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とあるギルド員の会話

とあるギルド員の会話



 二人の男女が羊皮用紙を広げていた。


 男は落ち着いた様子で、女は今にも泣きだしそうなそんな雰囲気だ。


 別れを告げるために資料を集めた離婚夫婦の空気が漂っていた。



「センパイ、本当に辞めちゃうんですか?」


「だから、引継ぎをしているんだが?」


「センパイの仕事って、ギルドの運用ですよね。センパイがやめる必要が本来ないと思うんですよ」


「まあ、俺はナンバー1ギルドの運営に携わってきたわけだ。正直、引きて数多の可能性はある。他のギルドの調整も俺が行っていたしな。加えて俺は器用貧乏だ。ソロでも生活には困らない」


「やっぱ、可笑しいと思うんですけど。というか、幹部の方々、気付いてらっしゃるんですかね」


「知らん。それより俺が死んだときのために用意したものは?」


「これっすね」


「俺が死んだ時に遺産として使えるものが多いのだが・・・」


「内容を変えると」


「そういうことだ。お前、内容は読んでいるか?」


「いえ」


「とりあえず読め」


「はい・・・・・・・・・・・・・センパイ無理です。こんなのできませんよ」


「しなくてもいいぞ。俺がいなくなったら、その手のギルド連盟や後続ギルドの上米をどうするかお前らが決めろ」


「これって」


「そう、俺がそいつらに払っていた金がギルドの不正の着服金だ。加えて、いくらかのみんなのプライバシー関係の借金でも金を捻出していたからな」


「なんで、こんな重要なものを私に・・・。これってメンバーの金の流れがわかっちゃうやつじゃないですか?」


「まあな」


「そんなの渡さないでください!」


「俺をしたうアホなんぞ、お前くらいだろ?」


「このギルド抜けたくなったんですけど」


「しらん」


「あと、なんすか、このすべての国の使者に送る手紙的なやつ」


「援助金をもらう代わりに、でかい仕事が終わるたびに報告書をよこせと各国からオーダーがあってな」


「10各国って・・・」


「まあ、報告書を作ってから、コピーの魔法をかけて送ればいいだけだ。いちお、そいつに関して送らんでも・・・」


「センパーイ、鬼ですか?」


「いやあ~、困るのは先方で俺たちではないし。困ったら事務官ぐらいよこせとかいえばいいよ。まあ、俺ってさ冒険しながらこんなことできちゃったからさ~。いや~、実は俺凄い?」


「ニッコニッコですな」


「なんていうの。君たちさ、遺跡探索なんてさ、誰が入ろうとそれほど差がないからさ。討伐クエストがメインになると思うけど、正直、討伐クエストなんて人をかければいいだけだし・・・」


「センパイ自分を追い出した人たちバカにしてますよね?してませんか?」


「正直さ。代わりはいくらでもいるの。ただ、このギルドの根幹をなしてきた、礼儀を弁えるとか、カリスマ性とかあんまり期待しないでね」


「うちらってデカい依頼くるんですかね?」


「知らん。各国カンカンだと思うぞ。幹部のやつらの動きはわからないから何とも言えないが、王家の信頼やコネクションとかないと厳しいだろうな」


「うわっ」


「俺も最悪を想定しているから、こうしてお前と引継ぎ作業をしているんだろ?」


「やっぱ、戻ってきてくださいよ」


「知るか。さすがに今回の件は怒っているんだからな。正直、成長したギルドに興味ないし、馬鹿共集めて楽しくやるさ」


「・・・そうか、先輩は馬鹿共を集めて、先輩が育てたギルドにその馬鹿共を残して旅立つってことっすね」


「そうなるな」


「私やめたいです」


「うちらみたいな大ギルドで運営ができそうな人事材が二人いなくなるのは致命的だから・・・。大丈夫、俺がしてきたように動けば、うざたがれて、きっとやめることになるから・・・。やつらがやめてくれる方がこういう面倒な引継ぎとかしなくてもいいんだが・・・」


「てか、こういう細かいところがギルドの価値ですもんね」


「もうさ、専門家を雇えレベルなんだよなうちの規模。まあ、俺が抜けて中小ギルドに入った方が世の中のためでもある。正直、専門家をやとって、お前よりもそいつに引き継ぎたいとは思っている」


「そういうところドライですよね」


「やつら、考えてないだろうな」


「賢くはないですね」


「まあ、後はお前に任せて俺は中小ギルドに入るつもりだから、運がよかったら一緒にやろうぜ」


「ぎだいじまず」


「無理すんなよ。事務官雇うのを主張するのはお前の権利だ。俺を巻き込むなよ。さすがに今回は怒っているんだからな」


「わかります。よくわかります」


「本来ならここまでやる義理はないんだからな」


「ですよね」



 二人はため息に近い息を漏らし、共に椅子にどっかり座った。


 疲労の色が見えていた。それほどに引継ぎが面倒だったのだ。


 男は窓を眺め、青い空に憂鬱な気分になりながら、ぼーっとしばらく座っていた。


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