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集まる猛者 in ブリウォーデン勇王国 3




「ここのルールは力を示せとことでしたね」



 美しい男性がそこに立っていた。その手には黒い刀があり、それが鈍く輝いていた。


 その背後にはその男性に負けないくらい美しい女性が、その男性に寄り添っていた。


 ダークエルフの王であるメルキスは、それが元勇者であることは斥候の話から聞いていた。だが、それがまさか直接乗り込んでくるなど思ってもみなかった。


「あなたを倒せば、俺が王になってもよいと?」


「ふざけるな」


 メルキスの背後には永遠に美しさを得た母であるモラスフィールがいいはなった。その美しい声は様々なエルフを魅了してきた。


 モラスフィールが命令すれば、進んで死地に赴くものがどれほどいるかわからないほど、人々を魅了していた。


 そんなモラスフィールに負けないほどに、その二人の人間は美しかった。


「そう?」


 うっすらとあたりが白い靄のようなものが漂い、足元が泥水が湧き上がってきた。


「これは・・・」


 モラスフィールが焦ったような声を上げて魔法を使おうとした。しかし、魔法の術式が霧のような靄に食われていくのを感じた。


「何それ!」


「霧そのものが魔力を無効化する力があるらしい。母上では手に負えない相手だ」


 メルキスはそういうと片腕を上げた。それだけで靄と泥が吹き飛ばされた。


「その程度の子供だましに負ける私ではない」


「やりますね」


 霧が消されても焦った様子はソレは見せることはなかった。


「二人目ですか・・・さすがに自信を無くしそうです」


 ソレは少し困ったように言って一歩踏み出してその姿が消えた。


「ふん」


 メルキスはすぐに上を向いた。そこには魔法で移動した元勇者の男が宙から切りかかってきた。メルキスはそれを剣で受け止めた。


 だが、すぐに体に痛みが走るのを感じた。剣は受け止めたはずなのに、別方向から剣が飛んできたのだ。


 いつのまにか、どこから出てきた大剣がメルキスの鎧に食い込んでいたのだ。剣の遠隔操作。


「やっかいな」


 とぼやくが元勇者はメルキスからすっと離れ、大剣に攻撃を任せる。体という概念のない剣はかなり自在に攻撃を繰り出し、数百年磨いてきたメルキスの剣と互角にやりあう。


 メルキスとやりあえる剣士などそうそういない。


 本体がないというのはやっかいだ。魔法で吹き飛ばせばいいものだと思うが、その瞬間を元勇者が狙っている。


 隙が無い。


 これほど、遠隔操作を極めている相手をしたことがなかった。まさに化け物ともいえる。


「貴様は何なのだ!」


 メルキスが叫ぶと今度は予期せぬ方向から剣撃ともいえる魔力の刃が飛んできた。完全にメルキスの資格から剣撃がとんできたのだ。


 元勇者剣をふったのだが、その剣の魔力をメルキスの背後から飛ばすというとんでもないことをやってのけた。大剣の操作中に・・・


 そして、その剣撃がかなり強力で、メルキスの鎧を切り裂いて見せたのだ。こんな戦い方ができるのはただ一人、あの男を除いてメルキスは知らない。


 嵐と呼ばれた男だ。


 そういえば、嵐と元勇者知り合いの可能性がある。その際、指示を受けたかもしれない。


「正々堂々と戦え」


「・・・僕の魔力をどう使おうと僕の自由だ」


 メルキスの言葉に鎧を切り裂くことで元勇者答え、さらに追い打ちをかける様に一言付け加えた。


「人間にこれほどのものがいたとは・・・」


「僕がここまで強くなれたのは、仲間との決闘のせいなんですがね」


 元勇者である男は困ったように言った。


「負けたことから学ぶことが多いと聞きましたがなるほどなと思いました」


「お前が負けたとは信じられん。お前の仲間とはどんなのやつらなのだ?」


「そうですね。世間から見れば、みな怪物なのでしょうね。僕の仲間は、いえ、勇者パーティーとは・・・」


 それをきいてメルキスは目を点にした。メルキスは数百年生きてきたが、元勇者アレスほどの勇者にあったことがない。


 勇者の剣があったとしても、それを遥かに超えて強い。精霊と契約したものとも戦ったが、これほど有効にその力を使いこなせたものを知らない。


 それらの力は人間には過ぎた力だと思っていたが、これほどまでに使いこなせるものがいるとは思わなかった。


「馬鹿な・・・」


「そうそう大切なことを忘れていました。王よ。わたしの出資者になりませんか?」


 アレスは冷たい笑みをこぼして、暴君メルキスに向かっていった。


「くっ」


 メルキスは頭を垂れるしかなかった。これは彼の長い人生において、二度目の屈辱だった。



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