一人と一匹
この日は山道を歩いていた。
まだ、頂上まではしばらくある。俺は身体を休めるところを探した。
顔をあげ、あたりを見渡すと古い小屋を見つけた。
日も暮れてきたので、急いで向かった。
小屋の中は埃っぽく、誰かが使っているような気配はない。
俺は、埃のかぶった囲炉裏に火をつけ団子を食べ、休息をとった。
「ガタガタドタ」物音とともに目が覚めた。
急いで刀を持ち、小屋の扉を開けた。
視界には何にもない。安堵し、視線を下げるとそこには、犬が倒れていた。
「すいません。何か食べ物をいただけないでしょうか?」
空腹で倒れていたようだった。
俺は犬を抱え、小屋へ入れ、持っている団子をあげた。
犬は嬉しそうに尻尾を振り、「ありがとうございます」と何度も言いながら食べていた。
落ち着いたところで、話を聞いた。
名前は「虎鉄」。飼い主には捨てられ、ずっと森をさまよっていたらしい。
3日間何も食べれず飢えていたところ、俺に気づき追いかけてきたようだった。
元飼い主が戻ってきたと信じて。
「桃太郎さん、お願いがあります。私に鬼退治のお供をさせてください!
命が危ないところを助けていただいたお礼がしたいのです。」
「死んでしまうかもしれないが、いいのか?飼い主の事も。」
虎鉄は真剣な顔で頷いていた。
一人と一匹、草木を分けながら山をくだった。