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勇者パーティー in オーディナル聖王国 25



「今日が当日か・・・」



 大剣をもった若者は苦笑いを浮かべていった。


 先日あったことを思い出した。大変なことになったもんだと思った。


 それもこれもこの大剣に出会ってしまったためだ。大剣に出会ってしまったせいで、まさか、魔王以上の何かと戦わなければいけない。


 それに巻き込まれてしまったのだ。この剣の所持者として。


 しかも、それに対抗できるかもしれない手段である“聖剣”が作れるかもしれない錬金術を守るというのが使命らしい。


 とんでもない依頼がやって来たなと思った。どうやら、“勇者”とはそもそもがその“聖剣”が作れるかもしれないものの縁者がなるもので、その守護者的な役割を持つものが持つとされている。


 伝説では“光の戦乙女”が選定しているという噂があったが、そんなことはなかったということだろうか?


 いずれにせよ。今日の大会は出る予定があるので、そこである程度仕返しをする必要があるだろう。


 サミット・シュットタルト・・・


 幼馴染であり、聖騎士団の新鋭。そして、剣の腕では一度も勝ったことのない男。


 俺がこの剣の選ばれたものとして、あれに勝ちにいかなければならない。今大会にでる俺の主な目的でもある。


 組み合わせ表がでて、俺と奴は一番最初にぶつかることになった。何故、そうなったかは不明だが、いちお、主催者側的に竜の騎士ドレクとガルドルを決勝でぶつける気が満々の大会になっている。


 竜騎士ドレクは勇者の仲間であり、竜王国でもかなりの使い手とされている。何よりも奴は“王竜の契約者”と言われている。


 勇者の友として、古くから伝承があり、最強の騎士にして守り手、王竜に乗りこなし、数多の戦場を破壊し、ワルシャル竜王国という小国の名を世界に知らしめている存在だ。


 その継承者であるものが、ただの騎士であるわけがなかった。


 ただ、その相手が悪いと思った。そのドレクの相手はバルザックだ。“憤怒の魔王”の偽名であるバルザックが何故かこの大会にやって来た。


 聞かされていない。“嫉妬の魔王”は参加する話は聞いていたが、奴が来るとは聞いていなかった。


 “強欲の魔王”が何か考えているようにしか思えなかった。


「何を考えている」


 ネヴィルはそう呟くと、嫌な予感しかしなかった。


『やつらとのリンクは切る予定だ』


 そっと、剣が呟いた。


『やつらの魔法など、我の真の顕現前には無力だからな』


 “怠惰の魔王”。それがネヴィルの相棒となっている大剣のことだ。“怠惰の魔力”が呼び起こされ、剣にされ、長年魔力の影響を受けたせいで堕落したのだ。


 そして、そのため、他の魔王を圧倒できるほどの魔力と権限を実はこの魔王は持っているのである。


 それでも、この魔王に曰く、真の敵には届かないかもしれないと言っている。ネヴィルにはどれほどの存在か、想像もできないというのが本音だ。


 それに対抗するために作られたのが、勇者の剣らしいが、それでも足りないかもしれないので、もう一振りを作るというのが目的だ。


 それが剣の願いでもあり、この剣の願いでもある。


 いずれにせよ。魔王達は真の敵側の存在だし、ネヴィルは努めて彼らと協力する気なのである。


「神か」


 ネヴィルは起き上がると脇を見た。そこには一人のシスターの姿をしたかわいい子がいた。


「・・・・・・」


 その子はネヴィルのよく知っている子で、こんな大事な時期に何をしているのか、説教を垂れたくなった。


 というか、ネヴィルは魔王の剣に捕らわれたものなのだ。それでよくまあ、現れたものだと思った。


「寝顔見ちゃった」


 語尾にハートが付きそうなくらい嬉しそうに言った。


「このダイナミックストーカーが!」


 王女の癖に王女らしからぬ言動をする幼馴染のセーラに向かって罵倒をした。


 “聖女”候補者とは思えない行動に、すでに度肝を抜かれた。選挙の真っただ中でこんな所に来るなんて非常識としか思えない。


「レミアさんが昔言ってたの。思いに素直にならないと後で心が壊れるって」


「へえ」


 ネヴィルは目線を反らせながら、そういう風に答えた。


「ふっふふ、私はなんと過去の記憶が読めるのです。もののね」


「へえ」


「“鑑定”と呼ばれる能力のさらに上の能力ね。私の本来の魔法は“再生”っていうだけどね」


「ほう」


「再生で“蘇生”ができるの過去のデータを読み込んで、物をよみがえらせる秘術なのよ」


 さらっととんでもないことを言った。


「これは聖王国が“聖女”達を研究して編み出した秘術なのよ」


 セイラがすらっとこの国の深淵を離した。それは国家機密という奴では?


