一章 新たな出会いと始まりの合図
エクス「ウィル!後ろから来るぞ!」
ウィル「おっと!」
エクスの合図で背後から迫って来ていた丸太のような尻尾を<回避>スキルで避ける。
そして振り終わって無防備になった尻尾に
ウィル「シューーート!!」
<ラウンドエッジ>を喰らわせると尻尾は両断され尻尾の主は絶叫をあげた。
エクス「次ブレスだ!魔法かけるぞ」
ウィル「いや、いける!」
丸太の様な尻尾の持ち主であったドラゴンであるフィールドボス<森の子竜>はこちらに振り向くと口を大きく開けると、徐々に炎で満ちていく。
体格はブルドーザーの様でかなり大きく、巨体を支えている足も俺たちを簡単に粉砕できるほどに巨大だ。
イメージしていたドラゴンよりは丸っこく、子供だからなのか翼はあるがまだ飛べない様だ。
背中は苔むしておりここの森での生活の長さが伺えた。
ウィル「攻撃魔法の詠唱頼んだ!」
エクス「マジかよ!成功させろよ!」
俺がそう叫ぶとエクスは詠唱入った。
俺とドラゴンの距離は5mほどでこのままでは炎のブレスで焼き払われてしまうだろう。
あのブレスはターゲットを決めた後ずっと狙い続ける様で俺の速さではあの広範囲ブレスを避けられない。
普通は素早さの高い味方にヘイトを買ってもらい発射まで残り3秒になると範囲が固定されるのでその後全力疾走で避けるか、炎魔法の<ファイアプロテクション>で炎耐性を上げてHPの高く魔法耐性の高い味方に耐えてもらうのが主な攻略法だ。
エクスも<ファイアプロテクション>は持っているがさっさと仕留めたいので攻撃にまわってもらう。
ブレスは魔法攻撃扱いというのもあるが今の俺のレベルは6で相手は15で普通なら挑む相手ではない。
エクスに指示を飛ばす片手間でストレージからある物を取り出した。
ウィル「よっと!」
それはゲーム開始時に貰った初心者装備の大剣だった。
全長130㎝ぐらいで大剣にしては短めだが厚みがあるシンプルな鉄の大剣だ。
それを地面に垂直にしっかりと突き刺し、ジャンプをして鍔の部分を掴んだ後よじ登り鍔の部分に足を乗っける。
その頃にはブレスが発射される前になっていた。
すぐさま背中から盾を取り出しスキルを発動する。
ウィル「<シールドバッシュ>!」
鍔から飛んだ後すぐに少し斜め上に向けて発動すると体が一気に加速しドラゴンとの間にあった5mの距離が無くなり頭の上にまで来ていた。
そのタイミングでブレスが発射されジャンプ台に使った大剣は一瞬で溶けてしまった。
その熱気が一瞬で伝播し鎧に熱が籠ったのを感じる取る。
<シールドバッシュ>は上方向には放つことは出来ないが空中から発動させるとそれが可能になる。
エクス曰くサービス開始から発見されいるがいまだに修正されていないので仕様のようだ。
そしてレベル差もあるが<森の子竜>との体格差では<シールドバッシュ>では怯ませられない。
だけどブレス中に頭を威力の高い攻撃スキルで攻撃すると10秒のスタンを奪うことが出来る。
狙いはこれである為空中に飛ぶ事でブレスを回避し頭を狙う事が出来るこの状況に持っていきたかった!
ウィル「<スカルクラッシャー>!」
空中で大剣を構えスキルを発動させる。
そして紫のエフェクトを纏わせた一撃がドラゴンの頭を捉えた!
