第26話 魔法側での出来事と忍び寄る魔の手
剣術の方でセリシアとレオンが戦っている時、魔法の方でサラとシューマは、シャーロットの話を聞いていた。
「えっと……剣術の生徒達は既に始めていますが、剣と違って魔法は1つ間違えると大惨事になりかねません。なので私達の方は、魔力操作をきちんと出来ている人だけ、模擬戦をしてもらいます」
至極当然のことを言っているシャーロット先生だが、やはり不満を持つ生徒もいるようだ。
男子生徒が文句を言う。
「はぁ? そんな簡単なことを何でこの魔法使いの名門家であるザーヴェラー家のこの俺がやらないといけないんだよ!」
どうやらテンプレの傲慢な貴族の息子のようだ。
ソラがいたら『お前は何様だ』と、物凄い顔を顰めていただろう。
しかしシャーロットは少し困った顔をするだけで、優しくその生徒達を諭す。
「いやですから、確認しないと危ないので……。確認できたらどんどん戦ってもらっても大丈夫です……」
「なら俺はできるから大丈夫だな! それでいいだろシャーロット先生?」
そう言ってシャーロットを見下ろしながら言う。
「いやですから私に見せてくれれば大丈夫だと……」
「五月蝿いッ!」
そう言って殴ろうとする。
それに2番目に早く反応したのはサラだった。
サラは自身に【身体強化】を発動し、一気に駆け出す。
そしてある魔法の効果範囲に入るまで全力で走る。
そして一瞬で近づくと。
「【スタン】【口封じ】」
闇魔法の第4階位の魔法を発動して男子生徒の動きを止める。
そしてシャーロットよりも少し高いくらいの身長のサラは、動けず、口もきけない男子生徒達に絶対零度の目で見上げながら鋭い言葉を放つ。
「……五月蝿い。文句言うならさっさとやればいい。出来ないなら黙ってて」
「お前俺が誰だかわかっているんだろうな? 俺は有名な……」
「ならさっさと見せればいい。一々文句言うな」
「ぐッ……なら取り敢えず【口封じ】を解除してくれ」
男子生徒がそう言うと、サラはじぃっと見つめると解除した。
「はっ! 馬鹿な奴だ! このアルバート様に逆らうのがいけないんだ! 喰らえッ、【ファイアボール】ッッ!!」
解除した瞬間に男子生徒改めアルバートが【ファイアボール】を放つ。
サラは自身も魔法を放とうとするが、突然【ファイアボール】が消滅した。
「なッ!? と、どうして俺の魔法が……」
「ッ!? ……シャーロット先生」
2人は突然のことで驚くが、先に冷静になったサラは先程のことはシャーロットがやったのだとわかった。
なぜならシャーロットの周りには魔力が漏れ出ており、強者の風格を醸し出していたからだ。
シャーロットを見たアルバートはあまりの圧力に蹴落とされ、大人しくなる。
「アルバート君。大事な話があります。一緒に学院長の所に向かいましょうね」
シャーロットは威圧感のある笑顔でアルバートに言うと、アルバートはコクコクと首を縦に振ってシャーロット先生について行った。
アルバートはサラの横を通る時にボソッとサラにだけ伝わるように呟く。
「お前は絶対に許さない。必ず殺してやる……!」
そう言ってシャーロットと共に学院内に消えていった。
ずっとシャーロット達を見ていたサラは、小さくため息を吐いて視線を外す。
一方で残された生徒達は、臨時の教師に魔力操作を見てもらい、大丈夫な人は同じく魔力操作を出来ている人と模擬戦をし、ダメな人は、教師と一緒に練習をすることとなった。
「チッ……邪魔しやがって。あと少しだったのに……」
サラへと怒りを募らせていた者が、もう1人いる事に、気付く者はいなかった……。
☆☆☆
(ソラ視点)
俺はセリシア先生との模擬戦が終わったあと、少し離れた所からこの騒動の一部始終を見ていた。
そして俺は大きくため息をついて肩を落とす。
やはりこのイベントが1番早かったか……。
しかしこれはゲームと全く同じだった。
それじゃあ、動き始めるとしますか。
————サラの死亡フラグを潰すために。
世界最強の一角が1人の愛する人のために動き出す。
こうなったからには、もう誰にも止められない————
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