勇者パーティー in オーディナル聖王国 4
「ってことで、1週間ほど、ここオーディナル聖王国にいることになりました」
いちお、リーダーということになっているアレスが手をポンっと叩きながら言った。
それでまとめているつもりだ。
他の者達は立っているアレスに突っ込みをいれるようなこともなく、座ったままだった。
「魔術学園都市の方への連絡は?」
年齢的には最年長のラプサムが言った。いちお、精神的まとめ役に近い。
ただ、パーティー内でハーレムを作ってしまっているので、締まりがないことは否めない。
「魔術学園都市にご子息を通わしてる貴族の方には話を通しています。教皇様にはこれからです」
フェミンが手を上げて嬉しそうに言った。
この国に来てそれほど時間が経っていない。それでもきっちり仕事をフェミンはしたのだ。なんとも頼りになる。それもこれも、大好きな先輩へのアピールということを考えると少し考えるものではある。
「なるほど」
「なので早速いってきます」
フェミンはラプサムがそう答えるとその部屋に備え付けてあったウォークインクローゼットの中に入った。立ち上がって一瞬で扉の前に立ち、中に入ったのだ。
素早い動きであり、冒険者として名をはせているものとしては、頷けるスムーズな動きだった。
「凄いな」
ドレクが嬉しそうに言った。フェミンが凄いことがうれしいようである。
「見事」
ヘレンが静かに言った。すると、他のものたちは苦笑いに近いものを浮かべた。
「ジャーン」
早着替えかなと思わせるようなスピードで着替えをしていた。お姫様を思わせるような恰好からメイドの格好になっている。
普段のやぼったい恰好ではなく、今はメイドと呼ぶに相応しい凛々しい佇まいをしていた。それがさきほどの可憐なお姫様と同一人物とはまた違った空気を出していた。
女は化けると言ったが彼女がその典型なのだろう。
「変装ね。シスターの方が逆に目立たないと思うけど・・・」
メディシン卿は静かに言った。いちお、変装の腕に感心はしているようだ。称賛はみられない。
「シスターは用意できませんでした」
聖教団が所持する特別なシスター服を用意することができなかったようだ。聖国内なら簡単に入手できるが、それが輸出されることはほとんどないので、難しかったのだろう。
逆にここにいれば、手に入れることが容易ということだ。彼女がそれをここで手に入れる可能性は高かい。
今日はこれで誤魔化すようだ。
「じゃあ、行ってきまーす」
その格好でフェミンは出ていった。誰もその行動を止める様子はなかった。
それがフェミンの仕事ということを知っていたので、止めるようなことはなかった。それにフェミンの戦闘能力はよく知っていた。何かあったら、すぐにここに戻ってくることも・・・
「がんばれよ~」
ラプサムはあまりやる気のない感じで言った。
失敗することはないと思っているので、そういう感じで言った。気合を入れてどうなるような案件でもないし、上手くいこうが行かなかろうが実はどっちでもいい案件だ。
もともと、魔術学園都市にはこの後乗り込む予定なのだ。そのための前準備でしかない。一番、大事なことはそういうアクションを起こしたという事実だ。
そう、魔術学園に協力を求めたという事実、これが一番大事なことなのだ。アリバイ作りというやつだ。
ラプサム的には実は魔術学園に期待はしていない。魔術学園に染まった連中がメディシン卿の新しい理論を信じるようなことはないはずだ。
あれを理解するには信仰に近い信用も大切になる。そのため、未だに開花しないフェミンが心配になるのだが・・・
それが普通というのが、メディシン卿やアレスの意見だ。ドレクが開花するのにかなりの時間がかかった。魔法になじみがない物には難易度は高いのだ。フェミンも魔法にはあまり興味がないのだ。
自分にはもともとそういう才能がないという固定概念がそれを邪魔しやすいらしい。
メディシン卿の理論は実は魔法の才能、神官魔法の才能がないもののためにあるような魔法で長年のできなかったことに対する思い込みがそれを邪魔するのだ。
そのために、フェミンにはその才能が開花しなかった。その代わりに別の才能をフェミンはもらっている。それは魔法の才能をはるかに補ってくれる強いファクターになる能力だった。
レミングとの契約。彼女にとってもっとも重要な才能である情報収集に役立つ能力。彼女にかかれば、この街すべての情報を誰にも気付かれることなく調べることができるのだろう。
ただし、今回のような交渉に使えるような能力では決してない。だから、変装してさりげなく接触するつもりのようだ。
現段階で公にするようなことはない。声掛けの方はいちおしている。ただし、聖王国側としてはレミアを排出したので、その声かけはしない。
形式としてはレミアとラプサムの間柄を取り持ったということになっている。そのため、今回、最初に顔見せに来たということだ。
勇者パーティーは最終目標として、勇者ギルドとして多くの国から広く集めたということにしたい、という方針で動いていたのでこういう形になっているのだ。
「さてさて、今回は顔見せということになっているが、俺たちが何かやることがあるのか?」
メディシン卿があまり興味なさそうに言った。
「武闘大会があるらしい。“勇者”どのは審査委員で、俺が選手として出場する予定だ」
ドレクが嬉しそうに言った。異国で暴れたいようだ。
ドレクの技の数々は竜騎士としてメジャーなものばかりなので、別に大衆の面前で公開しても大丈夫なものばかりだ。公開してはいけない技は“王竜の竜騎士”の契約者としての力だろう。
あれはいちおこういう場で使うのは不適切だろうし、あれを使うと武闘会としての意味がなくなってしまうので、本人も使う気はさらさらないということだ。
「まあ、優勝しても誰も指名しない予定だ」
今回、勇者パーティーとしては第三者になることを決めていた。レミアを仲間にしたためにレミアと同じ立場になるという表明でもある。
前聖女候補はいちお形式的には第三者の立場になり、誰が聖女としてふさわしいのか表明しないことが決まっている。
それは仲間内で共有されていることだ。ちなみにメディシン卿が実は政治的には立場が強い。
将軍以上に権力があるとされる次期将軍である“嵐”の身内だ。それだけで十分な権力があるのに加えて、自身もメディシン卿の爵位を王から直接もらったものである。権力でいえば、その辺の貴族よりあったりするのだ。
「決勝の相手が表明する形になるな」
ラプサムが二人掛けソファーにどっかり座りながら言った。その脇にレミアとヘレンがちゃっかりと座る。
「どうせ、表明するのは大方あの子だろうな」
その様子に苦笑いを浮かべながら、メディシン卿が言った。
今回の聖女選挙には圧倒的に強いものが一人いる。それはこの聖王国悲願の王女が聖女候補に上がっている。
いちお、対抗馬も何人かいるが、力も血統や悲願などを考えるとその者になる可能性が高い。
だが、それ以外の対抗馬となると前回レミアを排出した一派がいて、その一派が常勝として今回も聖女候補を輩出している。
何が何でも聖女にするようでいろいろと黒い噂も聞いている。ちなみにそいつらのせいでレミア的にはラプサムとの恋が実らなかったので、あまりいい印象が実はなかったりする。
そのため、必死にやっているのを彼らを鼻で笑っている状況だ。
「まあ、あがているようだけどね」
レミアが嬉しそうに目を細めていった。そこに聖女の威厳はなく、娼婦のような色っぽさがあった。
対してヘレンは少女のようなかわいらしさで対抗している。物静かにくっ付き、離れないぞという無言の圧力を見せている。まさにアンタッチャブルだ。
カーディナルからオーディナルへ訂正




