『ベチャッ』
「ここから落ちればさすがに死ぬだろうな〜」
私は一人でつぶやく
44階建てのビルの屋上
私は今から自殺する
(44階だなんて縁起がいい?ね)
裕福な家庭
無償の愛をくれる両親
たくさんの友達
愛してくれた恋人たち
才能溢れる自分自身(自分で言うのもアレだけどね)
だがいつも何か足りなかった
誰といても、どこにいても、何をしていても
心の穴に吹く風が苦しい
ああ、嫌いなんだ
世界の全てが
共に笑い合う人間も
楽しい趣味も
心の最下層にいる穴は叫んでいる
全部嫌いだと叫んでいる
だからと言ってはなんだが
自殺しようと思う
もうめんどくさい
どうでもいいんだ
自殺すらただの気分だ
靴は脱がなくていいや
飛ぶ
ものすごい風、風
目を閉じる
これは結構楽しいかも
1回しかできないのが残念だ
目を開けてみる
私、地面に向けて飛んでるみたいだ
でも実際には
『ベチャッ』といって終わりだ
落ちてるんだ
1秒と待たず
私は死ぬんだ
「……うぇッ……!?」
何だこの感情は
私は、怖い、のか?
死ぬのが
どうでもよくないのか
なぜ、なぜ私は…
…そうか……
私にも
好きなものが一つだけあったんだ
『私』は
『私が好き』
だったんだ
今更わかった
ああ、やっぱり私
死にたく
『ベチャッ』