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この作品には 〔ガールズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

夢の人

作者: rita

【はじめまして】


 ふと気づくと、私は見覚えのないところにいる。目の前には海、足元は砂浜。見上げれば夕暮れ時のように綺麗なオレンジが朧気な雲とともに空を華やかに描いている。


 ここはどこなのでしょうか。


「ここは君の夢の中だ。」

 声のした方向を見てみると、同じ年頃の少女が、歪な三日月のようなものに乗っている。ハンモックのように寝そべっている彼女は長い黒髪の所々に赤や緑のメッシュが細く入っており、無表情無感情で、私を見つめていた。


 私は声に出していたでしょうか。


「夢だから。君の心の声も聞こえてしまうもの。」

 それでは、邪なことは考えられないですね、と感想を抱きつつ、この少女が私にとってどんな存在なのかを思い出そうとする。ここが私の夢だと言うなら、この人には会ったことがあるはずなのだ。


 あなたは誰なのでしょう。


「君の夢の中に住んでる人。例えば君が物語の主人公なら、私は相棒的な立ち位置になる。それともゲームのチュートリアルから君を支えるナビガイドかも。」

 相棒とナビガイドでは差があるように感じたが、とにかく私にとって大切な人であることは理解できた。ところで。


 これは明晰夢というやつですか。


「そう。夢の中で、これは夢。と認識したら、それは明晰夢。試しにこうなれっと夢を操ってみる?」

 私はもちろん、言われた通りに考えてみた。たとえばあの綺麗な空が時間が経って星空になるのはどうだろうか。

 しかし、なにを思っても風景は変わらない。


 風景が何も変わりません。


「この場合は、情景と言うべき?どうでもいいか。そんなことより、君がここに来たということは、つまりなそういうこと。」

 彼女の言いたいことが私には何も伝わってこない。つまりはどういうことなのだろうか。

 ふわーっと歪な三日月が、まるでホバー移動するように近づいてきて、彼女の顔が私の目と鼻の先まで接近する。嫌な気分はせず、整った顔面に口付けでもしてやろうかと思ったが、私には同姓に恋愛感情を抱くような気持ちはなかった。

 彼女は優しく微笑み、私の頭に軽く手をのせて、撫で始める。


「よく頑張りました。」


 これはただの夢で、彼女は私の相棒かナビガイドのような存在だ。現実の私に何があったのかなんて何も覚えていないが、きっと私は頑張ったのだろう。

 そして目が覚めてからも頑張るのだろう。


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