子竜「ギャオロロ!!」
子竜が悲鳴を上げた後子竜の口の中で炎のブレスが爆発してその巨体を地面に預ける様に沈んだ。
この状態では各耐性が下がり最も攻撃が通りやすくなる。
ウィル「チャンス!」
スタミナは少し使ってしまったが後4回は全力で大剣を振
る。
ウィル「遠慮なく受け取ってくれよ!」
無慈悲な斬撃を浴びせると背後から熱を感じる。
エクス「<プロミネンスリボルバー>」
詠唱を終えたエクスの周りに六つの火球が出現し、
それは<森の子竜>へ向かい
子竜「ギャアァァァァアアア!!!」
爆炎を巻き上げた後<森の子竜>のHPは0になりポリゴンとなって散らばっていった。
ウィル「火力ヤベェ・・・」
その爆炎を間近で浴びたウィルは迫力に驚いていた。
エクス「これでもやり込んでるからな。てか無茶しすぎ。」
ウィル「いいだろ、成功したんだから。」
エクス「はぁ・・・これだから天才は。」
駆け寄ったエクスはやれやれといった様子でウィルに言う。
レベルアップ音と一緒にドロップアイテムが表示された。
ウィル「お、レベルアップ。」
エクス「早いな、もうレベル7か。」
ウィル「まあ、もう23時だからな・・・流石に疲れて来た。」
休憩が終わった後エクスと合流した後、俺ははあの決闘の事を話した。
とは言っても決闘して来た、としか言ってない。
分からない事も多くあまり語れないと言うのもあるが自分が何に巻き込まれたか分からない為秘密にしておく事にしたのだ。
その後はエクスと一緒に狩りに出かけていた。
そこから適度に休憩を挟みながらでモンスター達を倒し続けいた。
エクス「ドロップ品は・・・渋いな。そっちは?」
ウィル「・・・子竜の牙ってのが落ちてる」
エクス「お、それレアドロだぞ。武器に出来る」
ウィル「マジか!ラッキー」
エクス「てか、もうレベル7だろ、早いな」
ウィル「エクスのおかげさ」
このゲームはレベルが5上がるごとに新しいスキル枠が解放されていく、今のレベル上限が75までなので初期の5つの枠と合わせて最大20個のスキルを装備できる。
レベル5に上がった時に騎士スキルを取っていた。
騎士スキルはヘイトを上げたりレベルが上がるごとに防御力が上がったり盾で使えるスキルが増えたりと剣と盾を使うものなら取っておいて損はないスキルとなっている。
ウィル「このゲームレベル上がりにくく無いか?」
夜ご飯と風呂で1時間の休憩と適度な休憩を挟んだとはいえ、14時から23時まで狩りを続けていたのにこれだけしか上がってない。
エクス「それに関してはゲームの寿命を延ばす為とも生産職に合わせているとも言われてるな。」
このゲームは武器作成や調合なんかでも経験値をもらえるらしく経験値量は作った作成品の品質によるみたいだ。
サービス開始から一カ月だがあの炎龍騎士団とかいうギルドはトッププレイヤーらしく、そこの戦闘員のライズもレベル23だった。
エクス「上がりにくいのもあるがこのゲーム、レベル差で経験値効率が変わるんだよ。だけどレベル差があるとキツイ、相手のレベルが3ぐらい上だと効率がガクッと落ちるし、かといって低レベルだと経験値も渋いしな。集団で狩ると経験値分割するし。」
ウィル「ほへー。じゃあこうやって格上のボス相手に二人で挑むのが効率いいのか。」
そうゆうエクスのレベルは18なのでコイツも相当やってる。
これだけゲームやりながら勉強もできるんだからずるいぜ。
エクス「そゆこと。まあどっかの誰かさんはレベル差20の相手にも勝てちゃうわけですが」
ウィル「はは!悪ぃねぇ!」
ゲームに関してはウィキペディア並みの知識を持つエクスだ。
略してエクスペディアだな。
エクス「たく、それで街に戻るか?」
ウィル「そうする。これを武器に変えられないかテオに聞きたいし」
エクス「まだ、いるといいが。よし、ファストトラベルで行くぞ」
聖羅「ずるい、私もパワーレベリングしたかった。」
明「まあ、エクスの火力が無いとダメだけどな。二人だと時間もかかるし、効率良くしてもあれぐらいが限界だからなぁ。もっと効率良いのは無いものか」
聖羅「経験値稼ぎ効率の最も良いところを探すのはゲーマーの性かしら?」