終わりは唐突に 後編
「子供とは非力なものだ。故に親はそれを守らないといけない」
男は笑顔をこぼしながら言った。
その男の足元には二人の小さな子供がいた。二人とも拘束されている。
「・・・・・・」
金髪の女性は二人の子供をじっと眺めていた。男のことなど気にしている様子はそれほどなかった。ただ、二人を案じていた。
「親というものは子供を何としても守りたいものだよね。故に弱い。君たちのミスは親になってしまったことだと僕は思っている」
「・・・・・・」
彼女は特に何も返さなかった。何も言う気はないという感じでもあった。
「どうだい。私に負けるなど、ありえないと思っていたのかね。その気になれば、この子達を消すことなど、神である僕には造作もないことだ」
男は嬉しそうに言った。彼女はじっと、その男を見つめているだけだった。
「悔しいのかい?こんな男に負けるのことが?子供を人質に取られていることが・・・・」
「・・・・・・」
「何か言ったらどうだい?・・・くそっ、なんて奴だ。夫を読んだきり、無心をつらぬくなど」
神と名乗っている男は彼女が反応しないことに焦燥のようなものを出していた。何が彼をそうさせているのかわからないが、彼女が無心を貫いていることに戸惑っているようだ。
「くそっ、気に入らない女だ。娘ともども、消してやる!」
神と名乗った男がそういった。とたんに男の顔が驚愕に染まる。
「馬鹿な、何故力が発動しない。貴様らが消えない?」
神と名乗った男は驚きの声を上げると同時に後ろ向いた。
そこには黒い影のようなものが立っているような気がした。しかし、目の前には見えなかった。
「なんなんだ!」
神は腕を振った。それが一瞬で消えてなくなったような気がした。
「ふっふふ、何をしたかわからないが、これで貴様らを・・・」
神が振り向くとそこには母親と娘たちがいなくなっていた。一瞬で消えていた。マジックをかけられたような気分だった。
「馬鹿な逃げられた?あの一瞬で?」
神と名乗った男は三人を探すべく探知の魔法をかけようとしたが、その魔力、ただしくは男の持つ神の力のようなものが奪われた。
「なんだと?」
「つまらん」
そんな男に背後にそんな声がした。
後ろを振り向くと他の大陸にいるはずの男が立っていた。あそこまで数千キロの距離があるはずだった。だが、男はそこに立っていた。
「一瞬で移動してきたというのか?」
「光速でくれば、数秒だ」
男は静かに答えた。
「ふざけるな!」
神はそう叫んだが、力が出なかった。明らかに吸われていた、そして体から何かが蝕まれていくような感覚に襲われた。
同時に圧倒的恐怖が神を自称する男を蝕み始めた。
「どうした?」
「己・・・壊れた男が・・・ふふ、こうなったらお前を支配・・・」
神はその男に何かをぶつけた。男はよろけた。
「元々壊れていたいたのか!だが、修復してからなら!」
さらに神という男は何かをした。男は体を震わせた。
「ふっふふ、これで支配できる。本当はあの女に使うつもりだったが、貴様の方が有能のようだしな。さきほどのよくわかんものもかなり使えそうだ。この俺に通用したんだからな」
「支配の力か」
「わかるのか」
「なんとなくだが・・・」
「だが、正常になってしまえば、もう、遅い!」
「甘いなあ、あんた」
男は嬉しそうに笑った。神と呼ばれた男の手はいつの間にか剣が消え、男の手元に剣があった。
「はあ?なんで、俺が斬られている?なんでだ?」
「あんたが発動した時に俺があんたの視界から消えていただけだ。俺にとってあんたが暢気に支配の力を使っている間にあんたの手元から剣を奪いあんたを切り裂くなんてたやすいことなんだよな」
男は静かに言った。
