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だから僕は騎士をやめた 3

だから僕は騎士をやめた 3



 取り調べ室になっている個室に男はどっかりと座り込んだ


「はん、なんで俺が呼ばれんだよ。犯人はあの小僧だろ?自分で証言してるんだろうが?俺には関係ないねというか、あの女を救ったのは俺だぜ」


「ふむ、君は随分勝手なことをしていたらしいね」


「あん、証拠はあんのかよ」


「妙なことがありましてね。ええ」


「なんだそれ」


「二人の男女が同じ術者と思われる呪術をかけられていたんです。しかも、本来、魔法が使用できない騎士の宿舎です。

 最初は男が呪術の疑いがあったんですがね。それがおかしいんですよ。

 男の方にも呪術が掛かっていたんですよ」


「ほう」


「男は女性に顔に自分の血を塗っていたから、もしかして、何かの呪術ではないかと思って調べてみたら、ただの血でした。

 なんらかの呪文があるのではないかと思って調べてみたら、彼女の脳に催眠系の魔法が仕込まれ、もしやと思い彼の方も調べたんですよ。

 したら」


「・・・」


「彼の方にも、呪術が掛かっていたんですよ。しかも、同じものがね」


「・・・」


「でね、彼に話を聞いたら、自分に魔法をかけたものが自分を彼女から引き離したらしいですよ」


「イメージではなく」


「物理的にですね。で、あなた彼の頭を踏みしていたらしいですね」


「ああ、とんでもないことをしていたからな」


「そでに血がついていました。ということはあなたが彼女から彼を引き離したんですね」


「そうなるな。それで犯人とはな」


「あなたは彼女が叫ぶ前から駆け付けていたんですよね」


「その経緯をお話しできます?」


「あいつがあの女に惚れていることは知っていたからな。それでもしやと思って」


「ほう。それはどこで?どの点が?そうと思っていたんですか?」


「だって、あいつは平民だろ?なんであんなやつがここにいるんだ?」


「んー。急な話題変更はやめていただきたいのですが?」


「はあ?」


「ご存じないのですか?」


「何が?」


「彼は出身の村では小さな英雄なのですよ。あの歳で騎士見習いに抜擢されたのも彼が村で狼を相手に大立ち回りしたからです」


「はあ??あんな覇気のないやつが?」


「あなたは見る目がない。彼は覇気がない?あなたのように日頃から殺気を出して、威圧するようなものが騎士とは思えないですがね」


「何を言ってる」


「あなたは威圧するだけ。覇気とは程遠いものです」


「ふざけるな!」


「その程度の怒声で何ができるのですか?」


 相対していた男がいうとその場の空気が凍り付き、怒鳴り声をあげていた男は黙るしかなった。



「これが覇気です。まさか、呪いから覇気を使って一時的に彼女を開放し、叫ばせるとはね」


「なんだと?」


「彼に聞いたら、それは心理的ショックを刻んて、呪いに疑問を持たせるためのものじゃないかといっていたんですが、それが結果的に彼女の叫びを誘発するにいたったようでしたね」


 それを聞いて、その男の顔色が大きく変わった。


 明らかに何か思い当たる節があるようにしかみえない。


「なんでも、魔法使いの家庭で魔法にはあまり目覚めなかったようですね。ただ、あなた部屋に催眠系の魔術書。これ禁書なんですが、それがありましてね」


「っく」


「彼の部屋にはそういった本はなかったんですよ。ただ、あなたの行動について妙だという彼の証言のノートがありまして、そのため、常日頃からあなたの様子や女性陣の様子を伺っていたんですよ」


「なんだと?」


「そりゃあ、自分事を普段から殴りつけたり、平民だからって差別し、女性差別するような人間を疑わないのはおかしいでしょう」


「・・・・」


「この国は騎士団の方針はそれを許さないはずでしね。それなのにあなたはそういうことを平然としていた。何かおかしいと感じるのは少し知恵のあるものならそう思いますよ」


「俺が悪いのかよ」


「日頃の行いでしょうかね。彼も平民出身ということで、大分差別を受けていましたが、


 正直ですね。


 騎士見習いで彼ほどの戦果を上げた方がいたんですかね


 とか思ってしまうんですよ。家とか関係なく」


「はん。俺は貴族の出だろ?」


「魔術の才能のない方ですね。とかいっておけば、よいですか?」


「じゃあ、俺よりも奴の方がいいのかよ」


「騎士としての戦果を教えてくださいますか?」


「う?」


「確か、護衛の任務においても、あまりあなたの評判はよくないんですよ。なのに、騎士団の副団長。で、われわれも興味が出てきまして」


「・・・・・・」


「いやあ、彼のおかげで気が付けましたよ。まさか、団長含めて団員にあんたことをしてただなんて」


「それは・・・」


「まあ、極刑は間違いないと思ってください」


「ふざけるな!」


「彼が呪術を掛けたという名目で調べさせてもらいます」


「俺は!」


「さてさて、あなたの事を調べて、どんな誇りが出るか楽しみですね。私にやるつもりなら、やめた方がいいですよ」


「ふざけるな!」


 ガンと机が蹴られ、立ち上がった男に机がぶつかり、よろめく。


 それを後ろにいた騎士たちががっちりと掴んだ。


「貴様の罪は重い」


「覚悟をしておけ」


 男を抑えた騎士たちはそういうと、その男を押さえつけ、しばらり上げた。


 男は悲痛の声を上げていたが、そこにいる者たちは特に反応はなかった。


「彼のせいで、我が国は大きな損失をしたような気がしますねぇ」


 一人の英雄になるかもしれない少年の未来を閉じてしまったことに男は憂いを持った。

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