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第4章最終話 サラの力を取り戻しに行こう

 俺はみっともなくサラの前で泣いてしまったため、羞恥で顔を隠していた。


「穴があったら入りたい……」


「……私は気にしない」


「俺が気にするんだよ……」


 慰めてくれるサラのその優しさが今ばかりは物凄く俺の心を抉る。


 くっ……つい最近は忙しくてずっと忘れてたけど……俺って前世では陰キャだったからメンタル弱いんだった……。


 やはり転生しても根は変わらないらしい。


 俺は恥ずかしさを隠す様にコホンッと咳払いをすると、サラに提案する。


「——サラ」


「……ん、何?」


「俺と一緒に学校辞めて、残りの分体を探しに行かないか?」


「…………どうして?」


 サラは俺の提案に首を傾げる。


「もしかしたらサラは探したいと思っているんじゃないかなぁ……と思ったのと、俺がサラに万全な状態になって欲しいからでもある」


 それを言った後に俺はブンブン手を振って付け足す。


「も、勿論サラがいいならだけどね! サラは今分体らしいけど、本体と同化しても記憶は無くならないんでしょ?」


 俺としてはここが1番重要だ。


 こんなに仲を深めたのに、いざ会わせたら記憶を失って、『貴方誰?』なんて言われた日には俺は多分死んでしまう。


 俺は恐る恐るサラを見る。


「……同化しても記憶は消えない」


 サラがいつもと変わらない口調でそう言う。


 俺はそれを聞いた瞬間に思わず胸を撫で下ろしてしまった。


 いやこれは誰だってそうなると思う。


 だって大好きな人の記憶が無くなるかもと思ったら気が気じゃないだろ?


 だからそれがないと知って俺は緊張の糸が少し解けた。


 まぁまだ俺の提案に関しての返事がないから相変わらず緊張してばかりだけど。 


「……学園辞めても大丈夫なの?」


「え、俺?」


 サラが自分のことではなく俺のことを心配してきたので、俺はキョトンとしてしまった。


「……ん。ソラにはソラの人生がある。私は別に探したいとは思わない」


 そう言うサラだが、心なしか寂しそうに見える。


 ここで引くのは男じゃない!


「俺は大丈夫だ! 人生をサラに賭けると決めてるからね! 何なら学園には色々と面倒な事があるし……最近サラが可愛いからって俺に紹介しろとか言ってくる馬鹿どもがいるんだよな。勿論おはなしして帰ってもらってるけど。今まで全く気にもしてなかったのに、今更サラと付き合おうなんてこの俺が生きている限り絶対に許さん。——あ、後お金なら大丈夫だぞ。修行中に倒したモンスターの素材とか宝とか全部持ってるから、売れば100年くらい豪遊できるくらいあるし。それに——」


「——もういいっ、もう分かったから……!」


 俺が如何にサラに不自由させないか語っていたらサラに止められた。

 

 サラの顔が真っ赤になっているので、どうやら恥ずかしかった様だ。


 ……俺そんなに照れさせる様なこと言ったっけ?


 俺が何でか分からず首を傾げていると、サラはモジモジしながらもしっかりと自分の意見を言う。


「…………本当にいいの?」


 その顔は若干の不安を抱えている。


 だがそんな顔はすることはない、と俺は笑顔で頷く。





「…………うんっ!」





 サラは俺の慰めてくれていた時の様な笑みとは違う、嬉しそうな満面の笑みだった。


 





☆☆☆







 次の日、俺たちは王都の外にいた。


 あれからすぐに学園長であるルイーゼに中退届を出して俺たちは学園を辞めることとなった。

 

 その時にルイーゼにはめちゃくちゃ渋られたが。


 そしてシューマ達には今日の朝に別れの挨拶を済ませている。


 今のサラは完全に私服である。


 ワンピースと言うシンプルな見た目のはずなのだが、俺には女神に見える。


 久しぶりに見たけど、めちゃくちゃ可愛いな……。


 俺がサラに萌えていると、サラが恥ずかしそうにジト目で見つめてきた。


「……恥ずかしい」


 そう言うサラはもっと可愛いですよ。


 俺は思わず口に出そうになったが、これ以上言うと動かなくなりそうなのでやめた。


 俺はサラに手を差し伸べ、




「さぁ俺のお姫様、長い旅に出掛けましょう。決して退屈はさせませんよ?」




 わざとらしく畏まってそういうと、サラは俺だけにしか分からない笑顔で、




「————よろしく、私の騎士」





 嬉しそうに俺の手を握った。




 


 新作を投稿しました。

 是非みてみてください。

『チートを貰えなかった落第勇者の帰還〜俺だけ能力引き継いで現代最強〜』https://ncode.syosetu.com/n6463hy/

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