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第67話 原初の森

 俺とエレノアは途中で昼食を買って食べたり、昼寝をしながら数時間かけてある森にやってきた。


 因みに昼食はカレーパンだった。


 正直この食べ物をこっちの世界で見つけた時はテンション爆上がりしていた気がする。


 だってカレーパン嫌いな人おる?


 俺は前世の時から大好きだったから、偶に買って食べていた。


 自分で作ろうとも思ったけど、そんな時間もないし、意外に作るのも難しかったのだ。


 まぁこの話は置いておいて。


 今俺たちがきている森は、『原初の森』と言い、ゲームでも終盤に解禁される場所だ。


 何せ種族進化というものが、そもそもlevelカンストさせないとできないわけだし。

 

 しかし今の俺たちは到達者。


 入場条件はしっかりクリアしている。


 だがそれでも目の前の光景には圧倒されてしまう。

 

 まだ入ってすらいないが、物凄い強力なモンスターの気配もするし、何よりデカい。


 なんか人間の都市が小人の都市に見えるくらいにはデカい。


「ソラ様、この森恐ろしい気配しかしないのですが……」


「まぁここには全ての上位種族というチートどもの情報がある場所だからな……。そう易々とたどり着けない様になっているんだよ」


「えっ、戦うのですか?」


「ん? いや殆ど戦わないよ? だって戦っても経験値手に入らないから時間が無駄なだけじゃん」


 この森は余裕でlevelカンストモンスター出てくるから、流石の俺でも相手にできない。


 多分3体目くらいで殺されてしまう。


 と言うかこの森の守護者と戦闘になった瞬間に死が確定してしまう。


 この森の守護者は上位モンスターで、levelも100あり、今の俺ではどう足掻いても勝つことなどできないどころか、余裕で死ぬ。


 多分守護者にはエレノアの隠密を効かないから、エレノアも瞬殺だろう。


 暗殺者って防御力雑魚いし。


 そんなわけで目的地までモンスターに見つからない様に進まないといけない。


 因みに原初の森はゲームでも鬼畜な仕様だったが、人気な場所だった。


 何故なら広大なだけでなく、木も高いもので1本何百mの高さがあり、低いものでも150m程のものが殆どだ。


 もちろん50m程の樹木もちゃんとあるにはあるが、数は圧倒的に少ない。


 そして木漏れ日が唯一の照明のため、真夜中は何も見えなくなる。


 そのため夜には動くことができず、更に木が巨大なこともあって、幹も太く根も辺りに張り巡らされていて足場も不安定。


 更に森と言っているが、砂漠や岩山、沼地や湖もあり、海とも隣り合わせになっている。


 そのため様々なモンスターが生息しており、その数は全世界の全ての種類が集まっているとも言われている。


 ここまでは最悪に思えるだろうが、そのかわり現実では決して見れない様な素晴らしい光景が多々ある。

 

 正直言って攻略するのなら最悪な場所と言えるだろう。


 しかしオタクである俺にとっては最高の場所で、一度入ってみたいと思っていた場所でもあるが。


 俺達は隠密と透明化、《存在希薄化》という隠密の派生スキルを使って、音を立てない様にゆっくり移動している。


 会話もゼロ、と言うか会話なんてしたら普通にバレてしまう。


 だから正直今が転生して1番危険な時間だと思う。


 エレノアもこの森のモンスターのヤバさに顔を真っ青にして死んだ様な表情になっている。


 まぁ多分俺も同じ様なものだと思うが。


 だってこの森はlevel200のモンスターがうじゃうじゃいるからね?


 ゲームの時も数多の廃プレイヤーが死んでいってキレていたな……。


 まぁまさかlevelがカンストしているのに全く勝てない相手がいるなんて思いもしないだろうからな。


 俺は先人達の知恵をフル活用して、最短ルートを通っている。


 なので後半分ほどこの前進めば目的地には着くだろう。


 既に2日が経っており、疲労感がないと言えば嘘になるが、もう既に様々な素晴らしく神秘的な光景を目にしており、あまり疲れを感じない。


 今まで見たもので言えば、森に入って半日くらい進んだ場所で、少し狭い透明な湖の真ん中に1本の木が生えており、その木は縦にではなく横に広がっており、その木はなんと光っていて、湖に写っている。


 しかも木漏れ日が湖に反射してキラキラしており、とても幻想的だ。


 沢山の生き物もおり、ペガサスやユニコーン、アウルベアやグリフィンなどの強力なモンスターの他に、リスの様な生き物や、ワイルドボア、シルバーウルフ、ディアなどの比較的この森では弱いモンスターも集まっているのに争いなど起きておらず、みんな仲良く水を飲んだり水浴びをしたり、木にのぼったりしている。


 もうこの光景を見ただけで俺は泣けそうだ。

 

 エレノアは既に涙腺が崩壊していた。


 まぁそうだろう。


 疲弊したこの状態で、あんな幻想的なものを見せられたら誰だってああなる。


 その場所で夜を越した。


 夜は木の輝きが更に増して辺りを照らしており、湖に映る世界は物凄く綺麗だった。


 そんな感じで時に景色を眺め、時にモンスターから身を隠しながらゆっくりと進んでいくと、遠くの方に開けた場所があることを確認した。


 何故見えたかと言うと、周りがあまり明るくないため、明るい所は目立つのだ。


 俺達は再び素晴らしい光景があるのではないのかと、はやる気持ちを抑えながら慎重に進んでいたのだが———


「ソラ様」


「ああ、わかっている」


 最悪なことにばったりモンスターの縄張り争いに遭ってしまった。


 くそッ……どうする……。


 迂回しようにもどこまで被害が及ぶか分からないから、こいつらを出来れば視界に収めておきたい。


 それに迂回してしまえば物凄いタイムロスになるのは間違いない。


 何せこの森は全てのスケールが段違いだからな。


 今戦っているモンスターは、ワームという翼と足がないドラゴンみたいなカッコいい奴と、サイクロプスと言うファンタジーでは定番の強キャラで、巨人の様な図体に大きな一つの目のモンスターだ。


 この2体のlevelはワームが200、サイクロプスが198とダンジョンボスよりも強い。


 仕方がない……正直この戦いは元オタクとして見てみたいが、自分が死んだら元も子もないので我慢して迂回する。


 残念ながらまだまだ目的地には着きそうにない。


 俺とエレノアは2人して大きなため息をついた。


 それと同時に再び神秘的な光景がどこかにあることを願った。


読者の皆様へ


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