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新入生のログとマオ

 ここは、魔術が使える世界。この世界に住む人達が魔法がいる世界。そんな世界にメナルド街という小さな街がある。そのメナルド街からほんの少し離れた場所に経つグレニア学園という学校が建っていた。グレニア学園高等科の入学式があるその日、その学園の一室で、生徒達が緊張した面持ちで登校する姿を見つめる男性がいた。しばらく生徒達の様子を見ていると、コンコンと部屋の扉を叩く音が聞こえると、男性教師が部屋の中に入ってきた

「ユグス校長、今年度のこの学園のランクが出ました」

 男性教師が数枚の紙を差し出した。ユグス校長と呼ばれた男性が、少し青い色が入った長い黒髪を揺らし振り向き、男性教師が差し出された紙を受け取った

「やっとか。今年は遅かったな」

「今年は上位の学園が良い争いをしたそうで、ランク分けに苦労したそうですよ」

 パラパラと紙を適当にめくりながら話をする二人。受け取った紙の一番最後に書かれていたグレニア学園の文字を見つけ、ユグスがため息をつくでもなく、呆れたようにフフッと笑った

「やはり、今年も最下位か」

「ええ、そうです。もう何年目でしょうか。この学園のランクが最下位なのは」

「何年どころか何十年と経つかな」 

 二人とも困ったように笑い、ユグスが二人と間にあった机にバサッと紙を投げ捨てるように置いた。その時、再び部屋の扉をノックする音が響き、女性教師が部屋の扉を開けた

「ユグス校長、そろそろ入学式が始まります」

「ああ、すぐ行くよ」

 ニコリと微笑み返事をすると、女性教師が頭を下げ校長室を出た。バタンと扉が閉まる音が聞こえると、ユグスが窓から登校する生徒達を見た

「今年は最下位を打破する生徒が来ると良いな」

「ええ、そうですね」

 二人の会話が止まり、窓の向こうから生徒達のガヤガヤとした声が部屋まで響いていたその時、机に置いた数枚の紙の一番上の紙が独りでに動きヒラヒラと床に落ちていった








「気が重い……」

 ユグスが窓を見る少し前、一人の男子生徒がトボトボと足取り重くグレニア学園に向かっていた

「どうしてボクがこんな学園に……」

 一人呟きながらふと周りを見渡すと、初対面でも楽しそうに話し合う生徒達や緊張した顔をする男子生徒や女子生徒達が歩いていた

「みんな危ない!退いて、退いて!」

 突然、あわてふためく声が響き渡り声が聞こえたほぼ全員が立ち止まりどよめきはじめた。声を気にせず学園の門を通ろうとした時、ふわりと風が吹いた

「ゴメンね!ちょっと急いでるの!」

 グレニア学園の校舎より高い場所で聞こえた声。ユラユラと不安定な動きで空中を移動している女の子がいた

「やっぱり、魔術最下位の学園は違うな……」

 はぁ。とため息混じりに呟いている間に、女の子の姿が校舎の裏の方へと飛んで消えていった

「とはいえ、空を飛べるだけまだマシだな」

 消えていった方角を見ていると、校舎からチャイムがなり、周辺にいた生徒達が慌てて走り出した。立ち止まり横を通り過ぎていく様子を見て、思わずフフッと笑った

「魔術をうまく使えもしない生徒が来る学園か……。まぁ、今のボクには似合うのかも」

 校舎の前に残った一人になり、再び空を見上げると、雲が少し太陽を隠したのか周辺がほんのちょっとだけ暗くなったように感じた






「でも変わった学園だな。見学してきた今までの学園とは雰囲気が違う気がする」

 学園内にある大きな魔術練習場に集まった新入生達。遅れて在校生や教師達も現れ、あっという間に魔術練習場はたくさんの人達で埋まっていった


「あれ?さっきの……」

 突然、隣から聞き覚えのある声がして振り向くと、先ほど不安定に飛んでいた女の子が隣にいた

「ねえ、もしかして私と同じクラス?」

 その女の子がまた辺りを見渡しつつ問いかける。赤みがかった短い髪から葉っぱが一枚ヒラヒラと落ちた、それを見ていたせいで、さっき話していた内容を忘れてしまい、どうしようかと顔を見た時、目線が合い、女の子ニコッと微笑み顔をグイッと近づけてきた

「ねえ君、名前は?」

「……ログ」

「ログね。私はマオだよ。よろしくね」

 握手を求められ戸惑いつつもマオの手をつかむと、ざわついていた魔術練習場が急に静かになりはじめた


「みなさん、おはようごさいます」

 静かな魔術練習場に女性教師の挨拶が響く。その声にログやマオ達と同じ新入生達の表現が一気に緊張した顔つきになった

「では早速ですが、ユグス校長から皆さんへ挨拶があります」

 そう女性教師が言うと、ユグスがコツコツと足音をたてながら生徒達の前に現れた

「最初に、この学園は長らく世界中にある魔術学園のランク最下位として存在しています」

「へっ?そうなの?」

 ユグスの言葉にマオが驚いた顔でログを見た。その表情を見たログが呆れたようにため息をついた

「……知らなかったのか?」

「う、うん……。だから私がこの学園に行くって言った時、みんな苦笑いしていたのかー」

 マオがエヘヘと笑いながらそう言うと、ログがまた呆れたようにため息をつく。そう二人で話をしている側では、ユグスの言葉を聞いた他の新入生達もざわめいていた

「……ですので」

 場を静めるため、ユグスが少し語気を強めて言う。その言葉が聞いたのか魔術練習場が再び静かになった

「新入生のみなさんも在校生のみなさんと共に是非とも今年こそ最下位脱出を目指し、日々頑張ってくださいね」

 そうユグスが言い終えると、再び女性教師が話しはじめると、今度は別の教師が色々と話しはじめた

「最下位か……」

 教師の話を聞いていないミオは、ブツブツと一人事を呟いている。隣にいるログは聞かないようにまだ続く教師達の方に目を向けた

「ねえ、もしかしてこの学園って魔術を学ぶのには、あんまりな感じ?」

「まあそうなんじゃないの?」

 ログの返事を聞いたミオがまた独り言を呟きはじめた。微かに聞こえるミオの声に、ちょっと聞き耳を立てようとした時、突然ミオが両手でログの右手をぎゅっとつかんだ

「じゃあ、校長先生の言う通り最下位脱出目指してみようよ!君も一緒に私と頑張ろっ!」

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