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四十日目 これからを思い、休み、見張り番に立つ

明日からは、この臭い家畜小屋で寝起きする。


毎朝の日課として糞掃除があり、その後は水浴しないと臭くてかなわないし、不潔だ。

洗濯は、してしまうと、今は着替えも手拭もないので、風邪を引きそうで、すべきかどうか迷う……。

女の子たちだけでも、清潔で悪臭のしない恰好で居て貰いたいけれど……。

虫除け処理だけすべきなのかどうか……。


それから食事一つの為にも、毎日遠くまで、道草を食いつつ漁場まで歩いて行かねばならない。

それだけでも一苦労だ。


また毎日ではないが、履物の手入れの為に草や木といった材料を得る必要もある。

その他、手持ちの自作物品の手入れや、新たに自作する為にも、材料採取の手間、工作の手間、運搬の手間がかかる。

大変だ。


そうして、そのうえで、やっと仮小屋の建設に着手するのだ。

そうしてくたくたに疲れても、また遠くから荷物を背負って杖を手にとぼとぼと歩いて戻って来て、汚れた体を洗い、臭い家畜小屋で眠らねばならない。

そんな日々が明日から始まる。

とてもとても大変だ。


まあ、水だけは飲み放題だぜ!

やったあ!

──とでも思わないと、やってられない。


あと、家畜小屋なら正体不明の獣に襲われる心配はまずない。

だから今回のように、自主的に避難する為に慌てて逃げ出す必要は、ここに居る限りはそうそうない筈だ。


--


トヨキが家畜小屋担当者さんとの挨拶を済ませ、荷物の傍で円座に腰を下ろして、ぐへーっ、と休んでいる。


「とにかく休まないと。疲れたよ~」

「ゆっくり休まないと、身体がもたないよ……」

ぐったり休んでいるエイコとマサノリが云うと、トヨキが


「その為にも、先ずは寝台作ろうぜ」


とへばって顎を出しながら云うので、

「それって当初の予定通りだね」

というと

「おー、やる暇なんか、ずっと無かったからなァ」


上を仰いでる顔をこっちへ傾けて云う。


そうだな、今度、雨が上がったら、先ずは食事。

それから草摘み少しして、あとは簡易寝台の材料となる低木の若木を伐ろう。

伐ったら、樹皮をさっさと剥がして、樹皮と丸太を別々にして、持って来よう。

樹皮で縛って簡易寝台をささっと作ろう。

一度に運べる量が……生木は重たいので、一人分の材料を二人で運搬だな……。全員分を作るのに、三回は往復しないといけない。

大変だなあ……


「あふ……」


欠伸が出る。

眠い……


「寝ちゃってもいいよね?」

「扉は閉めておこうか、雨降ってるし」

「だね」


それから、皆で少し転寝した。


--


「おい、起きろ」


隣に腰を下ろしたトヨに起こされた。

随分暗くなっている。

いつの間にか、戸口も窓も、全部閉められていた。


「オレは寝るから、見張り番頼む」

「おぅ……おう」

「扉が開いてるから、ちゃんとな。知らない奴が来たらすぐ俺と皆を起こせよ、な」

「分かった」


トヨは今まで一人、寝ずに見張りをしていてくれたらしい……本当にしっかりしてきたな。

開拓村に居た頃とは、見違えるようだ。

トヨキの偽物じゃないだろうな……。


下らない事を思いつつ、起き上がる。

トモコ、エイコ、マサノリの三人は、地べたの上に藁をパラパラと軽く撒いて、土があまり付かないようにしたうえで、頬杖をついて寝ている。

お尻は円座に乗せている。

トヨキも横になって、同じように頬杖をついて寝始める。


ぼくは裸足で歩き回って、隙間から差し込む光を頼りに、辺りの様子を確かめる。


家畜小屋の担当者の姿はない。

一仕事終えて休みに出ているのか。


戸口は閉まったままだ。

閂は掛かってない。


繋がれている家畜を見ると、大蜥蜴は数がかなり減って、一匹しか残っていない。

牛はこの前は三頭居たけど、今は居ない。

この雨の中、一体何処へ……。


外は雨がまだ降っていて、屋根を叩いている。

時折、窓の雨戸にも雨粒が打ち付ける。

まだまだ降りやむのは先だろう。


家畜小屋の開口部を閉ざしていて暗いので、気分も鬱屈してくる。

何も変化がないのに見張りに神経を張っていても疲れるだけだ。

とりあえず、あまりこう暗いと手元不如意なので、履き物の手入れも簡単な準備だけしながら、誰かが自然に目を覚ますのを待つとする。


拙作をお読み下さいまして、実に有難うございます。


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