勇者ギルド in 魔術学園都市 52
「さてさて、そろそろ行くか」
ラプサムがのんびりとつぶやいた。
フィンもシドもそれに続いて頷いた。ミラク、ピルクの二人もしっかりとうなづいた。
ミラク、ピルクの二人の卒業式も終え、二人は溶岩の精霊マグニートとの契約も住んでいる。マグニートはどう見てもマッチョな男に思えるが、マッチョな女性だったのだ。
母なる大地の山の精霊らしく、女性と言っていた。
マグマの中でそんな彼女との灼熱地獄での追いかけっこは死闘に思えた。その死闘を乗り越えてミラク、ピルクの二人は見事に契約を果たしたのだ。
それを乗り越えて、二人は一つも二つも大きく成長した。魔力的にも実力的にも・・・
フィンも剣術を“剣聖”と“嵐”の将軍に指導してもらいかなりの腕になった。
ラプサムは“七星”を返上し、いくつかの防具をトールに作ってもらっていた。清涼のマント、火花の手袋、止水の鎖という3つのアイテムを作ってもらった。
止水の鎖は周りにある魔力を分散させる能力をもつ鎖で、それを巻き付けたり、術式に当てることでそれを無力化できるものだ。水楔をさらに強化したものになる。
火花の手袋は単純に火花がでるようになっているものだ。ただし、その中には炎の精霊が宿っている。
そして、清涼のマント。こちらも風の精霊を捕まえて宿せてある。常にマント風が吹いているので清涼のマントなのだ。ちなみに温風も吹かせることができる。
精霊を無理やり捕まえることができる凄い魔道具師がいるらしく、その作らしい。
七星派が生き残っていたらならその才能を買われて、大変なことになっていただろうが、七星派は現在なくなっている。
悪い勇者がひと狩り行ってきたらしい。
世間的にはアレスが勇者をやめて、その後継者が現れ、その後継者を勇王国に認めてもらう予定だった。
ちなみに竜王国、王国には既に報告が終わり、聖王国も恩人の推薦ということもあり、彼女を勇者として認めている。
女性の間ではアレスの株が上がっているので、アレス待望論の方が強いが、それでも・・・・
みたいな議論が盛り上がっていたりするので、フィンの出身とかすでにどうでもいいレベルだった。
ある一国を除いて・・・
ある国だけはアレスの存在を認めず自分たちの押す勇者を認めさせようとしている。それが勇王国だ。
勇王国はアレスの件を踏めて一度、剣を返せとか言っている。
そして、新たに闘技大会を開き、真の勇者を決めようではないかと言っていた。
そこにはある男の名前が上がっていた。ガルドルの名前が上がっていたのである。
「迷惑な話だ」
ラプサムが嬉しそうに言った。
「あんたもやる気だな」
「いいだろ?奴がでるんだ、俺が出なくてどうする?」
嬉しそうに言った。
「ラプサムさん出るなら、私は出な方がよいのでは?」
不安そうにフィンが言った。
「まあ、今のフィンちゃんじゃあ、百パーあいつに負けるな。俺だって負けたし」
ドレクがのんびりといった。
「ダンナはどうする?」
「“光の戦乙女の契約者”と“王竜の契約者”は“勇者”のお供と昔から決まっている。俺とドレクはでんさ。ラプサムは“七星”を捨てたんだ。今は名前はないんだ出れるだろ?」
「ダンナが出てきた地点でダンナの優勝が決まってんもんな。あの剣聖のトレーニングパートナーだもんな」
「俺しかできないから、仕方ない」
肩を竦めて褒められるようなことではないと言いたげにメディシン卿が返した。
「あれは確かにダンナたちしかできない。つうか、あれも使おうと追うとしたが、使うだけでは無理なんだよな。ダンナたちみたいに動くのは・・・」
「亜光速戦闘は難しいからね。ぼーっとしてたらすぐに終わるし」
メディシン卿は自分ができるそれに対して苦笑いをした。
「まあ、いずれにせよ。俺もアレスも強くなったし、仲間は増えたし、不幸なこともあったが、トキアの嬢ちゃんも合流したし、がんばっていこうぜ」
「はい」
アレスに抱き着きながらトキアが嬉しそうに言った。
「そうそう、たくさんの出資金をもらいましたし、しばらくの旅は安泰ですよ。そのほとんどをお父様の宝物庫に運んでおきました」
トキアが思い出したように言った。
「みなさん、涙ながらわたくし達に出資してくださいましたよ」
「だろうなあ」
アレスとトキアの暴れぶりは貴族たちの肝を冷やすのは十分なものだろう。勇者ギルドに不正がばれたら、不幸が訪れる。
それならば、金でも渡して抱き込んだ方がいいと考えたものが多いようだ。ちなみに脅迫の材料はフェミンがたくさん集めていた。
貴族のバカ息子たちがやらかしたことが多数あり、それをにおわすだけで大量の金が渡された。トキアの資金がなくなってしまったが、別の方向で資金が集まってきていた。
また、協力を名乗り出てくる貴族も増えたし、寄付金を出してくれるものも多かった。
こうして軍資金が結果的に膨大なものになったのだ。
魔術学園都市を恐怖に陥れたのが、たった一組の夫婦という事実。それを止めることができるものも同じ勇者ギルドのメンバー。
その事実が貴族たちの間では広まり、出資することになった。
ただ、勇王国のみそれを認めないというか、認められないのだ。長年、否定してきたアレスが長年伝えられてきた勇者とも一線を越えた実力を持った勇者ということなのだ。
これほど世間を恐怖に落としているアレスを、アレスという存在を信じるわけにはいかなかった。
アレスに剣を渡さず、真の勇者ではないと言ってきたのだ。その拳を今更さげるわけにはいかなかった。
アレスが勇者の剣を捨てたのは僥倖だったが、すぐにアレスが勇者の後継者を認め、その後継者がすぐに“勇者の剣”を使って見せ、さらに勇者ギルドに入ったのだ。
そんなことを勇王国が認めるわけがなかった。そんな自分たちを無視したことを・・・
だから、こんな発布をすることになったのだ。
完全に勇王国は勇者認定で孤立していたのであった。
こうして、勇王国はガルドルともう一人、バルザック、最近名をあげてきたエイルを呼んだのだ。