勇者ギルド in ブリウォーデン勇王国 16
「さすが、フィンだな」
ドレクは笑みをこぼして言った。その隣にはフェミンがよりそうにように座っている。
「圧倒的ね。うちのメンバーは誰の目から見てもうちのメンバーは手を抜いていたわ。そして、フィンはその茶番に相応しい力を皆に見せてくれた」
「だな。これで魔王の襲撃がくれば・・・」
「ちょっと、嫌なこと言わないでよ。私もあの力になじんでないんだからね」
「爪はいつでも使えるんだろ?」
「目と羽の方もいつでも大丈夫よ。あと、約束は守りなさいよ」
「はいはい。もちろんですとも。だが、それはお前も頑張るんだぞ」
「・・・まあ、それが条件だしね。たく」
「がんばれよ」
「あんたもね」
「もちろん」
フェミンの言葉にドレクはやけに嬉しそうに答えた。
「はあ、何でこんなのを選んだろう」
「いいじゃないか?不満か?」
「多少は」
「酷くない?」
「そういうあんたは尻尾も咢も使えるんでしょうね?」
「息吹も使える」
「それは期待できるわね」
「まあ、私たちが手を出すようなことにならなければいいのだけどね」
「まあな」
二人はそんなこと言って表彰されているフィンを見た。
儀礼用の美しい銀色の輝き放つ鎧を着た彼女。その側には儀式用のロープを着た銀色の錫杖を持つ者がそばにいた。シドである。
彼は勇者の従者として一緒に歩いている。
フィンに寄り添ってシドは傍に立ち、一緒にひざを折る。バルザックと激しく戦った時が嘘のような優雅な動きである。
「あの二人もうまくいくといいな?」
「俺らよりもうまくいくんでない」
ドレクがいうとフェミンはため息をついた。
「まあ、そうね」
「そこは否定しないんだ?」
「上手くいってると?」
「人から見たらそうじゃないのか?」
「・・・そういうことにしておきましょう」
フェミンは切なそうなため息をついた。どこか疲れているように見えた。
「大変か」
「まあね。下手の仕事よりあんたの相手をさせられるのは厳しいわ」
「わりぃな」
「って、よろこんでじゃないわよ。変態」
「変態で結構。がんばろうな」
「・・・うっさい」
フェミンはどこか恥ずかしそうに顔をうつむく。それを嬉しそうに見つめるドレク。
「うん、かわいい」
「ほっとけ」
フェミンが拳を突き出し、それをドレクは無言で受け止めた。特に痛がる様子はなかった。
「頑丈ね」
「それがうりだしな。かわいいフェミン」
「いつか仕返ししてやる」
「それは楽しみ」
「・・・・・・・ほっとけ」
フェミンがもう一度拳を突き出したが、その手をドレクは今度は手で掴みとめ、そのままフェミンの口元に自分の唇を当てる。
「困った子猫ちゃん」
それからそっとささやいた。フェミンの顔が一層赤くなった。