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三題噺もどき2

ニュース

作者: 狐彪

三題噺もどき―よんひゃく。

 


 聞こえるはずのない物音がして、目が覚めた。

 あまり寝た感覚がないのは、こんな所で寝ていたからだろうか。

 それとも、かなり浅い眠りをしてしまったからだろうか。

「……」

 部屋のリビング。

 炬燵にもぐりこんで、いつの間にか眠っていたようだ。

 時間を見ていないから何とも言えないが、感覚的にはせいぜい10分目を閉じてしまったぐらいの感じがしている。

 それぐらい浅い眠りだっただけかもしれないが。

「……」

 しかし、先程から鼓膜を叩く物音は何だ。

 こんな家の中で、どうして人混みの中でしか聞こえないような雑音が響いているんだ。

 ざわざわと……足音と人の声と広告の機械音とがないまぜになったような。

 酷く耳障りな。

 おかげで最悪な目覚めだ。

「……」

 もぐりこんでいた炬燵から、体を抜き出す。

 一気に体が冷えていくが、温まりすぎた体には案外丁度いい。

 腰から下は炬燵の中に入れたまま、ぼんやりとした視界のまま起きてみる。

 我が家はあり得ないほどに冷えている。新築のはずなのになぁ。

「……」

 起こした体を机に預けながら、視界をはっきりとさせる。

 ついでに思考もクリアになっていく。

 たいして寝ていないと思っていたけど、案外寝ていたようだ。

 時計の針が1周している。

「……」

 あぁ。

 なんだ。

 やけに煩いと思ったら。

 テレビをつけっぱなしにして寝おちていたらしい。

 よく見たら携帯が床に落ちている。

「……」

 年末のこの時期は特番とか、特集とか。

 基本的に長時間の番組ばかりで、どうも苦手だ。

 あまり面白くないものばかりだし…。

 唯一ニュースをしっかりと見るくらい。

「……」

 今は、そのニュース番組が流れていた。

 どこかの地域の年末インタビュー的な奴だろうか。

 駅のホームか何かだろう。ずっとアナウンスのような声が後ろに響いている。

「……」

 今は、屈託のない笑顔で楽し気に話す子供が映っている。

 今から祖母の家に行くのだと。まだこれぐらいの年頃は、お出かけ自体が楽しいのかもしれない。おばあちゃんに会いに行くのだと嬉しそうに話している。

 これから年が上がると、祖母の家に行くのはお年玉目当てだったりもする。

「……」

 もうそんな年齢ではなくなったからなぁ。

 むしろあげる側の人間だったりしてしまうので、何とも。

 あまり年末は嬉しくない。

 出費がかさむのは、今のご時世望ましい事ではないだろう。

 まぁ、幼い姪っ子の笑顔が見れるのは、案外嬉しかったりもする。

 今年は会いに行けないけどな。

「……」

 次々とインタビューをしていく。

 若者。子連れの母親。幼い子供。里帰りをするサラリーマン。

 それぞれが、各々の事情で田舎に帰るのだと話している。

 ほとんどが新幹線だったり、空港でのインタビューだったり。

「……」

 羨ましいとは思わないが…。

 あのぐらいの頃から飛行機に乗ったり新幹線に乗ったりできて居れば、楽しかろうなぁと思わなくはない。

 残念ながら我が家の祖父母の家は、船で行く方が安上がりだったりしたもので。

 大抵は、船に揺られながらの里帰りだった。私は、船酔いが酷かったからあまり楽しい思いではない。

「……」

 年末の帰省ラッシュのインタビューの時間はおわり、次のトピックへと進む。

 一遍変わって楽しくもない内容だ。

 全く物騒な世の中だよなぁ。

「……」

 そのニュースは、ここ最近噂されている殺人鬼の話題だった。

 どこかの地域で、次々と行方不明と、死体発見。

 それの捜査を進めている警察の様子。

 現場の中継。

「……」

 犯人の目星がつかないような、ついているような物言いのアナウンサー。

 あまりはっきりと断言はできないのだろう。

「……」

 何せ、被害者にそれらしい共通点が未だに見つかっていないらしい。

 子供も大人も、男も女も、若者も老人も。

 関係なく、満遍なく。

 遠縁でもなければ、知り合いでもない。

 お互いが誰かなんて知らないような人々。

「……」


「……」

 机の上にあった蜜柑を手に取る。

 ふーん。まだ何も分かっていないと言うことしか分からない。

 これじゃぁ、そのうちこのニュースは消えていきそうだな。

 何も進展がない限りは、もう一度取りざたされるなんてことはないだろう。

 何せ今から年末だ。

 それどころではなくなる。

「……」

 蜜柑に親指を、ずぶり―と刺し、開く。

 そういう剥き方するのはあまりいないよって言われたことがある。

 血液型で変わるとか言っていたけど、そうでもないし。

「……」

 だって、彼らはみんなして同じ剥き方だった。

 年齢問わず。男女問わず。老若問わず。

 丁寧に、開いて剥いていた。

「……」

 今度は別のところにでも行ってみるか。

 もしかしたら、地域で違うのかもしれないしなぁ。






 お題:浅い眠り・屈託のない笑顔・殺人鬼

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