016 天馬君が知らなかった事
2025/6/21 改稿
句読点が多く、読みにくいと感想を戴いた話です。少しはマシなったと思います。
天馬の言葉を聞いたマリオ、リーフ、そしてアルフは驚愕の表情をして押し黙った。沈黙が天馬に重く圧しかかる。「知らないとおかしいことを聞いた?」と不安に思っていると、
「ああー、テンマはこの辺の出身じゃない? だから知らないってことか?」
そう前置きすると、アルフは説明を始めた。
「テンマが出て来た草叢の向こうには、『不帰の草原』、そして『魔の樹海』と呼ばれる所があるんだよ」
アルフの言葉に、天馬は真剣な面持ちで耳を傾けた。
「今から40~50年前、討伐軍が魔物討伐に出て行ったきり、帰って来なかった。だから『不帰の草原』。そして、『魔の樹海』ってのは、そのさらに奥に広がる場所。200年に一度、魔物氾濫を起こすと言われている樹海だ。その討伐軍も魔物氾濫の犠牲になったと言われている」
アルフの説明で、天馬は死体が在った理由を理解した。命令書にもそんな事が書かれていた事を思い出す。その間もアルフの説明は続く、
「だけど、その時からゴメナに住んでいる爺さんの話だと、ゴメナに被害は無かったらしい」
そこで言葉を区切ったアルフは、天馬の目を見据えて、
「不思議だと思わねぇか? もし、魔物が駆逐されたのなら、討伐軍の生き残りが帰ってくるはずだ。逆に、討伐軍が負けたなら、ゴメナに魔物氾濫による被害が出てるはずだろ?」
しかし、結果はどちらでもなかった。討伐軍は帰ってこず、ゴメナも魔物氾濫による被害を免れた。その不可解な状況が理由かはわからないものの、国はこの街道から東側を『禁忌の地』に指定して、立ち入りを制限しているのだと言う。
「だから、普通はそっちの草叢に入ろうとは思わない。知ってる奴は、間違いなく反対側に向かう。お前はそんな所から出て来たんだぞ? 疑うなって言う方がおかしいだろ。分かったか?」
アルフの説明を聞いた天馬は、ただ頷くことしかできなかった。そんな曰く付きの場所を背にして出てきと聞けば、自分でも疑うだろう。アルフの判断はもっともなように思えた。それよりも、自分が召喚された場所がそんな場所であったことに驚き、なぜそんな場所に召喚したのか、召喚主の思惑が気になった。
「それは知らなかったです。何と言えば良いのか、取りあえず、ごめんなさい」
「なんで謝るんだ、テンマ。それより出発するぞ。日暮れまでにはゴメナに着きたいからな。城壁前での野営は悲惨なんだよ」
アルフの言葉を聞いて、リーフとマリオは馬車の後ろに回った。アルフは御者台に大剣を置いて席に着く。テンマも御者台に上がり、剣を抱えた。
「乗ったな。では、行くぞ」
アルフは皆を確認して鞭を入れる。ゴメナを目指して、ゆっくりと馬車が動き出した。




