008 野生のゴブリン村
レベル20になってから3ヶ月。
少しずつ朝晩が肌寒くなってきた。
これはもう数ヶ月もしたら、本格的な冬がはじまりそうな季節になりそうだ。
「本当にこっちでいいのか? もう半日近く歩いているんだが・・・」
「アギギッアギアギッ(ハイ、マチガイアリマセン)」
「アングマールがいうなら間違いなんだろうけど・・・」
そんな冬支度をしなければならない大切な時期に、ぼくは魔群地帯シヴメースの森の中を10時間以上歩いている。
はじめは意気揚々と「新狩場キター!」なんて喜んでいたんだけどなー。
今となっては、あの頃の自分をぶん殴ってやりたい気持ちでいっぱいだ。
正直いうと疲れた・・・。
いい加減足がクタクタだ。
なぜぼくが森の中を何時間も歩いているのか。
それは配下のオークたちが「野生のゴブリンの村を発見した」といってきたからだ。
エクストラスキル【魔物言語】で配下のオークたちとコミュニケーションをとっている中で、彼らから様々な情報がもたらされた。
1つ目は狩場。 配下のオークたちは森の中にいるモンスターを探し回っていたのかと思っていた。
だが、実は毎回おなじ場所にモンスターを狩りにいっていたらしいのだ。
班ごとに複数の狩場を持っており、1つ目の場所にモンスターがそこにいれば狩る。
いなければ別の狩場に移動する、といった方法で狩りをしていたらしい。
はじめは手ぶらで帰ってくることもあったのに、ここ最近は毎回2体以上のモンスターを狩ってくるようになっていた。
狩りが上手になったのかな?と思っていたが、そういう理由があったのね。
オークたちは言いづらそうにしていたが、効率よく獲物を集めることはとても重要なことだ。
はじめにポップゾーンを発見した配下たちの功績を、ぼくは素直に褒めた。
飛び跳ねて喜んでくれたのは、彼らの主として嬉しかったなー。
周りのオークたちの嫉妬心がエグかったけど。
射殺すような目つきで褒められてるオークたちをみてる姿には、少しゾッとしちゃったけど。
ま、まあ。
成果には評価を。
功績には褒美を。
これがぼくのモットーだ。
これからも、役に立つ仕事をしてくれた配下たちは素直に褒めるようにしよう。
喜んでもらえるのは、ぼくとしても嬉しいしね。
配下たちはおなじ場所で狩りをしている。
これはつまり、この森の中にモンスターの湧き場所、もしくはモンスターを引き寄せる溜まり場があるということだ。
効率よく魔物が溜まる場所があるとわかれば、食糧問題は解決する。
豊富な魔獣資源がある限り、配下の魔物たちは飢えることがない。
そう思い、ぼくは一気に配下の数を増やした。
今では200体以上の魔物がぼくの拠点で活動している。
配下の急激な増加は、Dランクのオークであればを魔石で魔力を回復しなくても、1日10体は召喚できるようになったことも大きな要因だろう。
まあ、Cランクは1日に2体が限界なんだけどね。
今は数を増やして拠点を増強したい時期なので、Dランクのオークを中心に召喚している。
Dランクといえど、10体以上で連携して襲いかかれば格上であるCランクのモンスターにも勝てるから、Dランクで問題ないんだけどねー。
だけどもっと格上であるBランクやAランクのモンスターの襲われたら、さすがに勝てるか自信がない。
なので1日に10体オークを増やし、魔石で回復して1体Cランクのトロールかオークジェネラルを召喚するようにしている。
未だにBランク以上に出会ったことはないけれど、用心に越したことはないからね。
何事も備えあれば憂いなしだ。
そして2つ目は、今向かっている「野生のゴブリン村」だ。
「おっとっと。 着いたか?」
「アギギッギギャッ(アレガ、ゴブリンデゴザイマス)」
先頭をいくオークが指差す先に、ゴブリンたちの村がみえた。
身長は1m弱ほど。 肌は小汚い薄緑色をしていて、顔は醜く歪んでいる。 耳はピンと尖っており、時折みえる牙は汚れて真っ黄色だ。
だが、見た目なんて正直どうしてもいい。
ぼくの配下のオークだって、十分醜いんだから。
今更外見で差別しようだなんて思ってはいないさ。
それよりも、もっと注意してみるべきは彼らの住居だ。
おおー。
魔物の村なのに、想像以上にちゃんとしてるじゃない。
建築や鍛冶が得意な種族と「ガイドブック」に書かれていたが、まさかこれほどとはね。
崖下の窪地に造られた村は、少し荒れてはいるがニンゲンの村と遜色ない見た目をしている。
長屋のような住居に食料を貯蔵する倉庫。 井戸や排泄物を溜める場所など、文明的なモノもみられる。
・・・うちの拠点よりキレイなんじゃね?
うわー。 なんかちょっと恥ずかしくなってきたな。
ボロボロの小屋をみて「文明的な生活」だなんて思っていたが、ゴブリンの足元にも及ばないじゃないか。
「こりゃあ、絶対に眷属にしないとな」
「アギッギャウギャウッ(ホントウニ、ナカマニスルノデ?)」
「ああ、もちろんさ」
ニヤリと思わず笑みが溢れる。
ランクアップで手に入れたワールドスキル【魔物使役】を、ようやく試せるときがきたのだから。
今日の21時に次話【007 コミュニケーションって大切よね】を投稿します!
今日は2話目の投稿になります!
異世界に魔王として転生した主人公アルトは、少しずつ仲間を増やし、強くなっていきます。
彼はどんなスキルをゲットしたのか? チェックしてくださいね(⌒▽⌒
ぜひ読んでください(*^^*)
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