囚われの猫1
私は目を覚ました。
三日も何も食わずに過ごし、イライラしていたところに不快な言葉を聞き、ムカついたので殴り掛かったら、逆にあしらわれ、気絶させられた。
いいようにやられたような気がした。
自分の手を見て驚く。
ピチピチの綺麗な白い肌がそこにあった。
明らかにギルドに出た時よりも、いや、生まれてからこのかた、信じられないくらい綺麗になっていた。
肌の艶とか、別人かなと思うくらい綺麗だった。
しかも来ている服はいいシルク製のいい白のワンピース。
人生において、未だかつてないほど、こんなものを着たことがないくらいいいものだった。
「はあ?」
よくわからない状況に思わずそんな風に言ってしまう。
そこから全身をくまなく見た。
ありえない。
ありえないと思えるほど、全身の自分の肌がきめ細やかで綺麗になっていた。古傷などもなくなっていた。
「え?はあ?」
意味が分からなかった。自分の体なのにすごくきれいなのだ。
誰の体?
自分がまるで別人になってしまったような感じさえした。
「どういうこと?」
そう呟くしかなかった。よくわからない状況。
場所も場所だし、まるで自分がお姫様みたいになっていた。“灰猫”のあだ名をもらうほど汚い自分がこんなことになるなんて信じられなかった。
頭の中が混乱している。
「よう起きたか」
とそこには生意気なガキが嬉しそうにこっちを見ていた。
忘れもしない自分がムカつくようなことを言ったやつだ。そして、自分をここに連れてきた男と思われる。
そいつは何かを作っていた。アクセサリーか何かを作っているように見える。
「お前も大変だったな」
そいつはバカにするようにニヤニヤしていった。
なんだこいつは・・・
「お肌のケアをしておいたぜ。ダンナの腕はやっぱすげえや」
「ダンナ?」
「ああ、俺らのリーダー・・・じゃねえが、一番上の人。本人は絶対に認めないだろうがな。まあ、そんな変わりもんだ」
そいつはケラケラと楽しそうに笑った。この態度なんだろうか?
ムカつく。
「ちょっとごめんよ」
アクセサリー作りの手を止め、こっちにゆっくり近づいてくる。
顔はそこそこに思えた。ワイルド系で美形でないが、かっこいいタイプではある。
王子という柄ではなさそうだ。不良やその辺の札付きぽい。
それが近づいて、作っていたアクセサリーをいきなり、私の髪を寄せながら、髪留めをつけてきた。
どうやら、髪留めを作っていたようであった。
「う~~~ん、50点」
髪留めをつけて、点数をつけてくる。ナニコレ?
「やっぱ、元がいいから完全に負けてるな。俺も腕を上げないとな・・・」
そんなことを口にした。
ちょっと恥ずかしくなる。そんな風に真っ直ぐ褒めてくる人間に初めて会った気がした。
しかも、そういう人間は下心があるのだが、今のこいつからはそういうのを感じなかった。
単純にアクセサリーの評価をしているのだ。
すると、やつは慣れた手つきで脇にあった、いい香りのする香油を手に付け私の髪につけてから、全体的に私の髪を櫛で溶かし始めた。
男にそんなことをされたら、普通は不快になる。
だが、そんなことをされても不快にはならなかった。
楽しそうなおもちゃを見つけたような、子供ぽい目でこちらを見てくるからだ。
印象としては猫に手入れをしている感じかもしれない。
「うん、いいね」
とそいつはいうと側に逢った高そうなガラス製の手鏡を手に取り、それを私に見せてきた。
手鏡は灰色髪のかわいらしい美少女が映っていた。
「誰?」
「かわいいだろ?」
うれしそうに奴は返してきた。どんなもんだいと言いたげな顔であった。
自分がこんなお人形のような美少女になるなんて思わなかった。びっくりした。
ちょっとまて、私は今年で二十歳だ。断じて美少女ではない。
童顔だと前々から思っていたが、顔にできた傷とか、目の下のクマとかなければ、こんな可愛らしい子になるなんて思わなかった。
誰がこんな風に自分を変えてしまったのか、驚きしかない。
生まれ変わった自分の顔をしばらく見つめてから、自分をこんな風にした男の顔を見た。
すると、鼻の下をこすりながら、やってやったぜという顔で、こちらを見つめていた。
しかも、リアクションをどう見ても楽しんでいるようである。
「えっと・・・」
可愛くしてもらってうれしくないわけではなかった。
それをこいつがやったと考えると素直に喜ぶことができないのである。
「まあ、気にすんな。お前を清拭したの俺だし。その謝礼だよ」
清拭?
つまり、私の体を綺麗に拭きましたと・・・・・・このエロガキ!
ああ、こいつは殺す。
とりあえず、有無も言わさず拳を振った。その拳をその男は片手で受け止めた。
「えへへ」
ヘンタイはヘンタイらしく堂々としていた。
体を見たことに何のうろめたさなど皆無のご様子だ。
責任取れとか、言ってみようものなら、喜んで、とか平然と答えるんだろうな・・・
このマセガキは。
「はあ」
どっと疲れるものを感じため息をついた。
ただ、気になるのはただ、体を清拭した程度で体の傷や肌がよくなるとは思えない。
では、こいつはどんなことをしやがったんだ?
まるで、とんでもない魔法をかけられたようにしか思えない。それほどにきれいだった。
ふざけんな、ガキ!
あたしの体に触れていいのはたった一人なんだよ。
起こって立ち上がろうとして、部屋の扉が開いた。そこに一人の男が高級そうな扉開けて、部屋に入ってきた。




