第63話 聖火があればリッチなんて怖くない
エレノアが某映画の大佐の様な感じになってから1時間。
やっと雑魚アンデッド達が少なくなり始めた。
その間俺はエレノアの視界に入らない様に、透明化のスキルと隠密を使って隅っこの方で丸まっていたのだが、中々に怖かった。
エレノアは高笑いしながら聖火を悪魔の様に使うので、最早どちらが敵か味方かがわからなくなるところだった……。
最後ら辺のアンデッド達は、聖火に当たっていないのに消滅していたし。
あの時のエレノアはマジで悪魔だった。
どんなふうになっていたかは詳しくは言わないでおこう。
後でエレノアに何か言われたらたまったもんじゃないからな。
俺は恐る恐るビクビクしながらエレノアに話しかける。
「あ、あの……エレノアさん、そろそろ中ボスを倒そうと思うのですが……」
「え、もうですか!? と言うかどうして敬語?」
「いやもう1時間経っているからね? それに敬語の方は放っておいてくれ」
君が怖すぎて敬語になったなんで言えないから。
「おほんっ! 兎に角、そろそろ中ボスを倒さないか? もうあまりlevelも上がっていないだろう?」
エレノアがうっと顔を背ける。
どうやら俺の言った通り大してlevelが上がらなくなった様だ。
「い、いえ、まだlevelはあがっていますよ?」
どうやら雑魚狩りにハマった様で、まだやりたそうにしている。
いやもうすぐアンデッド全滅しちゃうから。
そんなことしたら本当に悪魔だよ……いやアンデッド達からしたら天使か?
まぁそんなところはどうでもいい。
そろそろ中ボスを倒さないと俺の計画が狂ってしまう。
と言うか時間がずれたら種族進化に影響が出てしまうからな。
本当に面倒くさいゲームだよ。
今はゲームではないけどな。
俺は少し厳しめに言う。
「ダメだ。今から行かないと種族進化に支障が出る」
「はい……」
エレノアはしょんぼりとしながら雑魚狩りをやめていた。
どんだけハマったんだよ……。
「……行くか……」
俺はエレノアせいで綺麗に何もいなくなった道を進み出した。
☆☆☆
あの後も特にアンデッドに合わずに中ボスの部屋までたどり着いた。
「大きいですね~。今までこんなに大きな扉を見たことがありません……」
まぁそれはそうだろうよ。
10m近い大きさの扉があったら俺も見て見たいもんだ。
そんな事を思いながら扉をゆっくりと開いていく。
1分ほどかけて開けると、そこは古い王城の玉座みたいな場所だった。
エレノアは驚きて口を半開きにしている。
俺は何度もゲームで見ているので特に驚きはしないが、それでも目を輝かせてしまうのはしょうがないことではないだろうか。
そしてその玉座には1人の骸骨が座っていた。
『……何者だ……? 我の元へきたと言うことは、死ににきたのか?』
骸骨がゲームと同じ言葉を発する。
しかもテレパシーでだ。
しかし俺とエレノアはフェンリルで慣れているので大して驚かない。
俺たちが驚かないことに少し驚いている様子だが、すぐに元に戻り、玉座から立ち上がって杖を手に取った。
『我は今機嫌が悪い。ここで死んでもらおう!!』
骸骨がいきなり【サンダーアロー】と【ファイアアロー】を大量に放ってきた。
「エレノア! 奴がリッチだ! 取り敢えずこの攻撃は避けるぞ!」
「はい!」
俺たちに向かって何百もの魔法が向かってくるが、全て見切って回避する。
俺はゲームでの攻撃パターンを覚えていることもあって、目を瞑りながらでも回避できるが、もしものことがあってはいけないのでしっかり見てから回避している。
だが俺とエレノアにはこの魔法は少々遅すぎた様だ。
最小限の動きで全く掠りもせずに回避できる。
そして俺たちは魔法が途切れた瞬間に同時に、
「「【聖火】ッッ!!」」
またまた聖火を放った。
すると見事にリッチに当たり、既に右腕と左足が消滅してしまっている。
しかしここで攻撃の手を緩めない。
「【聖火】ッッ!!」
「【闇夜を切り裂く一閃】」
『———ぁ———』
エレノアの聖火と俺の専用スキルがリッチに当たり、一言も話すことなくあっけなく消滅した。
やはりリッチ如きでは、神獣の固有スキルには耐えられない様だ。
2人で額の汗を拭って次のボス部屋へと歩き始めた。
「リッチってあんなにも弱かったのですね! それなのに沢山levelが上がりました!」
道中でエレノアが興奮しながらそんな事を言っていたので無視してしまった。
だって聖火や聖剣がなければリッチは十分に手強い相手だからだ。
だから決して弱いわけではない。
まぁエレノアはそんなこと知らないと思うが。
俺は後でエレノアに教えておかないとなと、頭の中で考えていた。
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