「そんでね。その剣の24時間以内の情報を読み取ろうとしたら、凄いねその剣、千年以上の記憶があって全部は読めなかったけど」


「というは・・・」


「うん、昨日の話聞いちゃった」


 舌を出してペロッと笑った。


 どうやら、あまり話をしなくても大丈夫な気がした。それよりもこの王女様はさらっととんでもないことができるような気がした。


「さり気に凄いね。転移の魔法も使えるんだ」


「お前、何もんだよ。というか、何もんになったんだ?」


「“聖女”だよ。聖王国理想のね。ちなみに私と交わってもすぐに処女に戻れるから、大丈夫だよ」


「それは大丈・・・ばない」


 ネヴィルはとんでもないことをいってきたセイラに対してため息しか出なかった。


「ちなみに私今回の選挙に落ちようとも落ちなくても、いずれにせよ。聖王国が認める“聖女”だから」


「とんでもない話を聞かれた気分だ。聖王国が何故、“聖女”選挙を始めたのか分かったような気がする」


「ちなみに経済効果を期待してもあるんだよ。お祭りになるし、今回から毎年開いてもいいくらいの話なんだよね」


「おいおい」


 ネヴィルは呆れたように言った。


「“蘇生”の魔法と処女の関連は見受けられなかったし、心が汚されても能力発動する。必要なのは大量の魔力と魔法の細かい制御技能、そして何よりもモノの情報を捉えてそれをいかに再構築できるかが求められているの」


 セイラがスラスラと国家機密を離す。


「ほとんどが無意識に“鑑定”が行えることが条件ね」


 その目はネヴィルというよりは大剣を見ているようであった。


『恐ろしい娘だ』


「わかった?」


『俺様とのリンクを張るために、魔法を使いおって』


「凄いでしょ。あなたを吹き飛ばそうとしたら、私だと魔力が足りないから・・・。さっきの件、私が教皇様に話しておくから」


「さっきの件とは?」


「あなたの子供の生まれ変わりを守るためでしょ。いいじゃない。私も“聖剣”作りには協力したいし」


 セイラがいうとネヴィルは頷いた。


「まあ、教会が協力してくれれば、楽になるだろうが・・・」


「隊長は今日勝った人で」


「サミットを連れていくのか、それで大丈夫なのか?」


「大丈夫じゃない。どうみても、魔王側にその情報が洩れたら、その子が危ないだろうし」


「まあ、お前が“鑑定”持ちで・・・」


「“再生”よ」


「“再生”持ちで話が早くてよかったよ。まあ、聖騎士団はあいつだけじゃないだろうしな」


「そういうこと。その子、どんな子だか、気になるところよね」


「腰を据えて物事に取り込んでくれるタイプならいいが・・・」


「屑野郎だったらどうする?」


「知るかよ」


「私の貞操が大変なことに・・・」


「秘術が“再生”だけならいいな」


「違うとでも?」


「聖拳術も使えるだろ。お前。しかも俺より優秀。お前も聖騎士に立候補するもんだと思っていたが、まさかの聖女かよ」


「ふっふふ~~ん。あたし、こう見ても超プリティだから」


「気楽でいいなお前」


「じゃあ、十年後の結婚生活について考えようか?」


「はあ?」


「だって、やめたら結婚してくれるでしょ。愛しのハニー」


 ネヴィルはため息を付いた。どっと疲れるものを感じた。


「ハニーは男性に向かって言うものではなかったような」


「わかったわ。ダーリン」


「今は選挙前ということを忘れるなボケ」


「大丈夫。わたし、アレも再生できるから。襲ってもオーケーよ」


「そういう問題じゃねえ」


 ネヴィルは“聖女”になろうとも何故か、まとわりついてくる幼馴染に呆れるものしか感じなかった。


「いいのよ。あなたに汚されるなら。私に光をくれたのはあなただから・・・」


 セイラは嬉しそうに笑いながら言った。ネヴィルはその笑顔に心が少し温かくなるような気がした。


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