勇者パーティー in オーディナル聖王国 28
「おい、バルザックどういうつもりだ?」
闘技場から上がってくるとそんな言葉が帰ってきた。
怪力のバルザックこと山崎春明は自分と同類の白木和也をみた。和也は春明と同じ魔王であり、“嫉妬”担当ということになっている。春明は“憤怒”担当ということになっている。
「盗賊ギルドからの依頼だ。なんでも用意していた選手がモンスターに襲われて、この国にたまたまいた俺に依頼があった。おとといの話だ」
「そうか・・・」
何か思い当たる節があったらしく、和也は少し考えたような様子を見せた。
「なんだ。お前、俺が何か思って出たと?」
「そうだ。あいつが仕込んだと思ったんだ」
「だとしても、さっきの試合結果に不満はねえよ。あっちも本気じゃないしな」
「なんだと?」
「なんだ。気付かねえのか?あいつはあの持っている力だけじゃないぞ。何せ、勇者の仲間候補に決まっている男だからな。あれだけじゃない」
春明は困ったように言った。
「どういうことだ?」
「お前は知らんのか?“蘇生”を持ちの“聖女”。“光の戦乙女の契約者”。“王竜の契約者”。以上が勇者の仲間候補と古くから決まっているものたちだ」
春明はニヤニヤしながら言った。
「その三人にも特別な力があると?」
「ああ、伝承ではその三人に囲まれた勇者にほとんどの魔王がやられている。“強欲”が気を付けているのはその仲間がそろっている勇者たちの強さだ。やつが集めたいのはその戦力に対抗できる力だ」
「俺たちを集めているのも・・・」
「そういうことだ。俺たちは奴らに対抗できる力があるかどうか、知るべきだ」
「まだ、届かないと?」
「ああ。あれ一人なら俺たちでもどうにかなるが、“蘇生”が入ったら、さらに問題になる」
「なるほどな。だが、俺たちは選ばれた人間だろ?まあいい。俺があれを倒せばいい」
和也は嬉しそうに言った。かなりの自信があるように思えた。
「そうか・・・」
春明はそんな和也の背中を見送りながら苦笑いを浮かべた。
こいつに任せて大丈夫なのか心配になるところだ。まあ、でも本命はこの闘技会ではないだろうしな。
と春明は心中で毒づいた。
この件はこの和也は知らないはずだった。“強欲”の魔王こと川原陽の口からは教えていないはずだった。
知っていたら、どれほど怒るのか。楽しみなものだと思った。
「いかに怒り狂ってくれるのか、ちゃんと“嫉妬”してくれるのかどっちかだろうな」
ニヤニヤ笑いながら、春明は言った。
「冒険者ギルドより流浪の騎士カゼルと商人ギルド推薦、カルヤック選手です」
そう紹介され、和也はゆっくりと会場にやってきた。そこに一人の男が向かい合うようにやってきていた。
冒険者ギルドから派遣された。騎士崩れの腕の立つ男という情報がすでに入っていた。。
「坊主か」
長剣と盾を構えてその男は言った。和也は得意武器のブロードソードを二刀流で構えた。
「いくぞ」
男は油断なく構えた。
「俺の剣を見せてやる」
和也は天才である。そう、今の和也はなんだってできる。剣術だって“嫉妬”の力で昨日手に入れた。
そして、それを発展させて二刀流にした。この剣だって特別製だ。
そう簡単に負けるものではない。
和也は騎士崩れが間合いを詰めてきた。だが、それはシールドタックルというシールドでぶつかる技だった。
「打ち合う気はないのか!」
和也は避けようと動くと、その避けた方向に剣を突き出してきた。
ブロードソードでそれをはじいた。着地した瞬間、視界を埋め尽くすように盾を突き出された。
やっかいだ。
和也はボヤくように心で呟いた。次の一手を打たれるが、なんとかそれを剣ではじいた。
のど元の剣に突き出された剣をはじいたのだ。だが、盾で抑えられ、はじき返しきれず。切り返される。
魔力で上げた身体能力で一気に後退させられた。逃げるように大きく距離をとった。
「ふざけるな」
こちらからの攻撃を盾で守り、攻撃の瞬間、盾をわずかに動かし、相手の位置を確認して突きを放っているのだ。隙とかそういうレベルではない。
身を守り、その隙に攻撃をする。積極的な守備からの攻撃。
「ふざけんな」
和也は思わずぼやいた。
もっと簡単に華麗に勝つ予定だった。その予定だったのにこんな所で躓くわけにはいかなかった。
「いくぞ」
騎士は魔力を高め、そして、一気に間合いを詰めてきた。
それに対し、和也はその盾に突きを放った。ガキンという音が鳴り、動きが止まった。
「なめんな!」
和也は盾で右手がはじかれるのを感じながら、回転していた。その和也の体に向かって騎士は突きをだしていたが、その突きを和也はかなりのスピードで回転し受け流した。
騎士が驚愕の目になるが、それを無視して突きを放った。
ブロードソードが騎士の腹を捉え、突き刺さった。血がその場に飛び散る。
「それまで!」
審判の声が聞こえた。
ちっ、内心舌打ちを師ながら、そこで剣を止めた。すぐさま、神官がやってきて、騎士の治療に入る。
和也はその光景を見ながら、冷めた気分になった。
悲惨な光景を見せ、それを治療するのを大衆に見せる。ここまでがこの大会の流れであり、治癒魔法の凄さ、つまり教会の凄さを見せるための大会なのだ。
怪我が酷ければ、酷いほど、教会の凄さが示せる。
凄惨な光景を見世物にしている。さすがの和也も嫌悪感を覚えるものだった。
「くっだらねえ」
和也はその光景を見ながら、そんな風に思った。そして、血の付いた剣を振って血を落とした。
こんな大会にマジになっていた自分が馬鹿らしく思えた。そして、あんな風にさっていった春明が羨ましく思った。
「くそが」
どいつもこいつも和也を不快にさせる。
和也はそんな風に思うと、気持ちの中を黒い物が支配していくような気がした。それが“嫉妬”というものであることにこの地点の彼が気が付くことはなかった。




