勇者パーティー in オーディナル聖王国 31
「商人ギルド推薦カルヤックと勇者パーティードレク!」
和也は笑みを零して向かい合った。ブロードソードを両手に持っている。
ドレクはそれをみて、ニヤと一瞬笑った。
「ガルドルさんの前座としてはまあまあか」
挑発するように言った。バカにするような響きもあった。
「舐めていると、いたい目に会うぞ。さっきの男のようにな」
和也がそういうとドレクは肩を竦めた。やれやれといった空気を出していた。どこか馬鹿にしているような空気すらそこにはあった。
「ふん」
和也は背を向け、距離をとった。
闘技会は基本的には審判から声をかけることはない。不意打ちだろうと何だろうと本人たちの自由である。
和也もドレクもそうした小細工が好きではないらしい。二人は同時に向かい合うと自然と戦闘態勢に入った。
間合いを一瞬で詰めて和也が切り込んでいた。さきほどのレオンと比べると速度は遅いが思い切りがよかった。その切りをドレクは受け止めた。
他の場所を切りつけようとしたが、槍を自在に動かし、和也の攻撃を完全に止める。
和也が両手の剣を様々な角度で打ち込んでるが、すべてドレクの槍の柄で受け止められた。かなりの硬度があり、そのドレクの槍は折れることもなく、切れることなく、和也の攻撃に耐えていた。
「くっ」
さっきとは全く違う感触に驚きを覚えた。まるで、巨大な壁に剣を打ち込んでいるようなそんな気さえする。
ただの壁ではない。鋼鉄以上に硬いの壁だ。それに何度も何度も振っては見たものの。
その硬さに和也の攻撃が全く届かなかった。
「ふざけんな」
和也が恐怖を覚えたのはこの壁に打ち込んでいっても破ることができない。そんな気持ちが溢れて生きていた。
この世界に来て初めて真面目に修行をした。そして、本気でこの剣術を手に入れた。
その双剣術よりも、目の前にいる男の槍術の方が上であることが明らかだった。
「ふざけんな!」
和也が叫んだ。
無限に近い体力と魔力を使って次々に切り込んでみるがやはり、それには届かない。まるで、絶壁を登らなければいけないような気分だ。
それほどに高い壁に和也は感じた。
「くそがっ!」
離れるとドレクをにらみつけた。
ドレクはもう終わりかとばかりに槍をついてきた。和也のように速い動きではない。だが、しかし、流れるような動きで、チェスのようにその突きは和也の動きを封じていく。
突きを放ち、距離を近づき、短く持って切りつけ、避けた瞬間に柄の先を突きつけ、それを避けると振り下ろしが降りてきて、ギリギリの態勢で避けることになる。
それを繰り返していくうちにやがて、無理な避けとなり、姿勢が崩れていく。そして大きく姿勢が崩れるとすぐに足払いを行うとあっさり転んでしまう。
あっさり転ぶと、ドレクは和也の体に足を乗せ、のど元に槍を突きつけた。
「・・・まいった」
その屈辱的な姿に悔しそうにうめくように和也は言った。ドレクが圧倒的とも言える力の差で勝利を収めた。
「これが“王竜の契約者”」
和也は悔しそうに言った。
「そうだ。これが竜騎士の対人の槍術だ。あんたじゃあ、練習にならないな」
ドレクはのんびりと呟いた。
「くっ!」
和也はそういうと逃げるように退場した。早くいかないと殺すとドレクが口パクで言ったからだ。
こんな屈辱的なことは初めてだった。和也がどうしても殺したい奴ができた瞬間だった。
“王竜の契約者”。
その名は和也の心の中に刻まれた。
「いきがっていたわりに、あっさりやられたものだな」
退場してゲートをくぐっている時、次の試合に向かうべく出てきた男に話しかけられた。それは同じ“魔王”の持ち主である男だった。
「うるせえ、お前だって、あいつには負けるだろうな」
「まあね。ガルドルさんのが強いし」
和也の言葉にネヴィルという“怠惰の魔王”の持ち主は少しうれしそうに答えた。自慢しているように思えた。
ネヴィルは少しガルドルという男に心酔しているような節がある。ガルドルと接触したことがあり、しかも共に戦った記憶があるような節があった。
「そんなんでいいのかよ」
「まあ、個人的な趣旨で出ているだけだし、一回戦に俺は勝利したんだよ。今はそれで十分かな」
少し嬉しそうに彼は答えた。
「随分と腑抜けた野郎だな。てめえも十分怠惰なんじゃねえか?」
「さてね。どうだろうねえ」
そのままネヴィルは歩き出した。
「精々がんばれよ」
「そのつもりだよ」
ネヴィルは片手を上げて答えた。飄飄とした動きにわずかなやる気を感じた。特に問題ないように和也は思えた。
「今日はかわいがってやるか」
和也はうれしそうに言った。
しかし、気になることがある。最近、彼女の姿を見なくなった。その彼女の名前はミュラである。
何かあったというのだろうか?
「裏切りか・・・」
そういえば、あれもアキラから宛がわれた女だ。その可能性が高い。
「そういうことか」
和也は小さく言うとアキラに対して嫉妬の念を燃やし始めた。あれを使っていいように自分を使う。その才能には驚いたが、こんな所でそれをしてもいいのかわからなかったが、そろそろ自分を見捨てる気がありそうだ。
「陽・・・」
小さく言って、和也はそっと笑みを零した。




