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四十一日目 どうしても今日中に簡易寝台を作ってしまおうとする

木酢液の壺の重さを嫌って、一旦家畜小屋まで戻り、中に置かせてもらって、ついでに用便も済ませる。

その時に、今日中に、一度に運びきろう、そうして全員分の簡易寝台づくりを、今日寝る前にやっつけちまおう!

そう、ふと思い立ったので、持ち出す荷物を全員分見直して、皆の荷物を出来るだけ軽量化して、改めて出直す。


広場に戻り、少し明るくなりつつある中、城門へ。


「お早うございます」

「ああ、うん……」


当番の兵士に挨拶して、暗い城門をくぐり抜けて要塞の外へ。

そこで履物を足につけて紐を締め、転んだり挫いたりしないように、杖をついて慎重に下り始める。


坂道を下りきると、また履物を脱いで、腰に提げ、直線の道を暫く歩いて、小さな橋の近くでまた履いて、小川方面へ。

現場に着く頃には、夜はすっかり明けている。



いつものように焚火を点け、トモコに火の番を任せ、仕掛けておいた罠をトヨキが見に行く。

雨の所為で増水するのを見越した作りにしておいた罠は水の勢いに壊されることもなく残っており、入っていた川海老や貝を捉まえると、今では壺があるので手軽に放り込んでおける。

ひょいひょい掴まえて集めると、既に水を最初に入れてある壺を、そのまま焚火の傍に石を置いて作ってある三点コンロに乗せて外側から加熱するとともに、焚火に入れてある洗った石を樹皮を剥いた細枝の箸で抓んで、壺に放り込み、焼石で直接煮る。

生は非常に怖いので、油断せずに充分に煮えたところで、箸で抓み上げて鉢に取り出し、少し冷ましてから、食えない部分を除去して、食う。


他方でエイコは一人で草を摘み、マサとぼくは葉のついた適当に細い枝を次々に伐りだす。

別の場所のもう一つの焚火の上に枝を差し伸べ、葉を重ねていって、或る程度煙が溜まるようにしておいて、そこに小枝を取り除いて樹皮を剥いた枝を渡して、先ず女子の衣類から燻してゆく。

男子より女子の衣類が優先されるのは当然。

設置を終える頃にはトヨトモが焚火の傍から


「おい、できたぞ」

「食べちゃうわよー」


と呼んでくれるので、仕事の手を止めて、小川でさっと洗うと、いそいそと食べに行く。


草や小物だけでは当然全然食い足りないので、魚も獲る。

銛で突き刺しづらいポイントにも居たりするので、本当は釣りたいのだが、糸がまだ無い。

今日はまだ増水が残っているので、無理はせず、乏しい獲物で我慢する。



食事を終えると、低木の若木を伐る。

本当は乾燥させてから運べば軽くて良いのだが、できるだけすぐに使いたいので、さっさと樹皮を剥がして丸太にして、汚れない場所に積んでおく。


途中で、トモコが

「腰帯、燻せたわよ」

と教えてくれるので、またいそいそと焚火に戻って温まりながら、ズボンを脱いで、腰帯を巻き、脱いだズボンを煙で燻す。

同様に、暫くしてズボンを燻し終えると、今度は最後に肌着を燻す。


--


一人用簡易寝台に必要な材は、丸太が長辺4本、短辺8本。それと縛るコードとしての蔓や樹皮。

但し、エコ用には細くて軽い材で済むし、マサ用にはそれよりもっと丈夫でその分重くて太い材を選んで伐る。

出来る限り各人に合わせて、細く軽いが充分に丈夫な材を選んで伐り出した。


全員分を午前中に順調に採取できたので、丸太が長辺20本、短辺40本、あと蔓や樹皮が集まった。

その後、樹皮を裂いてコードにするのが大変な手間だ。


簡易寝台を、現場で組み立てる。

コードを撚り、材を石斧で削り、組み合わせて、結わえて、組み立てて行く。


しっかり縛って結わえるのは男子がやり、女の子は補助して、骨格を組み上げる。

時々、少し間尺に合わない事があり、その都度削り直して調整する。


その後、各人が自分でコードを寝台の骨格に張ってゆく。

コードの長さが足りなければその都度結わえ足して延長する。

強度が信頼できないので、ほどほどに張る。


出来上がると、その上に早速寝転がってみて、充分に耐えるのを確認。



そうして、次はこれを持ち帰る。


各自の体格に合わせて作ったので、乾燥材にしていない現段階でも、背負ってしまえば各自でどうにか運べる。

ただ、それだと籠を背負って運べない。


だから、下駄を履かせて、引きずって帰る。

下駄無しでそのまま引きずると、当然寝台の足が削れてしまうし、足先が \ の角度で→に引っ張られるので、ちょっとした凸凹でも引っ掛かりやすい。

足先が / の角度で→に引っ張る方が、引きずった時に抵抗とか引っ掛かりが少ない。

だから下駄を履かせる。

適当なT字型の分岐枝つきの枝を伐り、それに簡易寝台の足を載せ、分岐枝に紐で縛り付ける。

両足にそれをやれば、下駄を履いた簡易寝台になる。

下駄というよりも、竹馬と呼ぶべきか。


この方が背負って帰るより少し楽でもある。



休み休み尾根の下まで来て、一旦休憩。

ここから、履き物を再び足に着けて、慎重にゆっくり簡易寝台を引きずり上る。


城門を潜って広場の兵営前まで来れば、一安心だ。

一休みした後、気合を入れて、最後でコケないように、人の流れに気をつけて、家畜小屋へ。


昨日に引き続き、今日もとても疲れたが、どうにか荷物も人も無事に家畜小屋に到着した。


拙作をお読み頂き、実に有難うございます。


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