第92話 死亡フラグはそう簡単に逃してくれないようです
俺たちが原初の森から帰った次の日。
今日は学園の始業式だ。
楽しかった?夏休みも終え再び学園生活へと戻ったと言うことを認識する式。
前世では俺が最も嫌っていた学校行事の一つだ。
まぁ途中から不登校になったから最近は行っていなかったけど。
しかしこの世界では全く苦ではない。
何故なら前世と違って、
「おはようソラっ☆ 俺は久しぶりの学園生活が楽しみだよ! 授業は嫌いだけどねっ☆」
朝だと言うのに鬱陶しいくらいのうるささで俺のもとに挨拶にくるシューマ。
「なら学園生活が嫌いなのと変わりないじゃないか」
「いやでも可愛い子たちに会えるからね☆」
それはお前がイケメンだから寄ってくるだけだろうが。
ほんとに此奴のどこが良いのだろうか。
確かにイケメンで金持ちで優しい奴だが、めちゃくちゃ情緒不安定で五月蝿いのにな。
……うん、まぁまぁモテる要素持ってるな。
「「……ちっ」」
「ちょっとおおお! なんで舌打ちするのさ、ソラにサラちゃん!」
「ちゃんって呼ぶなソラの友達」
「だから俺のことも名前で呼んでよおおお!!」
「……おはようソラ」
シューマを華麗に無視していつも通り俺に挨拶してくるサラ。
いやいつもよりも少し楽しそうだ。
その証拠に口角がほんの少し上がっている。
「おはようサラ。今日は朝から元気だね」
「ん。またソラと授業受けれる。楽しみ」
「それは良かった。俺も楽しみだよ」
「だから俺はああああ!?」
「「五月蝿い」」
「…………グスッ」
俺たちが話しているとシューマが割り込んできたので一喝入れてやると、半泣きになり出した。
俺はここで泣かれるのは面倒なので、『聞いてやるから元気出せ。それでなんだ?』と声をかける。
「それがさ~さっきからずっと気になっているんだけどさ……何で俺たちめちゃくちゃ見られてるの?」
俺とサラはシューマにそう言われて周りを見る。
すると確かに俺たちは注目されていた。
「……シューマが五月蝿かったせいだな」
「ん。同意」
「いや俺が騒ぐよりも前からだからね!?」
ふむ、どうやらシューマは自身がうるさいと自覚しているようだ。
なら何故やめないのかと思わなくも無いが、今は取り敢えず置いておこう。
「……確かに見られてる」
「そうだな……」
「だろう?」
うーん、特に俺が何かしたってわけでも無いのだが。
「シューマ、お前何かしたか?」
「いやしてない。これはほんとに」
シューマのいつものチャラさと言うか五月蝿さの無い返事が帰ってくる。
どうやらこいつは本当にやっていなさそうだ。
まぁ根は優しい奴だからな。
「サラは絶対にやってないとして……」
「いや聞きなよ!?」
「だってサラがやるわけないじゃ無いか」
「ん。やってない」
「まぁそうだと思うけどさ……」
『俺だけ疑われるのは……』と文句を言っているシューマは取り敢えず置いておく。
しかし本当におかしい。
ゲームではこんな描写は無かったはずだ。
それは勿論主人公たちもだ。
主人公たちがあったのならば、俺たちが代わりにこうなっているのはまだわかる。
しかし主人公たちにそんなことは起こっていないし、そんな事があったとは一言も聞いたことがない。
なら何が問題だ?
俺たちが何をした?
考えてみるが、一向に答えは出ない。
シューマもサラもどうしてこうなっているのか分かっていないらしく、オロオロしていた。
ただ俺はずっと気になっていることがあったが言えていないことがある。
それは、
「サラへの視線がほとんどなんだよな……」
俺は誰にも聞こえないようにボソッと呟く。
……ん?
そう言えばこんな事なかったか?
確か……俺が【ダンスク】を始めて4回目の時……。
俺はゲームをしていた時の記憶を思い出す。
☆☆☆
~周回3回目~
「今回は夏休みまでなんとかサラが死ななかったぞ……!」
俺はコントローラーを置いて『夏休みの出来事』と言うストーリービデオを流しながらカップラーメンを食べる。
そう、今回はやっと夏休みまでサラを守り抜くことに成功したのだ。
まだ4回しか出来ていないが、下手すればストーリー開始前に死んでしまうパターンもある中で、夏休みまで持ったのは、自分で言うのもなんだが相当凄い事だと思う。
「よし、これからも注意してサラを守る事にしよう。まだまだ不安しかないからな」
俺はストーリービデオが終わったので、再びコントローラーを持ちスタンバイする。
「お、今回は登校中からスタートか」
主人公は幼馴染と登校をしているところからスタートした。
ストーリーを進めるためにはヒロインの好感度も重要なため、慎重に選択を選びながら登校していたのだが……。
「ん? なんだ? どうして動かせないんだ?」
俺は突如ムービーに入ったことを疑問に思いながらも飛ばさず見ていると、普段は俺たちに向けられている視線を今日は感じないと主人公が言い出した。
どうやら何かにみんなが集中しているようだ。
主人公は俺の意志に関係なく勝手に原因の場所まで行く。
そして俺はその中心に来た瞬間に叫び声を上げてしまう。
「ええっ!? サラ!?」
そう、生徒の目線を浴びていたのはなんとサラだったのだ。
サラはよく知らない男女5、6人に囲まれて何かを言われていた。
俺は止めようとするがどうやってもムービーが終わることはなかった。
結局サラが何処かに連れていかれるまで主人公は動かせなかった。
何とか主犯たちは見つけることはできサラを探したが見つからなかった。
その1週間後、サラが死んだと担任が告げてくる。
俺は全くわからない現状にコントローラーを動かすことを忘れ、何時間も呆然としていた。
☆☆☆
まずい、まずいまずいまずい!
このままではサラのバッドエンド確定ルートに入ってしまう!
よし、今回は逃げるが勝ちだ!
「シューマ、早く行くぞ! サラも行こう」
「……?」
「お、おうわかったよっ」
2人とも困惑した表情で俺に着いてくる。
早くここから離れなければ……!
俺は生徒たちを掻き分けて進んでいく。
するとあと少しで生徒たちの大群から抜けれるところまできた。
よし、抜けられる!
俺はそう思ったが、現実もといサラの死亡フラグは逃してくれなかった。
「おい、どこに行こうとしている!」
俺は後ろから声を掛けられたので振り返ると———
「そうだよ、君たちだ! どうして僕たちから逃げようとする!」
「そうよ! どうして逃げるの?」
「やっぱり後ろめたいことがあるからでしょ!」
「これだから下民は嫌いなのよ!」
ゲームと同じ5人組が俺たちの後ろにいた。
まずい……。
さぁどうしようか……。
俺は頭をフル回転させ、この場を切り抜ける方法を考えた。
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