018 2回目の戦闘と・・・・・・
アルフの声に緊張が走る。
「マリオ。幻を。リーフは、マリオの幻影が出たら上に上がれ。テンマは俺と一緒に切り込む。準備しろ。ただ、幻影が出てからだ!」
「その姿は、虚。此処に在って、此処に無いモノ。『蜃気楼創造』」
マリオが呪文を唱えると、馬車の幻影が10mほど前方に現れた。馬車が進むと幻影の馬車も進み、その距離は変わらない。
「いつでも良いよ」
上からリーフの声が聞こえる。アルフも大剣を肩に担ぎ、それを見て天馬も抜刀して鞘を肩に掛けた。
幻影の馬車に誘われ、ゴブリン達が姿を現した。数は8匹。その中の1匹が、馬を襲おうと飛びかかった。その瞬間、幻影の馬車が消える。
「今だ!」
アルフが御者台から飛び降り、右側に居たゴブリンに斬り掛かる。天馬もアルフに続き、御者台から跳躍した。着地と同時に左のゴブリンを切り伏せる。そのまま前に進み、逆袈裟、袈裟、逆袈裟と3匹を斬り捨てた。
次いで、馬を襲おうとしたゴブリンを斬る。天馬が斬ったゴブリンの頭にリーフの放った矢が同時に刺さった。天馬はリーフに目を向け、勢いそのままに次のゴブリンを斬る。アルフが最後のゴブリンを斬り伏せ、戦闘は終わった。
戦闘を終えると、アルフが呆れたような声を出す。
「俺、Bランクなんだけどな~。テンマ、お前、何者だ? 俺が2匹倒す間に、6匹って。おかしいだろ」
「テンマ君。10m近く跳んだよね。私、見てたよ。ひょっとして、強化持ち? その剣も反則だよね」
リーフが幌から身軽に飛び降り、そう言いながら近づいて来る。
「強化持ちか。くぅ~、羨ましい! アイテムボックスも持って、その上、強化持ちって?テンマ、悪い事は言わないから、俺たちのパーティーに入れ」
「いきなり、何なんですか?アルフさん。リーフさんも」
「よく聞け、テンマ。冒険者が苦労する事は多い。その中でも、自分の体、筋力や瞬発力を鍛え、維持するのは大変なんだ。だが、強化持ちは違う。強化出来るんだからな。あとは、荷物だ。迷宮や探索に出ると1か月以上になる事もある。その間の水や食料、回復薬や解毒薬、普通は高い金を払って『魔法の袋』を買ったり、『荷運び人』を雇う。ここまでは、分かるよな」
「はい。何となく」
「テンマは強化持ち。つまり、冒険者向きだ。それにアイテムボックス持ち。容量は、少ないとマリオに言っていたが、アイテムボックス持ちは、鍛えれば、最低でも3人分の水、1週間分は入ると言われている。だからな、テンマ。俺たちのために、大蛇に入れ」
天馬は、欲望を隠さないアルフの言葉に少々辟易して、
「いや、我欲丸出しじゃないですか? まだ冒険者にもなってないんですから、無理を言わないでください。あんまり無理に誘うんなら、冒険者でなく商人になりますよ」
と返した。すると、
「ハッハッハ。冗談だ。冗談。取りあえずは、冒険者に成って、困った時に助けてくれれば良い。俺たちもテンマが困ったら助けてやる。それで、良いか」
「それなら、良いですけど。強引な勧誘は、お断りしますね」
笑って誤魔化しながら言ったアルフの言葉を了承した天馬では在ったが、釘を刺すことも忘れなかった。
「分かった」
渋々といった雰囲気を隠さずに答えたアルフだったが、まだ天馬を見る視線は熱を帯びていた。
 




