない恋人の面影も、一切思い出せない。何処の高校を卒業し、何て会社に就職したのか記憶から消えている。当然、この場所にいる理由も分からなかった。


 樹天馬(イツキ テンマ)は、落ち着いた性格だった。時間的な理由で慌てる事はあっても、起きてしまった事に対して「仕方ない」と思うような、ある意味、諦観(テイカン)的な性格。だからこそ、この状況でも落ち着いていた。


 まず、自分の記憶の欠落に関して、頭部に外傷がない事を手で触って確認した。次に、自分の服装に目をやる。身に着けているのはアンダーウェア、白のシャツ、ジーンズ、そして足元はスニーカー。黒のハーフコートを羽織っていた。どれも自分が持っていた物ばかり。新品のように見える事以外は。


「さて、ここが何処かも分からず、ここに来るまでの記憶もない。服を着替えた覚えもないし、記憶の欠落も理由が分からない。もしかして、ライトノベルやアニメで流行りの異世界ってこと? それなら、僕の場合は転移になるのかな? でも、チュートリアル的なモノは無かったよね。普通は神様が出てきたり、召喚の魔法陣とかあるよね。ボッチって・・・・・・、酷くない?」


改めて、天馬は周囲を見回した。やはり魔法陣はなく、神様が出てくる気配もない。


「とりあえず、ステータス、ステータス-オープン」


 天馬の言葉に呼応するかのように、目の前に半透明のウィンドウが現れる。


「おおっ、なんか出た! やっぱ、異世界か」


 ワクワクしながら、半透明のウィンドウを見る。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
樹天馬の読み方が判らない
「アンダーウェアに白のシャツ」という服装の説明に違和感を覚えました。
面白いです!僕も小説書いてるので見習いたいです!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