013 異世界で初めての その2
2025/6/20 改稿
「助かったよ。同業者か?草叢で何してたんだ?」
天馬に対する警戒を隠そうとしない青年が尋ねた。
「いや、小水で。僕は天馬。あなたは?」
天馬はとっさに嘘を吐いた。
「俺はアルフ。上の射手はリーフ。向こう側で討伐証明を集めているのがマリオだ。俺達は冒険者で、依頼で商人の護衛をしている。お前も冒険者か?」
アルフと名乗った青年は、油断なく天馬を観察している。リーフと呼ばれた女性も、弓に矢を番えて天馬を睨んでいた。
天馬は、アルフとリーフ以外の人が居た事に驚き、『鑑定』の問題点を再認識した。
「僕は・・・・・・、旅人です。あそこに向かっている途中です」
「ゴメナへ? 目的地は一緒か。俺らもそこに向かっている。もし、良ければ一緒に行くか? ただし、頼みを聞いてくれたらだけど。どうする?」
「頼みですか? 内容によりますが、僕に出来る事なら構いませんよ」
「そうか。じゃあ、マリオ、来てくれ。回収はリーフに任せろ」
アルフがマリオを呼ぶ。
マリオと呼ばれた青年が現れたのを確認すると、リーフと呼ばれた女性が馬車の向うに消えた。
「何ですか?アルフ」
「アイツも一緒に動こうと思うんだが、どうも得体が知れねえ。いつものを頼む」
アルフの意を汲んだマリオは、天馬に視線を移し、ローブの袖で口元を隠した。何かを呟いている。「何だ?」と天馬が思った直後、マリオから突風が吹いたように感じた。
「私はマリオ。魔術師です。よろしく」
「僕は天馬と言います。こちらこそ、よろしくお願いします」
「テンマさんは、なぜゴメナに?」
「職探しで」
「変わった格好をしていらっしゃるようですが」
「僕の出身地では、みんなこんな感じです」
「良い武器も御持ちのようですが」
「借りものですよ」
「最後に、私たちと同行するのはどうしてですか」
「偶々、僕もゴメナを目指してて。先ほど、アルフさんが誘ってくれたからです。アルフさんが言っていた『頼み』とは、この遣り取りの事ですか?」
「違いますよ。多分、アルフは護衛をお願いしたいと考えていると思います。アルフ、彼は大丈夫そうですよ」
マリオの言葉を聞き、アルフは警戒を解く。天馬も剣を鞘に収め、二人に近づいた。
天馬は気付かなかったが、マリオは『嘘看破』を掛け、天馬の答えに噓が無いか調べていたのだった。マリオがアルフに「大丈夫」と言った意味は、天馬の答えに「嘘」が無いとの意味だった。




