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作業小屋造りと、暗夜作業の許可

あの『獣肉』祭りの日から数日の間は、蛋白質と鉄分はどっさり、塩分も或る程度摂れたお蔭で、精気を取り戻して頭もはっきりしていたぼくたちだった。

それで元気な間に作業小屋建設に着手して、かなり進めた。


しかし、そんな風に栄養をたっぷり摂れる機会はそうそうない。

再び色々な栄養が不足するようになって、頭がぼーっとしながら、日々をどうにか過ごしてきた。


連日、夜明け前に臭い家畜小屋での糞掃除の後、今では水浴すらせずに、すぐに遠く歩いて谷間の向こう側へ行って、早朝に魚影を探し求め、食事したり衣類を燻したりして、朝から建設作業に邁進。

午後の日が傾いてくると資材や道具を現場の置き場へ片づけて、最小限の道具などだけを背負い籠に容れて、現場から臭い家畜小屋へずっと歩いて戻る。

日暮れ時に洗濯と水浴をして清潔にした後、臭い家畜小屋の中で虫除け処理をすると、くたくたになって、すぐにひっくり返って眠り込む。


--


「あー、また肉が食いてえなァ……」

「んー……、そうねえ……」

「狩りが出来たら、なあ……」


--


作業開始から十日が過ぎた。


今回の作業に入る前には、沢山の草で肌が切れまくってしまうのを防ぐ為に、草を手首から肘にかけて、また臑から膝にかけて、手甲脚絆代わりにぐるぐる巻き付けておいた。


最初に現場を刈り尽くして出た大量の草は、食用、薬草、紐、縄、菰、履物、その他衣類代用品の材料として利用する分の他、日干し煉瓦に鋤きこんで強化するすさ原料、焚き付け、残りはあとで塹壕の上に被せるのに再利用するので、大雑把に分類して木の下に置いてあった。

現場に置いておくもので雨に濡れると厭な分(菰・履物の材料など)は、束ねて枝から吊るして、木の下で乾しておく。


女の子は草の処理をするので手一杯なので、男子三人で交代で一人ずつ休みを取りながら掘り進めた。


掘っていくのは、岩ではないが、岩盤と言えるような堅く締まった粘土層だ。


最初はまだ表土も薄く残っていて小石も多く含まれているので、間違って石斧の刃を毀つことのないように、鋭角な角を持つだけの石を両手に持って、粘土の表面を猫みたいに引っ掻いて、少しずつ削り窪めていき、表土と粘土の混じった土を掻き寄せる。

或る程度土が溜まると、邪魔なので木製レーキで掻き集めて離れた場所へ退かしてゆく。


そうして只ひたすら掘り窪め続けると、掘る前には球面だったところが或る程度段差のついた階段状になってくる。

そうして、あとはもう粘土だけを掘り崩すばかりの段階に至ってから、もう少し削る性能の高い石斧頭を取り出して鑿代わりに用い、薪をハンマー代わりにしてカンカン叩いて、堅い粘土層をサクサク掘り崩して、作業を進めてゆく。


木の根は或る程度露出させると燃やして処理していった。


今では気温も上がって来たので、小雨程度なら仕事に出る。

天気さえ良ければ、掘るのは四日もあれば終わっていたはずだ。

だが、春は雨が結構降って、増水するから魚を獲るのも小川で手足を洗うのもそれだけ難しくなるし、また再び雪も降ったので、思ったほどには進捗が順調でなかった。

結局は倍以上もかかってしまい、やっと昨日、塹壕内排水用の溝や二つ設ける炉も含めて総て掘り終わった。


--


「狩をするには、何もかも足りてねえよ……」

「ん-……、そうねえ……」

「うわ、紐切れちゃった……えーと、草は……」


薄暗い中、揺れる影で見えづらい材料へ手を伸ばす。


--


トモコがトール経由で村の守備隊長に頼み込んだ結果、夜間に兵営前の灯火の傍に近寄って良いことになった。


そこで家畜小屋の担当者にも、ぼくたちが朝まだ暗いうちに起きた時など、家畜小屋の閂を抜いて、扉から外へ出て広場に面した兵営の篝火へ行ってもいいかと尋ねた。


「……うーん……『寝る子は育つ』というぞ? 暗いうちは寝てろよ」

「夜は疲れて早く寝てしまう時も多いんですけど、そういう時には翌日まだ暗いうちに目が醒めてしまう事も結構ありまして」

「しかしなあ……お前たちがみんな外へ出たら、いったい誰が扉に閂を掛けてくれるんだ。誰か一人は残って中から閂を掛けりゃ、それでいンじゃないか?」

「ア、その手があったか」

「うん、それでいいだろ、な?」

「ぇ~、一人ぼっちになるの~……」

「それに、それだと寝てるのを起こさなきゃならない事もあるよ」

「あの、ちょっと思ったんですけど、家畜小屋に誰も泊まっていない時って、一体どうしているんですか?」

「夜に外から錠前を掛けるんだよ。おかしな事をする奴は死刑だが、それでもやろうとする奴は何処にでも少しは居るもんだからな」


村にとってそれなりに重要な施設なので、家畜小屋には錠前が使われていたのだった。


草むらに居た時ほどではないが、これで少しは夜の手仕事ができるようになった。


それ以来、雨や雪が降らない限り、未明に目が醒めると、何かやりたい者が三人以上居る場合に限り、それらの者達だけで篝火のところへ行くようになった。

真っ暗な中で行動する事それ自体が危険だし、せめて三人は居ないと、いざ襲われた時には誰一人声を挙げる間もなく制圧されてしまう恐れもあるから。


悪天候の時には、逆に食事も摂れないまま、家畜小屋でひたすら寝て耐える。



今朝も真っ暗なうちに目が醒めたので、寝てようかどうしようかと迷っていたが、トヨとトモが目を覚ましていたのが分かったので声をかけ、眠ってたとこ悪いがマサを起こして閂を掛けて貰い、三人で出てきたのだった。

拙作をお読み頂き、実に有難うございます。



家畜小屋の担当者「ええ、暗い時に錠前開けてくれって? 厭だよ、俺に何の得があるんだよ? 夜はのんびり休ませろよ。泊まらせて貰えるだけでも有難いと思えよ。門限を過ぎても知らねえよ。広場の篝火のとこで仕事? いやホント、無理しねえで夜は寝ろよ。お前ら働きすぎだろ常識的に考えて……俺だって昼間の仕事でくたくたなんだよ、早く寝たいんだよ、ゆっくり休みたいんだよ。齢とると身体が辛くてさァ、お前らみてェな子供のうちは分んねえかも知ンねえけどさァ。いやホント勘弁してくれ……さっきも言った通り、お前らは一人きりじゃなくて、五人も居るんだからさ、一人が留守番すりゃいいじゃンか、な? な?」

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