これからの願い
「なるほど……。ご主人様はそれで良いのですか?」
「仕方ないよ、試合内容とかは全部フランに任せる」
ユグスと別れた後、フランと話をするログ。その話の内容を聞いたフランはどうしようかとピンク色の髪をユラユラと揺らす
「話は分かりました。一度、マオさんとも話してみますね」
と、フランが返事をした時、試合会場から大きな歓声が聞こえてきた。フランとログが試合会場の方に目線を向けると、ちょうど試合を見終えてきたマオが二人の所に戻ってきた
「試合はどうでしたか?」
フランがマオにそう問いかけると、突然フランをぎゅっと抱きしめた
「頑張ろうね、フラン」
そう言いながらフランを頬につけて擦る。逃げないように強く抱きしめられ、困惑しつつジタバタと体を動かしながら助けを求めログを見るが、ログは見て見ぬふりをしている
「ちょっと、どうしましたか?」
少し離れようとマオの頬を両手で押す。それでもまだグイグイとフランに頬を寄せていると、クスクスと笑う声が聞こえてきた
「決勝戦の相手が決まったからですか?」
フランを強く抱きしめていた手を離し、声がした方に振り向くと、試合を終えたばかりのマリヤとミオが立っていた。驚いたフランがマオの背中に隠れ、ログは険しい表情でマリヤとミオを見る
「みなさん、お昼ご飯ご一緒にいかが?」
ログ達の様子を気に止めずにマリヤが問いかける。マオが少し振り向いてログとフランの様子を見た後、首を横に振ってマリヤに返事をした
「いえ、今回は遠慮しておきます」
「あらそう、残念……」
フフッと笑ってマオに返事をするマリヤのその後ろでミオがログを睨むように見ている。視線に気づきつつもミオと目を合わせないように顔を横に向けた
「この後の決勝戦、楽しみにしているわね」
そうマオ達に言うと振り返りミオに微笑んで去っていった。すぐに人混みに紛れ二人の姿が見えなくなると、マオが胸を撫で下ろすようにふぅ。とため息をついた
「あの方は?」
「ミオの学園の生徒会長さんだね、確かマリヤさんだったかな?魔力も強いし魔術もすごかったよ」
「そうみたいだな」
マオの言葉にログが呟くように答える。その言葉が聞こえたマオが首をかしげ話しかけようとした時、背中に隠れたままだったフランがマオの右肩に移動し座った
「さて、私達もご飯を食べましょうか」
会場入り口の方を指差しながらフランが言うと、ログはその指差した方とは逆に歩きだした
「あれ?ログどこ行くの?」
「ちょっと寄りるところがある」
「えっ……、でも試合は?」
「フランに任せている」
ログの返事を聞いたマオは右肩にいるフランをちらりと見る。目線があったフランがニコリと微笑み、マオはすぐログがいる方に目線を戻すと、もうログの姿はなくなっていた
「仕方ありませんね。作戦を考えながら二人でご飯を食べに行きましょうか」
「うん、そうだね」
マオがフランに返事をすると、二人一緒に会場入り口の方へ歩いていった
「そろそろ戻ってくるかな」
マオとフランと別れてすぐユグスといた建物の屋上で一人戻ってきたログ。一羽の白い鳥がログに向かって飛んできた。その鳥に向かって右手を伸ばすと、ゆっくりと舞い降り、手のひらに止まった
「お帰り。あの子の魔術はどうだったかい?」
そろログが白い鳥に話しかけると、答えるように大きく翼を広げた。ひらりと舞う羽根が一枚ログの側に落ちると、手のひらにいた白い鳥が一冊の本に変わった。その本をパラパラとページを開いて読む。一通り読んだ後、パタンと本を閉じるとまた白い鳥が大きく翼を広げ、空へ飛んでいった。その様子を見ながらログが独り言を呟いた
「まあ、悪くないな。あの鳥もしばらくあの人に預けておこうか」