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名前を呼ばれて

「ねぇ、ログはちゃんと魔術が使える組だよね」

「まあ一応は……」

「じゃあ一緒に練習しよう!ログがどれくらい魔術が使えるか楽しみ」

 チャイムが鳴り終わり、静かになった校舎の廊下を歩く二人。マオはニコニコと楽しそうに話しかけるが、ログはあまり返事をせず隣を歩く。マオが一人であれこれと話していると、ふとフランの姿が見当たらない事に気づいて、ログの周りをキョロキョロと見渡した

「あれ?フランは?」

 マオが問いかけてもログは聞いていない振りをしてスタスタと歩く。慌てて追いかけると、さっき見た校庭とは違うもう一つの魔術の練習するための広場に出た。そこには先に着いていたクラスメイト達が集まっていた

「では、私たちのクラスも二組に分かれましょうか。まだ魔術を使えない方みなさんは、あちらで別の先生に習ってくださいね」

 クラスの担任のレイカが手を差し出した方にクラスメイトのほとんどが歩き出した。魔術が使えるクラスメイトが数名しか残っていないのを見てマオが呆気に取られている

「まだ魔術を使えない方は今からどうするんだ?」

「確か今、魔術がどれくらい使えるか調べるんだって言っていたよ」

「使えないと分かっていても?」

「まあ一応この世界の人達だからね。校長いわく、得意不得意を知って使えそうな魔術を知るのが大事らしいから」

「そうか……」

 離れていくクラスメイト達を見ながらログが答える。レイカが残った魔術を使える生徒達に授業内容を説明しはじめ、ログやマオ以外の生徒達が緊張した顔つきになる中、マオがニコニコと嬉しそうにしている

「そういえばログは何の術が得意なの?」

「いや、特には……」

 マオの質問に呟くような声で返事をすると、校舎の方へと歩き出したログ。レイカは気づいていないのか、場から離れていくログに注意する様子もなく近くにいる生徒達に話をしている

「ログ、どこ行くの?」

 レイカに気づかれないようにマオがログを追いかけ小声で話しかけた。ちらりと振り向きふぅ。とため息をついたログもまたレイカに気づかれないように小声で返事をする

「フランが今いないから、授業が受けられない。今回は休んでおく」

 そう言うと歩く速度を上げ、校舎の中に入っていった

「ちょっとログ!」

 置いていかれたマオが大声でログを呼び止める。その声に校庭の中央付近に移動しようとしていたレイカやクラスメイト達がマオに振り向いた

「マオさん、どこに行くんですか?そろそろ授業をはじめますよ」

「あっ、はい……」

 レイカに返事をして、校舎から背を向け歩き出した。数歩歩いてログがいた方に振り向くと、もう校舎の中に入っていたのかログが居なくなっていた

「つまんないの……」

 不機嫌そうに呟くと、魔術の準備をはじめていたクラスメイト達の方に駆け寄っていった





「使えるとはいえ、大変そうだな……」

 マオと別れてすぐ、校舎の屋上に移動したログ。マオ達が受ける授業の様子を見ながらお菓子を食べていた。しばらくボーッとしながら見ていると、呪文を唱える声や術に失敗したのか騒がしい声が屋上まで響き渡っている

「ご主人様、サボりですか?」

 フランがログの前に現れ、不機嫌そうな様子で話しかけてきた。ちょうどお菓子を食べようとしていたログの手が止まり、フランがそのお菓子に目を向けた

「まだ寝ていなかったのか?」

「ええ。起きていましたし、マオさんとの会話を聞いてましたよ。私が居ないことを良い事に、私をまた言い訳に使いましたね」

 ログが持っていたお菓子を奪い取り食べながら言うと、ログが新たなお菓子を足元に置いていた鞄から取り出した

「魔術を使いたくないのは分かりますが、すぐにサボるのはダメですよ、私もご主人様も怒られちゃいます」

「そうだな……」

 二人同時にお菓子を食べながら、マオが魔術を使おうとしている姿が見えた。マオが魔方陣の真ん中で一人立って呼吸を整えている。ログが食べているお菓子がパリッと割れた時、急にマオのがログやフランがいる方に振り向いた。目線が合ったと思ったフランがマオに向かって手を大きく振る。ユラユラと揺れるフランの洋服のせいでマオの姿が見えなくなった。フランが手を振り続けるその間に最後のお菓子を食べきり、置いていた鞄を取った

「フラン、食べ損ねた朝ご飯代わりに、もうお昼ご飯を食べに行くか」

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