勇者パーティー in オーディナル聖王国 7
「あんたばかじゃないの?」
呆れたような声がフェミンからかかった。
二人の女性というか少女をドレクのいる寝室につれてきて、ベットの上に横たえたのだ。
「街中で魔法と聖拳技だぞ、これくらいは当たり前では?」
ドレクは気絶させたことが当たり前といっているらしい。彼的には正当防衛なのだろう。
「それは女性相手でしょ。男性ならそれが通じるとでも?」
「通じないのか?」
「まあ、難しいわね」
「だって、あんなやばそうなところでほっといたら、この子たちが大変なことになるじゃん」
ドレクはすうすう寝息を立てている二人に向かって指さした。フェミンが見る限り、この二人は十分な上玉だ。
姉妹だろうと、双子だろうとセットなら相当な価格で売れそうな二人だ。それを見逃すような奴は奴隷商失格と言える。
「この子たちの行いはほめられたものじゃないけどね。勇者パーティーがコネで選ばれたと思ってのことでしょうね」
「さあなあ。井の中の蛙かもしれないぜ」
「戦えるだけでも十分だわ。それだけで奴らにとっては十分な価値がある。優秀な魔法使いと神官戦士ならなおのことね」
二人の少女を交互の身ながら、フェミンはため息を付いた。
「まあ、世間を知らないってのは困ったもんね」
「是非とも俺のハーレムに加えたいのだが?」
「好きにしなさいといいたいところだけど、私としては本人の意思が大切だと思うわよ」
「なるほどな~」
ドレクは二人がぐっすり寝ているベットに座りながら、うれしそうにフェミンを見た。
「何よ」
「そういうところかわいいな」
「はあ?」
「頼りにしてる」
「いきなり何よ」
「ふふ」
ドレクはなんとなく、自分に対してそういう態度をしてくれるフェミンがとてもいいものに感じた。
「世話好き」
ドレクが言った言葉にフェミンの顔が赤くなった。
「ふん、変な奴の毒牙に可愛い女の子がひっかかないようにするってだけよ」
「それだけでも十分にかわいいぞ」
「あんたねえ」
ドレクはフェミンにすっと近づいた。不意を突かれ、ドレクに近距離を許してしまうが、ドレクにがっちり腕を掴まれ、逃げることができない。
「かわいいな、やっぱ」
「うっさい」
フェミンが股間に蹴りを入れるが、そこは魔法の防壁があり、防がれる。
「ほんと」
ドレクはそっと、フェミンの唇に口づけをし、ゆっくりと離れていった。
「かわいい」
フェミンの顔が真っ赤になる。
「黙れ、糞王子」
フェミンはそういって、強引に手を振り切るとそのまま扉から出ていった。
「かわいいなあ、マジで」
ドレクは顔をすっかり破顔させながら、嬉しそうに言った。デレデレな顔になっていた。
「随分、面白そうな子達を連れてきたらしいじゃないか」
昼前に戻ってきたメディシン卿は静かに言った。メディシン卿は“光の戦乙女の契約者”の力を使い、空を舞い、亜光速で移動して帰宅されたのだ。
1分以内に移動して帰宅できるらしい。
場所がわかっていれば、移動できるらしいので、便利な移動手段になっている。
ただし、これができるのは自分だけだ。他の人間を連れて行うと、連れがバラバラに空中分解するらしい。ちなみに移動や運搬に関してはメディシン卿の義兄の方がより便利な移動手段を持っていたりする。
あっちは物や人を音速で運ぶことができるのだ。必要以上に早いだけの光よりはかなりの効率の良いともいえる力だ。その義兄が本気を出せば、1万の兵の陣地を一夜にして出現させることができるのだ。
それほどの運搬能力をもっているのだ。
「双子ね」
メディシン卿はニヤニヤしながら呟いた。
そんな目で見られ、ただの優男にしか見えないのに、恐ろしい何かを感じ神官と魔術師の少女二人は怯えるように後ろに下がった。
「怯えてるわよ」
レミアが困ったように言った。メディシン卿が昨夜いなかったために、元聖女であり神官の彼女が二人の容体を見ていたのだ。
ドレクに任せておくと何をするかわからないということも無きにしも非ず。
「怖がられせるつもりはないんだけどね」
とメディシン卿はのんびりと呟いた。
「あなた子供にもその顔するの?」
「自分の子供を実験動物にするとでも?」
「まあ、そうね。常識的に考えればそうかも」
「まあ、魔法の才はありそうだけどね」
「親馬鹿ね」
「あってもなくても、訓練すれば大丈夫なんだけどね」
メディシン卿の言葉を聞いて、レミアが肩を竦めた。確かにメディシン卿の技術は魔法の才というよりは遙かに集中力を必要にするものだった。
故に集中力が通常以上にあるラプサムにとって、まさに救いとなるものだった。自分の限界を信じなかったあの頃のラプサムが戻ってきたのは彼のおかげとも言える。
訓練と言ってもお菓子作りや薬草作り、アクセサリー作りなどがその訓練となる。ようはどういう心構えで作るかで、その効果が変わるのである。
メディシン卿のそれはまさにそれだけの違いなのだが、それで重要なファクターとなり、アンチ魔法の技術を得ることに繋がる。
レミアもなんとか、その才能を開花させているが、それでも不十分のような気がした。もちろん、才能を開花できないものもいる。フェミンだ。
まあ、才能が開花できない代わりに、別のギフトを彼女はもらっていたりする。
気が付けば、彼女が一番忙しいものになっている。
「まあ、いいわ。この子たちが通常の子よりは強そうで何よりね」
「双子というのがおもしろいかも」
レミアの言葉にメディシン卿が静かに言った。
「何かあるようね。先生」
「まあねえ、この二人なら共有精霊を持っても問題ないと思うしね」
「ああ、奥さんと一緒の?」
「そうそれ」
メディシン卿は少し考えてから、ポンと手を叩いた。
「精霊王に紹介してもらうか」
「また、それ?その子達試練乗り越えられるの?」
「さあねえ。うちの義兄ですら、かなり苦労したからね」
メディシン卿の義兄は泣く子も黙る次期将軍。通称嵐だ。それですら、精霊との契約は苦労したらしい。
「というか、先生はなんで光の精霊と契約したの?」
「どんな経緯だっけ?ああ、義兄が壺を持ってきて、腕試しで強制的にやらされて・・・」
「凄いわね」
「そういうのに、命を懸ける人だから・・・」
「恐ろしいわね」
「ええ、勘弁してほしいです」
メディシン卿の顔を見るとどういう扱いを受けてきたか、想像ができ、レミアは苦笑いしか浮かばなかった。




