014 異世界で初めての その3
2025/6/20 改稿
「改めて、俺はアルフ、大蛇のリーダーだ。さっきのが魔術師のマリオ。射手のリーフはもう紹介したよな。頼みというのは、マリオが言ったように、護衛に加わって欲しいんだ。普段、ゴブなんかが出る場所じゃない。何か異常が起こっているのかもしれない。だから、魔鉄の剣を持つ凄腕に力を貸して貰いたい。どうだ?」
「凄腕じゃありませんけど、構いませんよ。馬車の運賃、と思って良いですよね?」
「構わない。よろしく頼む。じゃあ、マーニーさんに紹介する。マリオ、悪いがテンマの倒したゴブの回収と処理、頼むわ」
「分かりましたよ」
マリオは天馬の倒したゴブリンの方に歩いていく。
「テンマは、こっちだ」
アルフは顎をしゃくって、付いて来いと促した。天馬が馬車の後ろに回ると、
「マーニーさん。ゴブの討伐は終わりました。もう大丈夫ですよ。それで、お願いしたい事があるのですが」
アルフが馬車の中に声を掛けると、中から初老の人物が顔を出す。
「終わったのですか? 大丈夫ですか?」
顔だけ幌の外に出して、左右に振って周囲を見る。
「終わりましたよ。それで、マーニーさん、お願いと言うのは、こいつを護衛に加えて貰えませんか? 怪しい奴でない事は、マリオが確認済みです」
アルフに紹介された天馬は、マリオが何を「確認済み」なのか分からなかったが、
「アルフさんから、馬車に同乗させて頂く事を条件に護衛を頼まれました。天馬と言います」
「大蛇に護衛をお願いした、マーニーです。アルフが言うなら構いません。が、報酬の追加はありませんよ、アルフ」
「分かっていますよ。じゃあ、良いですね。テンマは、俺と御者台に乗ってくれ」
「分かりました」
天馬は、人生で初めて馬車に乗ることになった。
馬車の横に回ると、焦げ臭い匂いが漂ってきた。「何が?」と思い前方を見る。天馬の目に映ったのは、リーフとマリオの前で上がる炎だった。
「ゴブリンを燃やしている?」
「ああ。野生の獣が寄って来たり、偶に、不死者に成ることもあるからな。念のためだ」
天馬の口から出た疑問にアルフが答えてくれた。