「うそだろ?俺が死ぬ?神殺しの剣を餌に俺を呼び出し、俺を殺しに来たということか?」
「あんたのミスがいくつかある」
「何?」
「まず一つ、あんたがトールを殺すときに力を使ってしまったこと、そして、神殺しの剣の主に俺の妻を選んだこと」
「何が言いたい?」
「俺の妻は今じゃあ、剣聖と呼ばれるほどの達人だ。あんたが少し気を逸らしていた時にあっさり子供たちを回収しただろ?」
「馬鹿な」
「一瞬だ。一瞬あんたの気を逸らせば、あんたに気づかれず回収することなんて造作もない。そのための俺の闇魔法があんたの気を逸らした。影を見せるだけで十分なんだ」
「馬鹿な・・・では」
「そう、あんたがうちの嫁を取り込むなんて相当な仕掛けを仕込まないと無理だったんだ」
「ふざけるな。人が神に勝てるなど・・・」
「神は万能ではない。死ぬこともあれば、生まれることもある。そういうことだ」
「ふざけるな・・・、何故だ。何故、我が再生しない。これは・・・いや、この時間はいったいなんだ!」
「あんたが無理やり再生しようとしているのを俺の力が止めている。さすがだな、ほとんど死にかけているのに、それだけしゃべれるなんて、本当に神ってのは大概なんだな」
男は呆れたように言った。
「貴様は・・・貴様はなんなんだ?」
「さあな。光の戦乙女の契約者とか、神の薬師とかも呼ばれているな。ついでに神殺しの称号ももらうか」
「ふ、ふざけるな!俺は、俺はこの世界に呼ばれた神だ。あのあの女を殺して・・・」
「それがかなわなかったってことだろ?」
「ふ」
神と名乗っていた男が何かを口に出そうとした瞬間、その体が細切れになっていた。
「バーン」
男が静かに言うとそれが炎に包まれる。
「そういえば、炎の魔法使えたんだっけ?」
「初級もいいところだろ?」
夫は妻の声掛けにのんびりと返した。
「おかえりなさいというべき?長かったね」
「そうだな。ああいうことがあって、俺の頭が壊されてこんな形で元に戻されるとはな」
夫は静かに答えた。
「これが恐怖か・・・いや、愛ってやつかもしれない。すげえカワイイよ、とりあえず」
「今更じゃない?」
妻はそっと夫に寄り添った。夫はその妻の体を包み込むように抱きしめた。
「魂が、心が戻っても言えるぜ。お前が好きだとな」
「意外な形で元に戻ったけど、気持ちが変わらなくてうれしい」
「こんな最高なオンナ放したくないな」
「本気?」
「むしろ、変わったけど俺を愛してくれるのか?」
「何を言ってるの?」
妻はしっかりと夫を見つけた。
「あの時、力がないのに知恵を絞り、私を必死に助けてくれたのはあなたじゃない」
そして、妻は嬉しそうに言った。
「そうか」
「ええ、今までは贖罪のつもりで一緒にいたけど、これからは違う。私はあなたの側にいたいからいるの、だめ」
「だめじゃない」
「よかった」
「俺もよかった。そう言ってくれて・・・」
「離さないよ」
「俺も離したくはない」
「じゃあ、もう何も言わなくてもいいわね」
「もちろんだ」
二人はそういうとそこで口づけを交わした。
連載打ち切りみたいな終わり方ですみません。
適当な文章で適当に自分の負担にならないように続けていくことが目標に書いてきたつもりです。
その分、修正などを放置していますが・・・
それを含めて全体的な修正は間違いなく必要でしょうね。
最強の勇者パーティーを目指して書いてきたつもりです。とある魔王様方には負けますが、それでも最強のファンタジーパーティーではなかったでしょうか。
チームというよりは個人が強すぎて連携などはしてませんが、チームとして機能するメンバーのはず・・・
ここまで読んでくださいまして、ありがとうございました。
フェミンとドレクの短編などがあり、少し続きます。