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勇者パーティー in オーディナル聖王国 1



「ここが我、オーディナル聖王国だよ~」



 王竜の上から下を見下ろしながら、元気よくレミアが言った。


 磁器を思わせる綺麗な白い石造りの町が広がっていた。


「ほう、ここがねぇ」


 のんびりとメディシン卿が言った。基本、ワルシャル竜王国と自国しか行き来していない男である。


 それでもこの世界の一般人では割と旅に出ている方と言える。


 ひどいのになると自分の村からもほとんど出ないで一生を終えるなんてこともある。


「はじめてかい?」


「まあねえ」


 メディシン卿が興味がありそうにしているのをみて、ラプサムは嬉しそうに尋ねた。


 ガルドルギルドのホームがこのオーディアル聖王国なので、ラプサムにとっては地元に近い。


 様々な交易船があり、他国に行くのにアクセスがいいからだ。大型のギルドはこうした交易都市をホームに持つことが多い。


 他国の情報が集まりやすいからだ。


 一方、ドレクとアレスはトキアをつれてのワイヴァーンの長距離移動に慣れていて、他国にいくことなどよくあった。


 アレスもこの国の隣にある小国の小さな村出身だった。


 小さいときに家族と一緒に巡礼に来たこともなんどかあったので、初めてというよりはよく知っているほうの国ではある。


 そういう意味では以外にも縁のありそうな国家である。


「まあ、いいけど」


 ただ、アレス達がホームにしているワルシャル竜王国も同じ様な理由でいい場所なのだ。


 飛竜の輸出国ということは、飛竜乗りは重要な情報や、荷物を運ぶことで有名でそうした情報が集めやすい。


 移動にも飛竜が使えるので、かなりいい素早く動ける。今回の旅も一月掛かる旅路を僅か二、三日で移動できたのだ。


 どれだけ有能なのりものなのか、計り知れない。


 しかも、これは飛竜の中では遅い王竜での移動だ。ハイワイヴァーンでの移動であったらより短いものになるだろう。


 ゆえにその気になれば、ワルシャル竜王国は、どの国よりも情報が集まりやすく、物が運べたりするのだ。


 勇者用の依頼も遠方から届くようになっていた。


 その依頼をトキア嬢が受け取り、勇者の居場所を知っているので、それを勇者に報告するというのがトキアの仕事になっている。


 トキアが大手のスポンサーになっているのもこの性質が主な理由だ。


 今回のイベントはその事を各国に伝えるデモンストレーションに近いイベントになっている。これを通じて世界は勇者パーティーに連絡が取りやすくなる。


 意外と大事なイベントなのだ。


 彼らの成功の有無が次に進むための大きなステップになる。


 また、竜王国に入る手段が飛竜を使用することが主な手段であり、そのため、出入国者の管理が非常に楽というのも勇者を守るための大きなファクターになっていた。


 いろいろな意味でワルシャル竜王国というのは便利なのだ。


「まあ、嫁さんの気配を感じられるのが凄いな」


 聖王国とは反対側の方をみつめていった。


 嫁さんとは奥様の事だ。メディシン卿は夫人と精霊の共有契約をしている。そのため、どんなに離れても夫人がどこにいるのか察せるのだ。


 ちなみに会話もできる。


「そっちか」


 ラプサムが呆れたようにいうと


「そっちだ」


 真顔でメディシン卿が言った。


 それを聞いてレミアがクスクスと笑った。


「ラプサムと私もつながりが欲しい・・・」


「わたしもほしいかな・・・サムくんとのつ・な・が・り」


 ヘレンが静かに言って、レミアがさらに悪乗りをする。


「・・・俺はいいや」


 ラプサムはため息を付きながら言った。それみてドレクが言った。


「行かなくていいのか」


「うっさい」


 フェミンは怒って答えた。それを見て、ドレクは肩を竦めるだけだった。


「うらやましいなあ」


「あんたがおかしいから」


「・・・ほっとけ」


 フェミンに言われ、むすっとドレクは答えた。


