009 漁る
2025/6/15 改稿
予想通り、複数の死体が在った。
「僕が認識しないと『収納』出来ないって事かな。『収納』」
天馬は『収納物』を確認すると、下記の内容だった。
『ザッツ草×163,853』『鉄の剣(破損)×6』『鉄の鞘(損傷)×6』『魔鉄の兜(損傷)×4』『魔鉄の兜(損壊)×2』『革の兜(損壊)×1』『魔鉄の鎧(損壊)×6』『革の鎧(損壊)×1』『革の鞄-中(損壊)×1』『皮袋-小(損壊)×7』『銅貨×61』『銀貨×9』『羊皮紙(損壊)×1』『人族の死体(♂) ×7』
「あれ、装備が違う死体が在るな。『展開』」
天馬は、「出来たら良いな」という軽い気持ちで「革の鞄の死体」を出すイメージをして「展開」と唱えた。すると、背中を向けた死体が現れる。その死体は革の鎧と兜、革の鞄、そして皮袋を身に着けていた。破れた皮袋の下に、コインだったモノが7枚落ちていた。
その死体は、今まで見て来たモノとは異なり、目に見える範囲に致命傷らしき傷はなかった。身に着けている装備は、革だと知らなければ判別できないほど、汚れ、傷み、苔やカビに覆われていた。
天馬は鞄の中に羊皮紙が仕舞われているのだろうと容易に想像できたが、その鞄の状態を見て触る気になれなかった。
「もう少し、奇麗だったら良かったのに・・・・・・。そうだ、『洗浄』」
天馬は、汚れや苔、その他の不浄なモノが光に清めるイメージで『洗浄』と唱えた。
淡い光が目の前のモノを包み込み、光の粒子が上っていく。光が上るにつられ、汚れや苔が消えていく。
光が消えると、天馬は恐る恐る鞄の表面に触れてみた。ぬめりや不快な感触はなくなっていた。死体も白色が際立ち、革鎧も色は褪せ、全体的に鬆が入っているが、それ以外は奇麗な状態になった。
天馬は鞄の垂を捲り、中から羊皮紙を取り出して確認する。
中に書かれた文字は掠れていて、読み取れなかったが、『損壊』と言う状態では無かった。確かに虫食いの後があちこちにあったが、羊皮紙として使うには不便がないように見えた。
「鑑定」
と唱え、羊皮紙を鑑定した天馬は、
『羊皮紙(子牛の皮)-状態:通常』
と『鑑定結果』が変化したことに気付く、次に「収納」と唱え、確認すると、
『羊皮紙:子牛の皮×1』
と変化していた。亜空間収納から羊皮紙を取り出して、天馬は首を捻る。
「羊皮紙が獣皮なのは知っていたから、最初は『羊皮紙』と出て、内容が確認できない状態だったから『損壊』と表示されたのだろうか? それが『鑑定』で子牛の皮と分り、『洗浄』で状態が改善されたから、『損壊』の表記が変わった、という事なのかな?
魔鉄も、以前はただの金属だったのに、『鑑定』のあとは魔鉄に変わった。僕の知識が『収納物』の表記に影響している? でも、酸化銅は、銅貨の儘だったし、一体どうなってるんだ?」
羊皮紙と睨めっこしながら、呟く、天馬。
「まあ、考えても仕方ない。走ろうか」
そう言って、全ての物を「収納」し、走り出した。




