011 武器を手に入れた♪
2025/6/17 改稿
天馬は、ローデリッヒが使っていた魔鉄製の剣を手に取り、その造りを確かめた。
シンプルな直刀で、刃渡りは90cmに満たない程度。切先から15cmほど下からはまっすぐな刀身が続き、その中央には細やかな彫りが施されている。鍔はわずかに角度がつけられ、両側に10cmほど伸びていた。30cmはあろうかという長さの握りは、表面にエンボス加工が施されており、滑り止めとしての役割を窺わせる。鞘には一切の装飾がなく、ただ剣を収めることだけに特化した実用的な作りだった。
魔鉄の槍は、柄の長さが2mを優に超え、それに続く穂先は30cm弱。そのすべてが魔鉄によって一体成型されていて、見るからに頑丈な作りだった。
魔鉄の盾は、一般的なカイト・シールドの形状を保ちながらも、そのサイズは圧倒的だった。天馬が構えると、盾は左手の先から約20cmのところから始まり、左肩の上部約30cmにまで達するほどの大きさで、全身を覆い尽くさんばかりの存在感を持っていた。表面は意匠もなくほぼ平坦で、一切の装飾を排した無骨な印象を与える。裏側には頑丈な持ち手と、その下部にベルトループが備え付けられていた。
魔鉄の鎧は、頑丈な胸甲だった。
そして、魔鉄の武具は全て美しかった。魔鉄そのものが淡い虹色の輝きを放っていた。
魔鉄製の剣は、おそらく1kg強。鞘と合わせても3kgには満たないだろう。本物の剣を持ったことのない天馬には、その重さが軽いのか重いのか判断できなかった。それでも、想像していたよりもずっと軽く感じられた。
絹のマントは純白で、背中の中央には印章と同じ刺繡が施されていた。印章と同じ図柄は金の指輪に細やかに彫り込まれていた。
羊毛のケープは、黒か、それに近い色で染められていたのだろう。色は褪せていたものの、さほど気にならない程度だった。
天馬は、魔法の皮袋(小)に出した物を元に戻し、「魔鉄の剣と鞘」以外を『亜空間収納』へと収めた。それから、革の鞄を取り出すと、その肩紐を切り、鞘に結びつけ担げるようにする。そして、天馬は鞘を肩に担ぎ、剣をしっかりと握った。
腰高の草叢に分け入ろうとした天馬は、思い出したように「鑑定偽装」と唱えた。そして、『亜空間収納:Lv3』を『隠蔽』から『アイテムボックス』に偽装した。次に、銅貨と銀貨を出した天馬は、
「還元」
と唱えた。硬貨を「鑑定」し、表示が『銅貨-状態:通常』『銀貨-状態:通常』になった事を確認すると、それらを「収納」した。
それから天馬は草叢へと分け入った。