 ドレクにはハーレム願望があり、フェミンをハーレムに加えたいようであった。


 露骨にそういうことをするので、あまり女性にモテていない。そういうことをしなければ、血筋含めて十分いい男なのだ。


 そこが残念な男だ。




 そんなこんなしているうちに王竜が着水した。


 アレスが飛竜を呼び出し、先に着地地点の選定を行っていた。


 アレスは飛竜の召喚魔法を使うことができる。これができるのは百年に一人らしい。


 アレスはこの呪文や調教師しての才能まであり、これらの才能が開花してから竜騎士として上に見られるようになっていた。


 もちろん、“理の剣”の力を借りずにだ。


 また、アレスは弓も使え、飛竜の背に乗って、矢を放って的にしっかり当てる腕もあった。


 そして、魔剣や魔吸論の鍛錬に余念はない。しっかりと勇者に恥じない才能を発揮していた。


「さあ、行こう」


 メディシン卿がいうと全員が頷いて、籠から降りて、砂浜に立った。


 ラプサムはヘレンとレミアの手を取って、転ばないようにケアをしていた。


 他のメンバーは特にそういうことをしなかった。皆、術者ではなく、体術を納めているものだった。


 いちお、ドレクがフェミンの手を取ろうしたが拒否され、ドレクはすぐに諦めた。


『嫁を見つけて来いよ~』


 王竜自らとんでもないことを言ってから、羽ばたいて去っていった。


 水しぶきが上がる。すでにほとんどのものが防波堤の上に登っていたので巻き起こった波から無事だった。


「おうよ」


 ドレクが右手を上げてそれに答えた。


 こいつが主犯か。フェミンは思わず毒づいた。


 ドレクの女癖の悪さは本人というよりは主神のせいようだ。フェミンも困ったものだと思った。


「可愛い神官いるかな」


「はあ、神官・・・特に聖女は恋愛禁止だよ」


 レミアが呆れたような様子で言った。


「あんた。私がいてもかわんないのね」


「おう、俺は正直な男だからな!」


 下半身にね。とフェミンは口には出さなかったがそう毒づいた。


「けど、今日のフェミンはばっちりかわいい」


「・・・ほっとけ」


 フェミンは嬉しそうに言うドレクに恥ずかしそうにした。いつもの粗暴な感じはなく、可愛らしいお姫様みたいな恰好をした。


 自分を知っているものなら、その歳でそんなかっこうすんなよとか、冷やかされそうだったが、このメンツはそういうことはなく。


 可愛い可愛いとみんながべた褒めだった。


 まあ、その中でラプサムも褒めてくれたので着ている。このお姫様みたいな白いドレスのあたしを・・・


 こんな服を着る機会なんて来ないなんて思っていたが、着るような機会が発生するなんて思わなかった。


 メイド服ぐらいが関の山かなと思っていたが、孫にも衣装という奴だろうか・・・


 いや、トキア姫の全力投球だ。正直、かなり可愛く仕上がっている。


 そこに“神の薬師”のケアがプラスされ、女神みたいになっている。


 いつもの“灰猫”とか、呼ばれている灰色の髪も今は銀色につやめていた。


 よくマジで誰?とか、鏡の映る自分を見て呟いてしまったものだ。


「はあ」


 そんなドレクも今日は晴れ舞台のため、ゴテゴテの王竜の守護者用の装備をしている。


 様々な属性魔法から身を守るために七体の竜の鱗から作れたその鎧は、色とりどりの鱗がついているので非常にカラフルだ。


 凄く目立つ格好だ。


 また、その槍も七つの属性の攻撃ができるように、七つの鱗が槍の帆先の根にいくつもついてかなりゴツい槍だ。


「あんたハデね」


「目立つだろう」


「かっこいいか別だけどね」


「かっこいい担当は他にいるから」


 とアレスとラプサムを見た。アレスは既婚者で既婚者の腹には子供がいるし、ラプサムは二人のハーレムがいる。


 さらに優男風のメディシン卿に至ってはしっかりと子供が二人いる。


 なんか、残念な感じがするのはフェミンだけだろうか?


「さて、みんないくよ~」


 故郷の帰省のためだろうか、すごくうれしそうにレミアが言った。

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