僕が契約者になったわけ 5
僕が契約者になったわけ 5
「ジャジャーン!」
うれしそうに壺にかかっていた布を取り外しを、騎士がうれしそうにお披露目をする。
「何してんのよ」
夫の愚行にさすがシスターが頭を抱える。その反応からそれが間違いなく本物であることは明らかだった。
「ほう、これに婿が挑むと!」
興奮した状態で彼女の父が興奮した様子で言った。
「そのようですね。しかし、本物ですよ。ヴァルキリーの力を感じます。間違いなくいますよ」
シスターは頭を抱えながらうめくように言った。
「ふっふふ、まあ、これくらい乗り越えんと庶民出では皆が納得せんだろう。うちの娘をやるには・・・」
「彼の経歴や今の活躍を考えたら問題ありませんがね」
やたらと嬉しそうに反応する父親をシスターはそうたしなめた。
「さすがに無理じゃないかな」
彼女も苦笑いして言う。
騎士はそういうと親指を立てた。
「大丈夫、彼ならできる。俺が保証しよう」
「何処にその自信が・・・」
「まあ、言われた通りの練習はしておきましたが・・・」
「ふっふふ、君ならやれる。俺はそう信じている。というか、君以外はできないとも思っているがね」
騎士はニヤリとわたって言った。
「俺にもできないし、妹にもできないと思っている」
「へえ」
意外と冷たい目で言った。自分にもできないと言われたのが気にくわないようだ。
「なるほど。やってみますか」
そこまで言われたらやるしかない。
「いよいよか」
父親が嬉しそうに言った。これから婿が惨殺されるのが楽しみでしょうがないようにも見えなくはない。
対して、騎士は勝利を信じて疑わないようにも見える。
なんだろうね。
壺に触ってから目を閉じて魔力を流す。
「我挑むは汝の試練」
そういうと壺から煙が出た。一先ず、煙から離れると、煙が辺りを包み、しばらくすると晴れた。
そこには神々しい光を放つ美しい乙女が立っていた。
「ほう」
思わず呟いた。
『貴様が挑戦者か、いざ、勝負』
いきなりの鋭い突き、それを剣ではじいた。魔力でしっかり覆っているので、何とかはじくことができた。
一先ず、距離をとる。
「かなり速い」
そう呟いて様子を伺う。すると距離を一気に詰めてきた。足払いをかけるが精霊のためか通り過ぎる。
「くっ」
振り下ろされた剣を前転しながらかろうじて避けた。
なんとか、後ろを振り向いて次に飛んできた剣を受け止めた。速いが随分と直線的な剣だなと思った。
戦乙女ならば、もう少し技のある剣を振ってきそうなものだが、これならば、彼女の方が優れている。
違う点をいうならば、こっちの方が圧倒的に早い。
さらに切り返しの剣を振るが、それを何度か受け止める。やはり、技術がないような印象だ。
だが、逆に違和感も覚える。何かある。そんな気がする。
なんどか、打ち合い。それが来た。
上段に振り下ろした剣を受け止めようとした途端、剣から剣圧が吐き出され、剣を覆っていた魔力が吹き飛ばされたのだ。
「な!」
なんとか、後ろに飛び退りそれを避けた。
それから彼女の剣を受け止めるのではなく、打ち落とす方に力をかけた。
何度か、合わせていくうちに剣をうまく払いヴァルキリーの背中に回った。
左手でナイフを抜き、首筋にナイフを突き立てた。
『見事だ』
そんな声がかかるとヴァルキリーが背後に回った。
『我は汝と共に生き、何のために尽くそう。その身が亡びるまで。わが契約者よ』
うれしそうにヴァルキリーは言った。
「ちょっとまった!」
と彼女がいきなり出てきた。
「その人は私のモノよ。だからね、私とも契約しなさい」
『不可能ではないが、我を介しての誓いは普通の結婚とはわけが違うぞ。魂の共有に等しいがそれでもいいのか?』
「もちろんよ。何せ。わたしあんたより強いから」
『おもしろいことをいう。ならば、我に勝てたなら、我が直接汝らの契りを認め、夫婦として祝福してやろう』
「なんか、気に入らないけど、乗ったわ!」
彼女は剣を抜いた。
『なめるな小娘!』
決着は一瞬だった。彼女の魔力で覆った剣による突きが魔力を放出し、ヴァルキリーの剣をはじくと、同時に返す剣で彼女が胴を切りつけた。
『そうか、それを選んだか、それもまた技術』
ヴァルキリーは驚きの表情で言った。
まさか、魔力を放出を真似されるなんて思わなかったのだろう。意外な行動に対応する前に切りつけられたということだ。
「まあ、彼が散々あなたと打ち合ってくれたおかげで、あなたの太刀筋読めたし、あなたの魔力の放出するやり方もみたし、それを実際に使ってみたらだけよ」
『見事だ。二人目の主よ。共有の主ができたことが異例だが、夫婦ならそれもまたよしだろう』
「ふっふふ」
彼女が嬉しそうに笑う。正直、ヴァルキリーよりも素敵に見えるから不思議だ。
「あいつもあいつだが、うちの妹もやべえなあ。真似なんかしようとか思わねえぜ」
「高度な力技って感じね。あの子らしい」
騎士とシスターは身内に対してあまりな発言。
それを見た父は少し考えたのち。
「ふむ、どこの馬の骨とわからんやつに娘など渡してたまるかと思ったが、あれを見せられてこの二人の仲を裂くほどわしもバカではない」
自分で言って、自分で頷いた。
あなたも大概では?
「二人の結婚を認めよう。加えて、孫ができたら最低週に1度は見せてくれんかのう」
「わかった。それは飲みましょう」
彼女もため息交じりに言った。そして、嬉しそうにこちらを見つめた。
「これで文句なしに結婚できるね」
「ああ」
「えへ」
彼女はそういうとうれしそうに僕に抱き着いてきた。
そんな猫のように可愛い彼女の髪を撫でていると、自然と顔が近づき、キスをしていた。
そして彼女を貪っていた。
「お前ら!」
父親がたまらなくなって叫んだ!
「「ごめんなさい!」」
二人が同時に謝罪すると、その場を笑いが包み込んでいった。