勇者パーティー in オーディナル聖王国 33
「用意はいいのかい?」
ドレクは笑みを零して嬉しそうに言った。“王竜の契約者”の正装備である、竜鎧と七竜槍を着ていた。
今回の大会のドレクは顔を隠し、出場している。
正装備を着込むと、ヘルメットがついたフルアーマーの鎧のため、それを切ると誰が誰だが、わからないという欠点というか、そういうものなので、仕方ない部分がある。
こんなものを着込んで街をふらついていたら、竜王国以外なら、声をかけられることは間違いない。そんな恰好をしていた。
戦闘訓練をしているときはドレクはこれを着込んでやっているので、割と慣れているが、見慣れないものも多い。
フェミンもドレクのその姿を見て、「孫にも衣装というか、誰でもほぼ一緒ね」というステキな感想をくれた。
ほめてくれてもいいのに・・・
とか、ドレクは内心思ったが、それも無理かと最近は思い始めている。嫌われていないだけマシということにしておくことにした。
「偉そうだな小僧」
「あんたの元部下をやったのは俺だしな」
そんなことを考えていたドレクにガルドルは嬉しそうに返した。ラプサムが思ったよりも好戦的だが、こちらも負けずも劣らず好戦的だ。
おそらく、二人は永遠のライバルに近い立場だったのだろう。最初の頃は、しかし、段々と実力差が開き、ラプサムは落ち着きだし、ガルドルは助長された。
それが今まで二人の関係だった。
レミアの離脱による二人の関係性の変化が変わった。そのため、助長されたドレクの自信が破れ、今の感じになったのだろう。
「殺気がびんびんだな」
ドレクは少し嫌な会物を感じた。この前あった時より、かなり覇気などが上がってきていた。
「厄介この上ないな」
自分と同じように闘技場のど真ん中に立ち見つめあう、ドレクに聞こえないように呟いた。
あまりうれしくないことだが、その反面、楽しい気分になる。強い相手がさらに強くなって目の前に立ってくれたのだ。
「おもしれえ」
ドレクはそういうと槍を構えた。ガルドルもそれを見て両手にショーテールを抜き構えた。
「へえ」
ドレクは思わず笑みを零した。
ガルドルの肌が赤くなっていた。初手から“炎身”を使う気のようだった。
「いいねえ」
ガルドルはそういうとガルドルとドレクの間に魔力障壁を張った。それなりの強度を誇るものだが、ガルドルはそれにショーテールを振り回して壊した。
「さすがだな」
ドレクはあまり悔しくなさそうに言った。気にした様子があまりない。
ガルドルがすぐ前に立っていたが、それをドレクは槍ではじき返した。ガルドルが驚きの目になった。
「どうした?」
“炎身”で人間に武器をはじかれた記憶はほとんどない。そして、ドレクはそれほど魔力を練った様子は見られなかった。
「力は“勇者”以上だな」
ガルドルは剣を振りながら、言った。それをドレクは槍で弾きながら鼻で笑った。
「体力はそれなりに自信があるのでな」
武器と武器をぶつかり合いながら答えた。ドレクはガルドルの剣に普通について行くことができたのだ。
ガルドルは随分と攻勢に出ていたが、距離を置いた。
「槍術・・・というか、武器の技術はお前が上だな」
「大剣を・・・勇者の剣をまともに使わせてもらっていたのは最近だしな」
「なるほど、そんなやつに負けたとは・・・」
「ダンナ曰く。あれには誰も勝てないらしいぜ。“理の剣”はすぐに解析して、所持者に有効な力を与えるらしいからな」
「そうか・・・まあ、見せるのも駄目かもしれないが、奥義を見せてやる」
ガルドルはそういうと纏わしていた“炎身”の魔力に変化を起こす。
「黒い炎?」
「とくと味わえ」
ガルドルはドレクに近づくと剣を振った。ドレクはそれをやりで止めて見せるが、そのドレクの体に黒い炎が吹きかけるようにくっ付いた。
「はあ?」
それがドレクの体に広がる様に燃え上がった。
「ざけんな」
ドレクが文句を吐いた。だが、それが全身に広がるのをドレクは感じた。
「光すら飲み込む我炎だ」
「飛んでもねえ隠し玉だな」
ドレクは悔しそうに言って、膝をついた。
「魔力を燃やして・・・あんたに流しているのか、そして炎は強化され、広がっていく」
「そういうことだ」
「油断したぜ」
ドレクは立ち上がろうとしたが、その首に剣を突きつけられた。
「やるか?」
「やめておくぜ」
ドレクは苦笑いを浮かべるとその場に倒れ込んだ。ガルドルは剣を振るとドレクを包んでいた黒い炎は消えた。
その後。ガルドルは右手を観客席に突き出した。その右手の先にはカミラがいた。
カミラは少し恥ずかしそうだが、笑顔で手を振ってそれに答えた。それと同時に観客席が沸き上がった。
今大会の勝者は前回に続き、ガルドルだった。
地上初の連覇という記録が大会に残った瞬間でもあった。




