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第2章最終話 クリスティーネとソラ

 俺が自身の身の危険を感じて学院長室を飛び出すと、目の前にクリスティーネがいた。


 しかし俺は飛び出たわけで……


「あ、あたるあたるうううう!! ふんっ! ぐぺッ!?」


「へっ……? きゃああああああ!!」


 俺は目の前にクリスティーネがいて一瞬思考が止まったが、すぐに再起して空中で身を捩ってなんとかクリスティーネを避ける。


 しかしその代わり壁に激突してしまった。


 くそ……これも全部学院長のせいだ……。


 あの人が変な事になるから……。(元凶はこいつ)


 俺が学院長に心の中で文句を言っていると、クリスティーネが心配そうに寄ってきた。


「だ、大丈夫……? いきなり飛び出てくるから驚いて悲鳴あげちゃったけど……びっくりさせてごめんね」


 いや心配するとこそこ?


 俺が壁に激突したのを心配するんじゃないの?


 まぁ悪いのは飛び出た俺なんだけどさ……。


 俺は頭や体に付いた壁の破片を手で払う。


「それでクリスティーネはどうして学院長室の前にいたの?」


「いや、ソラ君がこの部屋に入って行ったって聞いたから……」


「もしかして俺に用事があったの?」


 俺がそう聞くと彼女はコクンと頷く。


 うーん、なんか俺したっけ?


 いや心当たりがありすぎてどれかが分からない。


 もしかしたらクリスティーネじゃなくて生徒会長としての用事かもしれないし……。


 俺は少しビビりながら言うと、


「うん、ソラ君に少し話があってね」


「へっ!?」


「取り敢えず人が少ないところにいこっか」


 クリスティーネは俺の手を掴んで何処かに歩き出した。


 俺はと言うと……


 めちゃくちゃ恥ずかしいんですけど! それに至る所から殺気が飛んできているんですけど!


 多大なストレスを感じていた。






☆☆☆






 クリスティーネに連れられてきたのはゲームでも行ったことのない場所だった。


 学院内のはずなのに、何故か丘で周りは森に囲まれている。


 更に丘の至る所に色とりどりの花が咲いていてとても綺麗だ。


 正直言って俺の好きな感じの場所である。


 やばい……今度から疲れたらここにこよう。


 俺は即座にお気に入りの場所として記憶に記録した。


 それに今日は綺麗な青空でとても気持ちいい。

 

 出来ればサラと一緒にここで弁当を食べたいな。


 今からでもお昼寝がしたいが、この後も授業がある。


 まぁ俺は別に受けなくてもいい気がするんだけどな。


 俺が地面に寝転がっていると、クリスティーネが俺の隣に座った。


「それでね、この前の事でお礼が言いたかったの」


「この前って?」


「第2王子をボコボコにした事」


「えっ!?」


 な、なんで……? 


 確かに全員眠らせたからクリスティーネは見ていないはず……。


 しかし生徒会長にバレるわけにはいかない。


 まあもう既に無理そうだけど。


 少し諦めながらもとぼけてみる。


「えっと、どう言う事かな? 俺にそんな力ないよ?」


「むぅ……嘘つきね。私は見てたんだからね。私のためじゃないのは分かってるけど……それでも嬉しかったから……」


 これは完全に見られていましたね。


 まさかクリスティーネだけ物凄い速さで起きたとか?


 あの時は怒りで周りが見えていなかったから確認してないんだよな……。


 しかしここまで言われたら否定するのは逆に失礼になるだろう。


「はぁ……全員眠らせたから安全だと思ったんだけどな……」


「ふふっ、どうやら私にはあまり効果がなかったみたいね。これでも生徒会長ですからっ!」


 そう言って大きな胸を張る。


 俺はスッと目を逸らす。


 女の子が男の前で胸を張るんじゃありませんっ!!


 目の前で胸を強調されたら嫌でもそこに目がいくだろうが……。


 俺は危機感の少ないクリスティーネが心配になるが、周りの人には冷酷だから大丈夫かと思い直す。


「まぁ本当はクリスティーネの為でもあったけど……ボソッ……」

 

 俺は小さな声でそうこぼす。


 あの第2王子と婚約させられるなんて地獄だからな。


 それにソラとっては大切な幼馴染なんだろうし。


 この体を借りている身としては見て見ぬ振りはできない。


 あと、俺もゲームでは結構好きな方だったし。


 勿論1番は世界、いや宇宙一可愛いサラだけど。


「それじゃあ今から昼寝でもしよっか」


 生徒会長ともあろう者が堂々と授業をさぼろうと提案してきた。


 流石にこれは断る……


「うんそうだね」


 ……なんてことも出来ず、自分もちょうどしたいと思っていたので、同意して目を閉じる。


 まぁ誰かに知られてお礼を言われるのも悪くないな。


 でも気をつけないといけない。


 このままだったらバレてしまう。


 そんなことを思いながら眠りについた。



(第2章ソラの幼馴染 了)

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