003 魔群地帯シヴメース
「グウゥ、アギギャアッ」
「おっ、今日はでかい牙ウサギか。 よくやった、偉いぞアングマール。 それにお前たちも」
「アッギギッ」
「「「アギャーギャッギャ!」」」
1メートル近いデカさの牙がはえたウサギ魔獣を運んできたアングマールたちをオーク褒める。
このデカい牙ウサギはDランクの魔獣なので、Eランクよりも少し大きめの魔石がとれる。
消費した魔力を回復させるためには魔石を喰うのが一番手っ取り早いので、アングマールたちオークが狩ってこれる牙ウサギは嬉しい獲物だ。
「味方の損傷はないか?」
「グウッ、エギアギッ」
「そうか、ザガンが怪我をしたか。 怪我が治るまでの間住処で休ませておけ」
「グウゥ・・・」
「まあ、そういってやるな。 あいつも君とおなじ、ぼくのために魔獣を狩ってきてくれる大切な眷属だ。 可愛く想う部下を使い潰すようなことはしたくないだけさ」
「アギギ、グウギャッ」
「ああ、その間は頼んだよ。 今日はもう魔獣はいいから、鍛錬をしっかりしておくように」
「ギュウッ、アウアウギャッ」
ぼくからの指示を受け、アングマールたちオークは少し離れた鍛錬スペースへと歩いていく。 近くで鍛錬をされるとガチャガチャうるさいので、離れた場所でやらせている。
「お前たち、牙ウサギから魔石を取り出しておいてくれ。 ぼくは洞窟の中で少し休むことにするよ」
「「アウーッアギギッ」」
牙ウサギの解体を、解体処理担当のオークたちに任せ、ぼくは寝床となっている洞窟に入っていく。
ベッドを置いただけのボロボロの寝床。 地球人だった頃からは考えられない生活だが、転生した当時に比べれば幾分マシになったと思う。
貯蔵していた魔石をボリボリと頬張りながら、転生したばかりの頃を思い出す。
剣と魔法のファンタジー世界に「魔王」として転生してから、早1ヶ月の時間が経った。 はじめはなんの知識もなく不安だったが、今では現地人並の知識は手に入れていると思っていいだろう。
まずこの世界の1年は、地球よりちょっと短い360日。 1日は24時間で、1時間は60分、1分は60秒となっている。 太陽は東から昇り西に沈むところもおなじだ。
時間や環境が似ていることは助かった。 丸っきり違うと、生活スタイルを見直さなきゃいけなくなるからな。
次にニンゲン。 この世界には、人種として「人間」「獣人」「ドワーフ」「エルフ」が存在する。 人種が混成する国も存在するが、多くはそれぞれの人種ごとに国を形成している。
身体能力が高く、一部には魔法適正がある者もいる「獣人」。
防御よりのステータスで物理攻撃では多種族を圧倒、鍛冶や工芸を得意とする「ドワーフ」。
魔法全体に高い適正があり、森の中では多種族の追随を許さない「エルフ」。
そして特別高いステータスは存在しないが、稀有なスキルを持つことがある「人間」。
他にもエルフ亜種族の「ダークエルフ」やドワーフ亜種族の「ドヴェルグ」なども存在するが、ここでは割愛する。
こういうファンタジー世界では人間種は差別されていそうなものだが、残念なことにそういう種族的な差別は全体としては存在しない。 国ごとに「○○が嫌い」みたいなのはあるようだけどね。
次にモンスター。 この世界には「魔物」「魔獣」「魔族」の3種類のモンスターが存在する。 「魔物」と「魔獣」にはランクが存在し、Eランク〜Sランクまでの6段階で、「強さ」を基準に分類されている。
「魔物」は人種に近い姿をしているが、人種との交易交流はない。 というかそもそも人種とは言語や文化の違いから会話すら成り立たない。 「ゴブリン」や「オーク」、「トロール」などが存在する。
「魔獣」は獣に近い姿をしているが、他の獣と違い体内に「魔石」と呼ばれる魔力の塊を持っている。 この魔力の塊である「魔石」から蓄積した魔力を取り出すことで、魔法や幻術などを使うことができたり、身体能力を強化するなどする。 「動物系」や「昆虫系」、「ドラゴン系」などが存在する。
「魔族」は「魔物」とおなじく人種に近い姿をしているが、戦闘能力は「魔物」とは比べ物にならないほど高い。 「魔族」には「吸血鬼」や「鬼人」、「悪魔族」などが存在する。
総じて人種とは相容れないモノたちがほとんどで、出会ったら殺し合うような関係だ。
次に地理。 この世界には大きな大陸が4つあり、それぞれ「ヘルム大陸」「ミルム大陸」「クルム大陸」「トルム大陸」と呼ばれている。
どこも似たような気候(1つの大陸に四季がある地帯と、雨季乾季がある地帯に別れている)らしいが、ヘルム大陸とミルム大陸は北半球にあるので距離的に近い。 だがクルム大陸とトルム大陸は南半球に存在しているため結構遠い。
ちなみに今ぼくがいる場所は「魔群地帯シヴメース」と呼ばれている。 ヘルム大陸最南の半島にある、魔物や魔獣が跋扈する超危険地帯だ。
「危険地帯っていう割には、オーク総出でも勝てないような魔物には今のところ遭遇してないけどね」
Dランクの魔物であるアングマールたちオークが犠牲を出しつつ狩れる限界はCランクまで。 以前みたCランクの魔物と余裕で狩ってこれるDランクの牙ウサギとの差で計算すると、Bランク以上の魔獣や魔物はオークたちが総出で戦っても勝ち目はない。
Bランクのような強い魔物や魔獣に戦いを挑むぐらいなら、余裕で殺せるDランクの魔獣を狩ってきてもらうほうが効率がいい。
それになにより、せっかく魔力を消費して召喚した眷属を使い潰したくはない。 特に数が少ない今は、自分の安全のためにも減らすわけにはいかない。
「さて、魔力もちょっと回復してきたし。 そろそろ眷属を召喚していくかな」
ほぼ0まで使い切った魔力だが、魔石を食べて半分ほどにまで回復した。 これなら今日はあと3体ほど召喚できるな。
右手に意識を集中させ、ワールドスキル【魔物召喚】を発動する。
読んでくださってありがとうございます!
最後に【奏からのお願い】
『面白い』『続きを読みたい』と思って頂けましたら、『評価ボタン☆☆☆☆☆』を是非お願いいたします!
感想も随時お待ちしております。
今後も本作を書いていく上で大きなモチベーションになります。 是非皆さまからの感想、評価をお待ちしております。